2024 J1昇格PO|モンテディオ山形 vs ファジアーノ岡山のプレビュー

泣いても笑っても2024年シーズンはあと2戦 。そのうち山形もしくは岡山のどちらか1チームはこの試合が今年最後となってしまう。

負けたら終わりのJ1昇格プレーオフ準決勝、その見どころについてわかりやすく解説します。

モンテディオ山形 と ファジアーノ岡山 の対戦成績

まずは歴史のお勉強から。通算成績では岡山が大きく勝ち越している。
通算成績:山形 7勝 引き分け 4分 岡山 14勝

ただし、木山監督と渡邉監督の対戦成績についてはまったく差がついていないことも付け加えておく。
現監督の成績:山形 1勝 引き分け 2分 岡山 1勝

2023年4月に山形の渡邉監督が就任し、約2年間で4度の対戦があった。

https://soccer-db.net/compare/h2h/1032/1003

どちらのチームもホームで勝利をあげており、岡山はアウェイで勝利をあげていないことがわかる。また、いずれの試合もスコアレスドローで終わっておらず、両チームあわせて2点以上のゲームになることが期待される。

どうやら先制点がポイントになる試合になりそうだ。

モンテディオ山形とファジアーノ岡山の2024年シーズン

2024シーズンを通してどちらのチームも苦しんできたことがわかる。

https://data.j-league.or.jp/SFRT02/?competitionYearId=2024&competitionId=590&currentCompetitionSectionId=5735&lastCompetitionSectionId=5735&teamId=29&teamId=42

岡山は第8節まで首位に位置するもののケガ人の影響もあり失速した。ただし、19岩渕をCFに置くほどギリギリのチーム状態だったにも関わらず、6位以上を常にキープしており、一度も連敗することなくシーズンを通して安定感を見せている。

一方の山形は対照的だ。シーズン序盤は2度の3連敗に加えて2戦目以降は連勝もなく、シーズン折り返し時点で14位と成績は大きく低迷した。しかし、88土居聖真が加入した8月(第25節)以降の試合では、9連勝を含める12勝1分1敗で最終節には岡山を抜いて4位に躍り出るという、普通では考えられない順位推移を見せている。

両チームの勝利数と引き分け数の比較

山形 : 20勝 6分 12敗

岡山: 17勝 14分  7敗

特に注目したいのが、引き分け数の違いだ。山形はほとんど引き分けることなく、岡山は1/3以上が引き分けに終わっている。

しかし、POのレギュレーションにより、引き分けでも勝てる山形、引き分けでは負ける岡山となる。

チーム成績と目指すべき勝ち方がチグハグした内容になりそうだ。逆ホコタテ対決になるのかも。

モンテディオ山形の特徴

モンテディオ山形とファジアーノ岡山の特徴についても深掘りした。まずはホームチームであるモンテディオ山形だ。

6位以上のチームと対戦した第35節の清水戦を参考にした(第38節 千葉戦は退場者が出たため)。

フォーメーションを広くとる攻撃的な布陣

清水戦でもっとも印象に残ったのは、山形は選手の立ち位置をかなり離していた点にある。これにより、パス回しでのビルドアップに加えて、最終ラインからロングボールで一気に相手ゴールを狙う戦術も用いるようになっている。

ただし、選手同士の距離が離れるとパスカットを狙われるため、これは諸刃の剣とも言えるリスクのある戦術だ。
実際に清水戦では最終ラインでのボール回しをカットされる場面も見られた。シーズン終盤戦を生き残るための決死の戦術だったと予想される。

別の試合で1点リードした水戸戦では、選手の距離感を近くに戻しており、引き分けでもいい岡山戦ではもしかしたら布陣を広く取らない可能性もある。
山形が勝利を狙っているか引き分けでもいいと思っているか、試合序盤の選手の距離感で狙いが分かるはずだ。

88土居聖真の地道な土づくり

88土居聖真のシュート数は14試合で19本と意外と少ない数字だ。岡山サポにとっては、劇的な同点弾を岡山相手に見せたことから、得点に関わるイメージがあるかもしれないが、裏方役になることが多いのだ。

ただし、5ゴール2アシストと決定力の高さを見せており、岡山、長崎、千葉と上位のチームから得点をあげている点は見逃せないだろう。岡山戦でのゴールのようなゴール前でのうまさも見せてくるはずだ。

それでは、88土居聖真の「土づくり」とはどういうことなのか?それは、88土井が直接ゴールに関わるよりも、その前段階での働きがずば抜けていることを表している。

ゴールという花を咲かせるには、「土を耕し」「種を植えて」「水をやる」工程が必要だ。このうち、シュートに繋がる決定的なパスを「種植え」とし、シュートを「水やり」とすると、88土居の役割はもっと前段階のものになる。

味方に決定的なパスを出させるために、中間ポジションでパスのつなぎ役になる、立ち位置を変えて相手守備を引きつけるなど、ゴールが生まれる2ステップ前のプレーに長けていると個人的に考えている。

この土づくりのために試合中はフリーマンのようにポジションを移動することが多く、山形には88土居のほかにも決定的な仕事をできる選手が多いことから、マンマークをつけることが難しく、88土居を止めるのはかなり難しいタスクになると予想される。

ただし、運動量の多さから後半で途中交代になる可能性が高い。

8小西、42イサカによる種まき、90ディサロが花を咲かせる

このプレビューでの「種まき」とは決定的なパスを意味するが、山形で特にゴールにつながりやすい働きを見せるのが、8小西雄大と42イサカ・ゼインだ。8小西は中央からスルーパス、42イサカは右サイドからのクロスで決定的な仕事をしている。

特に、8小西の相手スペースに出すパスセンスは、岡山41田部井涼よりも高いと思われる。個人的には88土居よりもボールを持たせたくない要注意選手だ。

90ディサロの怖さは、2022年プレーオフで岡山サポなら知っているだろう。また、後半途中から出場する36高橋潤哉も13試合6ゴールと試合終盤に強い山形を象徴する選手だ。

ファジアーノ岡山の特徴

対するアウェイ ファジアーノ岡山の特徴は、横浜FCと並んでJ2トップクラスの失点数の少ない堅守速攻にある。その秘密についてかんたんに解説する。

J2最強クラスの3バック、ウイングバック、ゴールキーパー

岡山3バックの選手はいずれもJ2トップクラスの守備力を誇る。5柳ヤスが控えにまわったことにより、空中戦の強さこそやや見劣りするものの、18田上大地、4阿部海大、43鈴木喜丈の3人はJ2最強クラスのCBだ。

また、ウイングバックの15本山と17末吉も守備での貢献度が高い。15本山はサイドバック、ボランチ、センターバックと守備的なポジションをほぼすべて経験しており、対人守備と脚力ではJ1でも活躍できるであろう逸材である。

17末吉は、守備に特徴があるわけではないが、運動量が豊富な選手であり、攻撃から守備の切り替えの速さでチームを助けたことがなん度もある。脚の速さとドリブルに特徴があり、オフェンス面でも期待が高い。

そして、J2トップのクリーンシート数20を叩き出したのは、49 GKブローダーセンのセービングが大きな武器だ。普通ならゴールになる軌道のシュートであっても、長い手足を使って指先にわずかでも当ててしまう最強のGKだ。PKストップにも強みを見せており、データこそないが空間認識能力もおそらく化け物クラスだ。

さらに、山形サポなら24藤田息吹の恐ろしさも周知のことだろう。さらにさらに6輪笠が控えにいるという点でもおかしなチームなのだ。

アクセントをつけるCBの攻撃参加

3バックのサイドに位置する4阿部と43鈴木の攻撃参加も岡山の大きな武器だ。4阿部はどちらかといえば控えめだが、43鈴木の判断力とテクニックは先日の日本代表戦の町田浩樹さえも凌駕している(もちろん岡山サポの目によるとだ)。

ただし、タスクの負担が大きいことから43鈴木は途中交代になる可能性が高い。しかし、そこで登場するのも5柳育崇といった空中戦のバケモノである。すごいチームだわ。

1対1で勝ち切るJ2最強のスキルを持つ鬼選手たち

正直にいうと、プレーオフに進出した長崎、山形、仙台に比べると、岡山の選手たちのサッカースキルは一番低いチームだと思っている。

しかし、一芸に秀でた選手の豊富さでは岡山ほど強いチームはJ1を探してもなかなかいないはずだ。

セービングの鬼 GKブローダーセン、対人守備の鬼 CB阿部海大、判断力の鬼 CB田上大地、オーバーラップの鬼 CB鈴木喜丈、対人守備の鬼 WB本山遥、運動量の鬼 WB末吉塁、こぼれ球の鬼 MF藤田息吹、プレースキックの鬼 MF田部井涼、パッションの鬼 FW木村太哉、ゴール奪取の鬼 FW岩渕弘人、ポストプレーの鬼 FW一美和成、判断力の鬼 GK堀田大暉、成長速度の鬼 GK 川上康平、アーリークロスの鬼 WB高木友也、空中戦の鬼 CB柳育崇、運動量の鬼 WB嵯峨理久、成長速度の鬼 CB藤井葉大、攻撃参加の鬼 WB柳貴博、6対人守備の鬼 MF輪笠祐士、キャプテンシーの鬼 MF竹内涼、岡山の鬼エース FW田中雄大、ボール奪取の鬼 井川空、縁の下の力鬼 MF吉尾虹樹、岡山の鬼魂 MF山田恭也、天才の鬼 MF神谷優太、天才の餓鬼 FW早川純平、難関突破の鬼 MF高橋涼、岡山の鬼光 太田龍之介、超特急の鬼 FW齋藤恵太、守備破壊の鬼 FWルカオ、アミーゴ(友達)の鬼 FWグレイソン

(2種登録の選手以外は全員書いたつもりなのですが、抜けていたら教えてください)

そして、J2最強の鬼たちを率いるのが、犬 木山、猿 村主、雉 ファジ丸、そして桃太郎 木村オーナーとスタッフ一同である。

現代の鬼はもう倒すもんじゃなくて、力を借りて一緒にJリーグを制覇しに行く仲間たちなのだ(なんかネタに走り出してすみません)。

選手たちのテクニックは4チームで最弱かもしれないが、この凸凹の選手たちが最強のチームとして山形に立ちはだかる。

試合のキーマンとなる選手

最後に、今回の選手で一番に注目したい選手を両チームひとりだけピックアップする。ただし、正直いってこの試合は全員がキーマンである。この選手だけ注目してはいけない。

山形 8 小西 雄大

ゴールにつながるプレーなら88土居よりも怖いプレイヤーだ。岡山の守備を無効化するキラーパスやシュートには注意しなければならない。

岡山 22 一美 和成

シーズン終盤にきてゴールの期待値は高まっている。相手守備を破壊するプレーだけでなく、ゴールという結果まで期待してもおかしくない。

1点ゲームではない熱いプレーオフが待っている

プレーオフの特殊なレギュレーション、そして 山形 vs 岡山 の対戦成績からもロースコアで終わる可能性は低そうだ。おそらくどちらかのチームが複数得点で終わるものと予想している。

また、山形は76分以降の得点が15点(55点中)ともっとも多いチームだ。

対する岡山も、76分以降の得点が13点(48点中)ともっとも多いチームである。

この熱き対戦カードは、複数点差が決着がつくのか試合終了の笛が終わるまでエキサイティングな試合になるのか期待は膨らむばかりだ。

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