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「DX成功の鍵:総力戦のための型」

DXによって目指す状態を組織と人財といういう観点でまとめてしまうなら、定型的事務処理業務から組み立てたピラミッド型組織から、情報共有&コミュニケーションシステムをフルに活用した、顧客視点・全体最適・全員参画を志向した人財成長プールとテーマ推進チームを組み合わせたネットワーク型組織となり、企業と一人ひとりの関係は対等な関係になって総力戦を戦う体制という言い方ができます。

日本の場合には、前提条件が整っていないという問題はありますが、総力戦を戦える体制づくりを並行して行うことはできるはずですし、実はDXに取り組むことで大きな効果を生み出しますが、決してデジタル化が前提条件ではありません。

それがです。

人はなかなか変わるものではありませんが、仕組みを変えることはできますし、型を導入することはできます。仕組みが変われば、ほとんどの人の言動は変わります。型を導入すれば、パフォーマンスが底上げされます。
また、仕組みを型に基づいて変えていけば、さらに効果的に行動変容を促すことになるでしょう。

総力戦

総力戦とは、トップマネジメントを頂点とするピラミッド構造の組織で上位下達系の指揮命令系統による組織の活動は分業型であり、ここでいう総力戦ではありません。組織形態が如何様であろうとも、一人一人の従業員が経営者の相似形として主体的に適正なコスト意識を持ってより多くの顧客により良い価値を提供すべく活動している状態を言います。

デジタル技術なしでも可能ですが、情報の共有のスピードと品質において、相似形の形成においても、組織としての連携性を確保するという点においても、デジタル技術を上手に使った方が圧倒的に有利です。

型なくして総力戦なし/型なくしてDXの成功なし

しかし、一方、DXをやりきれば、その企業は総力戦レディになるでしょうか?
言うまでもないことですが、なりません。型のある会社は大丈夫でしょうが、型のない会社の人材は、自分ではデジタルの番人をしている気分ではいても、真実はデジタルに番人をさせられているだけの人材になるだけで、総力戦を共に戦う人財になることはないでしょう。
そして、型には以下3つの種類があり、いずれも必須と考えています。

  • 判断と行動の型

  • 業務の型

  • 業務改善/改革の型

判断と行動の型

伝統的な企業では、創業者が経営理念や社是という表現で、思想を言葉にし、継承してきたものがあったりします。それを行動指針にまで落とし込んでいるケースもあるでしょう。決して具体的ではなくとも、エピソードなどと共に企業のDNAとして暗黙知が一人ひとりに継承されているとすれば、それが判断と行動の型の典型と言えるでしょう。
伝統企業とは言えなくとも、京セラ創業者の故稲盛和夫氏がまとめた経営12か条も代表的な型のひとつと言えるでしょう。

従業員一人ひとりがこの経営12か条を読み込み学ぶことで、相似形アメーバで総力戦を戦える体制だったかも知れません。

一方、型を持たない、何かそれらしきものがあっても漠然としていて従業員一人ひとりが同じ説明ができないような企業の場合は、人治企業から抜けきれていないことが容易に想像できます。しかし、細かく具体的に、思想や哲学から落とし込みさえすればいいというものではなく、経営と従業員が共通の価値観を持って判断し行動できるようにするものです。

業務の型

マーケティングや商品開発や、システム開発の手順書など、特定の業務プロセスを誰でも一定レベル以上に進めていく、複数の関係者が同一の認識で状態を共有できるようにするための方法論です。判断と行動の型と整合化している必要がありますが、この方法論によって、業務の品質は一定水準を保証することができます。

ない場合には、無手勝流となり、管理不能な野放しとなりやすく危険です。

また、ルーティン業務のマニュアルも代表的な業務の型ですが、システムの変更などで頻繁にディテールが変わってしまうため、多くの場合には陳腐化し、今を表したものがない企業が多いでしょう。
何故ならば、その業務を改善/改革する型を持たない会社が大半だからです。
トヨタの何故何故などはこの業務を改善/改革する型の典型とも言えるでしょう。

業務改善/改革の型

もちろん、判断と行動の型と整合していることが前提となりますが、すべての業務を常に競争優位で最善の状態、つまりオペレーショナルエクセレンスな状態であるようにするには、改善/改革の型が必要です。各部署、各部署間、場合によってはエコシステムを組む企業間で業務を改善/改革していくプロセスを常駐させるためです。
その代表的なものがグローバルでは有名なリーンシックスシグマでしょう。それらを含めてオペレーショナルエクセレンスと表することもあります。

リーンシックスシグマは、日本で生まれたKAIZENをアメリカで理論化体系化したものですが、日本ではポピュラーなものにはなっておりません。
おそらくKAIZENを起源とするリーンシックスシグマは、工場の現場のものであり、営業/研究開発/マーケティング/事務/管理には関係ないものと決めつけたのでしょう。
理屈の嫌いな日本人らしい考え方ですが、実はオペレーショナルエクセレンスとそれを目指すリーンシックスシグマのスコープは生産部門に留まるものではありません。経営から現場業務に至る全てのオペレーションが対象です。

一人ひとりが業務を改善/改革する型を持ち、常に生産性を向上させるための活動時間が確保されていれば、より主体的により良い状態を目指すことが効率的効果的にできるようになり、DXによって、より定量的なモニタリングや客観的な判断ができるようになることでしょう。

#DX
#デジタルトランスフォーメーション

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