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工場建設プロジェクトにおける概算見積書の正しい理解とは

1 概算見積と本見積の違い

「概算見積」という言葉を聞いたことあるでしょうか。
概算とは「おおよそ」や「おおむね」の意味であり、「概算見積」とは正式な金額ではなく、現時点の暫定的な見積のことです。
工場建設は、打ち合わせの進行状況に応じ、建設会社より概算見積が提出されます。
施主様は見積金額と事業実現性を見定め、方針の決定を行います。

対義語は「正式見積」や「本見積」と呼ばれ、材料や人工数量や工事諸条件に応じた精緻な見積となります。

今回のnoteでは「概算見積」と、概算見積の注意事項をご紹介いたします。

2 概算見積の必要条件と見積精度の関係性

 一般的に概算見積書は積算可能な図面の完成後となります。概算見積可能な図面とは平面図、立面図、断面図、仕上表などが完成すると最低限の概算見積金額算出が可能となります。
 施主様にとって建築費は、プロジェクト成否を左右する重要事項であり、いち早く建築費を知りたいという心理が故、「坪単価幾ら?」や「現時点の概算で幾ら?」との質問が多くあります。
しかし、概算見積に必要な最低限の図面や条件を満たさない打合せ序盤は、見積精度が低い「絵に描いた餅」となるケースが多いです。

建設会社は見積必要条件を満たさないと、「工事の際に概算見積時に把握できなかった工事は発生するかも」、「少なく見積もって工事の際に赤字になるのでは」など心理的不安要素を見積の金額に加算します。これを見積の安全率といい「絵に描いた餅」の原因の一部です。
打合せの序盤は「施主要求事項を正しく理解出来ない」状態であり、さらに、「概算見積は何が含まれているの?」など施主様と建設会社両者の概算に対する認識のズレが不安要素となり、工事金額逸脱の回避のため施主様が高いと感じられる見積金額となります。当然、不安要素が多いほど、見積の安全率が高くなり、施主様の希望に添えない見積金額になります。
施主様と打合せを重ね、必要最低限の条件が揃い、建設会社の不安要素が減り、建築コストを抑えた提案とともに、見積精度が高まり事業実現性も正しく評価可能となります。
 つまり、概算見積金額はコミュニケーション量に大きく左右されるということです。
施主様の「要望を理解する建設会社」をご選定頂くと、プロジェクト段階ごとの見積提出により希望予算に応じた提案がなされ、円滑な工場建設プロジェクト進行となります。

3 複数社での見積徴収での注意点

複数の建設会社から見積徴収すると、「同じ図面なのに、各社によって金額の違いがでるの?」と金額差異に驚かれることがございます。
その差異は、建設会社の見積情報獲得に必要なコミュニケーション力により、大きく変動します。

工場建設の知識や経験の乏しい建設会社は、見積必要情報が正確に獲得できず、設計・施工ミスのリスク回避のため安全率が大きくなり、見積金額が高くなる傾向となります。
特に、ユーティティと呼ばれる電気、機械設備、空調、圧縮空気、冷蔵・冷凍等やHACCP運用方法を把握できない建設会社の概算見積金額は施主様予算を逸脱が発生します。  当初の情報不足はプロジェクト進行につれて、施主様予算と見積金額の乖離が大きくなり、工場操業時期の遅延や追加金額の発生リスクが高まります。
一方、工場建設の知識や経験を有する建設会社は、打合せで見積の必要情報を獲得するコミュニケーションを図ります。導入予定機械、作業動線の生産活動などをヒアリングし、予算を逸脱予防するCD(コストダウン)VE(バリューエンジニアリング)を積極的に採用し施主様の希望予算に合わせるため模索のうえご提案します。

例えば、複数の建設会社から見積徴収し、「この建設会社は見積金額が安いからここに決めて話を進めよう!」と業者選定をします。
すると、プロジェクトが進行につれて、希望予算と乖離しはじめ、事業計画停止や延長、工事や完成後に追加工事請求が発生し、ファイナンス再構築や納入機械断念よる生産性低下など影響が及びます。
当初見積では一番安価であったけど、追加工事や工事不具合で、結果的に業者選定時の高い建設会社より高くなったなどのケースも多く存在します。


建設会社の力量はコミュニケーション力であり、コミュニケーション量は価格に大きな影響を与えます。
繰り返しになりますが「要望を理解する建設会社」の選定が工場建設には重要と言えます。

4 まとめ

工場建設は施主様と建設会社が適切なコミュニケーション取れ、「要望を理解する建設会社」であるかが重要要素であることがお判りいただけたかと思います。
 あくまでも「概算見積」は決定要因の目安であり、「概算見積金額の高低」ではなく、施主様の考える「費用対効果」と「概算見積金額」に見合うかを見定めが工場建設を成功には必要であるといえます。

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