La domanda di matrimonio (結婚のすすめ)

※この記事はミュージカル ロミオ&ジュリエットのイタリア演出版「Romeo e Giulietta ama e cambia il mondo」のDVD全編和訳とその感想、公演の情報やセット・衣裳などについてまとめたマガジンの一部です。シーンごとに記事を分け、投稿が古い記事から順番になっています。
※イタリア語の歌詞、台詞は掲載しておりません。記事前半はシーンの日本語和訳、後半はシーンの感想、考察で構成しています。


♪La domanda di matrimonio (結婚のすすめ)

〔カプレッティ卿〕
初めに申し上げたことを、
繰り返すことしか出来ませんな。
パリデ様、我が娘は世間を知りません。
もう二度、夏の盛りが過ぎたなら、
手放すことも出来ましょう。

〔コーラス〕
彼がここに
なんて素敵
ジュリエッタを愛している
あの子を彼にあげよう
彼ならあなたを失望させない
彼には王と王子たちが付いている

〔乳母〕
彼はあなた方の助けになる
借金からも解放してくれる
あの子の瞳のためなら彼は
愚かにだってなれるでしょう

〔パリデ〕
それでもどうか お願いです
ダメと言わないでください
彼女を私に与えてください
彼女をずっと愛します

それに、彼女の年齢には母となっているお嬢さんたちもいます。

〔カプレッティ卿〕
ええ、確かに。しかしこうも早急に夫を持てば、瑞々しさを失うのも早くなるもの。
今夜、我が家で宴を催します。古い習わしに則り、機会を設けましょう。私の客人を、1人増やしてくださるなら、大いに歓迎します!
多くの者と語り、多くの者をご覧になって、そして、その中から他より優れた、これと思う者を愛しなさい。その中に娘もいるでしょう。
私の意向など、本人の合意のおまけに過ぎませんから。

お言葉ですが 私には分からぬこと
娘はまだ やっと咲いたばかりの花
そして私には あの子しかいない
まだその時ではない
私を信じなさい
あの子はまだ未熟
世に出たばかりの新入りです
早く咲けば 早く散る
あの子にお聞きなさい
一度ダンスでもして
優しく詩を囁いて
紳士の礼を尽くしなさい
そうして もしかすると
お望みが叶うかもしれない

〔コーラス〕
しかし彼女はまだ未熟
まだその時ではない

〔カプレッティ卿〕
その時ではない

■シーンの感想と考察■

この段階ではまだカプレッティ卿は娘の結婚が時期尚早であると考えてるんですね!
パリスとすぐにでも結婚させたい感じの日本版のイメージでいると印象がかなり違います…。

それと、セットについての記事でも書いたんですが紗幕奥に見せる乳母の見え方が絵画のようでとっても素敵です。映像を打った紗を挟んでるから少しぼやけて見える。猫ちゃんが2階と3階をウロチョロしてて可愛いです。

ニコロのパリデは本当に完璧で理想的な「王子様」だなぁと何度見ても思うし、そんなパリデに対するテバルドの在り方も他のバージョンとは印象がかなり違います。
いけ好かないパリスと、パリスに不満があるティボルト(なんならパリス相手にも喧嘩腰だったり)が多いので、ジュリエッタを幸せにしてくれるであろう王子様パリデと、パリデとの結婚を阻もうとも従兄妹である自分には何もできないので身を引いて、ただ遠くから見ているだけのテバルド。とっても良いなあと思います。


私はパリスのキャラクターに関してはイタリアのパリデの描き方が世界のバージョンで1番好きで、なんと言っても、パリスが理想的な結婚相手であればあるほど、「ジュリエットにはロミオでなければいけなかった」というのに説得力が出ると思うんです。
「いけ好かない歳上のキザな金持ち」の婚約者と、「イケメン(主役なので露骨にキラキラした配役や衣裳ヘアメイクが多い)で歳が近くて優しい好青年」で比べられても、誰がどう見てもロミオの方が良いじゃん…となってしまい、ロミオとジュリエットが、単にお互い美男美女だったから恋に落ちたように見えてしまうんです…そういう解釈もあるとは思いますが、それでは作品の良さを出しきれない。

ロメオたちと同年代で若くて、既に爵位持ちで大公家の血筋でお金持ちでイケメンで優しいパリデ、誰が見ても素晴らしい理想の王子様。女の子たちが揃って「彼と結婚できたら」と夢見るような相手であっても、ジュリエッタにとっての運命の相手は彼ではなかった。ロメオでなくてはいけなかった。というのが強いと思います。ロメオもダヴィデの顔の造形は良いけど衣裳ヘアメイクは普段の彼よりもかなり素朴な感じに仕上がってるのがいいですね…普通っぽいロミオが好きです。(フランスのダミアンロミオも普通の青年ぽさが好きです)

このシーンで仮面と付け胸をつけた大柄な召使い?のようなダンサーたちが出てきますが、彼らはおそらく噂好きな世間の目、他人へ向けられる無遠慮な好奇心など周囲の俗っぽい感情を表しているのではないかと思います。このシーンの他にカプレッティ夫人がジュリエッタに「内密な」話をしている時や、ロメオとジュリエッタの初夜が明ける朝などにも登場し、「噂好きでお喋りな」乳母のビジュアルイメージとも重なることから、下世話な周囲から向けられる好奇の目を示すためのコロス(古代ギリシャ劇の合唱隊。英語だとコーラス。歌や詩の朗読の他、マイムなどを使って登場人物の心情やシーンの説明を担い、劇中の一般大衆を代弁することもある役割り。登場人物と解説者の中間的な立ち位置で、仮面を使用した。)的な役割を担っていると思えます。仮面というのも、古代ギリシャからの仮面劇のイメージと繋がります。イタリアの伝統的な喜劇であるコメディア・デラルテも仮面を多用しますし、コロスというイメージは結構当たっているかも。と感じています。




※注意事項(当note内共通)

・イタリア版ロミオ&ジュリエットのカンパニー、関係者の方々とは一切関係ありません。当noteの内容は1ファンによる訳であり、感想、スケッチですので公式の見解ではありません。

・私のイタリア語は超入門レベルです。1年半かけてなんとか訳しましたが、拙いものだと思います。間違いもあるかと思いますのでその点ご注意ください。

・当noteに掲載されたイタリア版のミュージカルナンバーの日本語訳のテキストや衣裳イラスト、平面図、3D画像などは筆者による訳でありイラスト作品ですので無断転載はご遠慮ください。

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