Morte di Giulietta(ジュリエットの死)

※この記事はミュージカル ロミオ&ジュリエットのイタリア演出版「Romeo e Giulietta ama e cambia il mondo」のDVD全編和訳とその感想、公演の情報やセット・衣裳などについてまとめたマガジンの一部です。シーンごとに記事を分け、投稿が古い記事から順番になっています。
※イタリア語の歌詞、台詞は掲載しておりません。記事前半はシーンの日本語和訳、後半はシーンの感想、考察で構成しています。


Egoista 

〔ジュリエッタ〕
嫌!
…ロメオ
助けて 助けて!

〔神父〕
ジュリエッタ!
ジュリエッタ!

〔ジュリエッタ〕
神父様!助けてください!

〔神父〕
出ておいで
離れなさい。そこは死の巣窟だ。
夜警がやって来る。

〔ジュリエッタ〕
行ってください。
私は行かないわ
勝手な人。全部飲んでしまったのね。
私に一滴も残してくれないなんて!

♪Morte di Giulietta(ジュリエットの死)

〔ジュリエッタ〕
ここにいることに何の意味があるの
あなたのいない世界で老いることに
それじゃ死んでいるのと同じこと
愛する人が もういないのなら

あなたたちは理解しようともせず
少しだって尋ねもしない
愛は私たちを生かし 燃やしたけど
あなたたちは この場所で冷たいままね

彼のために死ぬわ
愛のために死ぬわ
ロメオ
ロメオ
もう何も感じないのね
ロメオ 私も死ぬわ
夜明けが来ても
あなたをこの肌で感じられないのだから

あなたたちは同情するかもしれない
私の苦しみは大きすぎるもの
この可笑しな一場 あなたたちにあげるわ
私は空をゆかせて

彼のために死ぬわ
愛のために死ぬわ
ロメオ
ロメオ
もう何も感じないのね
ロメオ 生きてゆけないわ
この偽りの夜に
あなたは唇を重ねてはくれないのだから

ロメオ 愛する人
すぐに行くわ あなたのもとへ
ロメオ 私も死ぬわ
夜明けが来ても
あなたをこの肌で感じられないのだから

■シーンの感想と考察■

ジュリエッタの目覚めるタイミングが最悪。というパターンです。あと数十秒早かったら2人で遠い街へ…というエンディングになったのに間に合わずというこのタイミングが、この演出の中で一番「運命悲劇」の力を感じます。ロメオは死の間際にジュリエッタの姿を捉えて何を思ったでしょうか。混乱のままに意識が遠退いたか、絶望したか、幻覚だと思ったかもしれません。彼女の腕の中で死んだことがこんなにも絶望的なことってあるでしょうか…。

加えて神父の駆けつけるタイミングも最悪です。神父に言い訳の余地を与えていないのでジュリエッタがどこまで状況を悟ったかは分かりませんが、愛する人が目の前で息をしなくなったことは明らか。その訳などもう意味のないものでしょう。ここで神父がジュリエッタを残して去るのは夜警に怪しまれないためーーーではなくおそらく、ロメオの入ってきた方の扉しか開いていなかったのでそちらに回ったということ…だと、思いたいです。

ジュリエッタの歌の歌詞、ロメオに比べてかなり「怒り」の割合が高いです。ロメオは「絶望」が強かったのに対してジュリエッタははっきりと「あなたたち」と呼ばれる大人たちを批判しています。
「あなたたちは同情するかもしれない
私の苦しみは大きすぎるもの
この可笑しな一場 あなたたちにあげるわ
私は空をゆかせて」
笑わせるわね、と自分の立場を芝居に見立てて「このシーンはあなたたちにあげるわ。でも私は出てゆく。」とするジュリエッタから世界への痛烈な歌詞は、どこかメルクーツィオが死に際に放ったものも思い起こさせます。

この「怒り」のパワー。他の曲の記事にも書きましたが、イタリア版は切ない恋愛悲劇の物悲しさ、細さのようなものがほとんど感じられません。これはフランス版から強く感じる要素なのですが、イタリア版ではまず「死」の役がいない分、逆らえない運命に導かれるというよりもヴェローナという街の中での個々の生き様、死に様を描くという要素が強く、愛するにしても嘆くにしても怒るにしても、そして暖かい愛も、生命のエネルギー、感情の昂まりというのが強く表現されていてキャラクターが悲劇の物語の登場人物として語られるような美しく儚い姿よりも確かに存在する1人1人の人間として描かれているように思えます。それはこの演出のオープニングの「このヴェローナで観客を物語の目撃者、当事者としてこの話をもう一度描きなおす。刻み込む。」というテーマに沿ったものであると感じます。




※注意事項(当note内共通)

・イタリア版ロミオ&ジュリエットのカンパニー、関係者の方々とは一切関係ありません。当noteの内容は1ファンによる訳であり、感想、スケッチですので公式の見解ではありません。

・私のイタリア語は超入門レベルです。1年半かけてなんとか訳しましたが、拙いものだと思います。間違いもあるかと思いますのでその点ご注意ください。

・当noteに掲載されたイタリア版のミュージカルナンバーの日本語訳のテキストや衣裳イラスト、平面図、3D画像などは筆者による訳でありイラスト作品ですので無断転載はご遠慮ください。

・それぞれの記事は公開後も随時内容を追加、修正などしていきます。ご了承ください。(テキストもイラストも時々修正・加筆されてる可能性があるので思い出したらまた見に来てくださると嬉しいです)

・記事中ではカンパニースタッフ、キャストの皆様のお名前を、イタリア語表記・カタカナ表記に関わらず敬称を略させていただいています。ご了承ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?