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14_ドキュメンタリーを撮りたい!とカフェで叫ぶ

「ホームレス社長のドキュメンタリー映画を撮りたい!」

とずっと思っていた。純粋にホームレス社長がドキュメンタリーになったとき、この企画を日々追ってく必要があるな、と思い毎日ブログを書いていた。しかし、文章だけでは1日の断片しか伝えることができない。そうではなく、僕が毎日どのように過ごしているのか、を映像で伝えることができないだろうか、と日々考えていた。

なので、しょっちゅう僕はあらゆるところで「ドキュメンタリー映画を撮りたいんだ!」ということを言ってきた。「YouTubeから始めればいいじゃん?」と言われてたが、僕はカメラもビデオを精通しているわけではないし、1人で自分自身を撮るのは少し恥ずかしかった。今更、恥などを言ってる場合か、と言われるが、恥ずかしいものは、恥ずかしい。それに勝手に自分で撮り続けるよりも誰かが僕の横にいて、カメラで僕の活動を追っている姿ってなんだかかっこいい。単純にそう思っていた。

なかなか見つかるわけもない、と思っていたのだが案外近くにその人はいた。

毎日のようにお世話になっていたカフェ「Fairly Square(まかないプロジェクトの提携先)」の店長オノメさんにももちろん毎日のようにしゃべっていた。

「タイチ!最近入った新しいバイトの子が、フィルムメーカーって言ってたわ。どんなものを撮っているのかまでは聞いてないけど、バイトをしながら映像を撮ってるみたいよ。今度紹介するわね!」

灯台下暗しとはこのこと。全く知らなかった。オノメさんはそのバイトの子クリスを紹介してくれた。

「クリス!ちょっと仕事とめてこっちにおいで。この日本人はタイチっていうの。いまロンドンでホームレスしてるのよ。こうやってたまにうちでご飯食べさせてあげてるの。あなた映像やってたわよね?タイチがドキュメンタリーを撮りたいって言ってるから話だけでも聞いてあげて」

オノメ、ありがとう。

「クリス。初めまして。オノメに言われた通り、いま実はホームレス社長という企画をしていて。150日間家無し生活をすることで、500人のチェンジメーカーに会う旅をしてるんだ。毎日ブログは書いてるんだけど、それだけではなくてもっと普段の生活とかどのように人に会って話をしているのか、とかそういった部分を見せれたらいいなーと思ってるんだ」

クリスは最近まで映像系の学校に行っていたんだとか。ドキュメンタリー映画を撮りたいっていう夢があるけど、まだまだ駆け出しだし。映像だけで食っていけるほどにはなっていないから、オノメさんのお店でアルバイトをしながら夢を追っているのだと話してくれた。僕はこのチャンスは逃せないと思った。

「せっかくなら自分自身のプロジェクトもドキュメンタリーにできないだろうか、と思ってね。クリスはどんなジャンルのドキュメンタリーを撮りたいの?」

「やっぱり感動的なものが好きで。お涙頂戴系ではなく、もっと心が震えるようなもの。最近は社会起業とかソーシャルビジネスっていう分野に興味があるんだ。クラウドファンディングの紹介ビデオとかボランティアで作ったりしてるよ」

きた。まさにビンゴだ。感動的でソーシャルビジネス分野のドキュメンタリー。ホームレス社長がぴったりではないか。

「クリス!ここにいるよ、ぴったりの素材が。僕だよ、僕。感動的で社会起業家でユニークなドキュメンタリーのネタ。僕のホームレス社長を撮ってもらえないかな?ごめんけど、お金はないんだ。でも、クリスの練習の場として捉えてもらえたら嬉しい。なんでもするよ。そして、できる限りメディアとかともつながっていっしょに有名になろうぜ!」

言い過ぎではない。本気でそう思ったのだ。お金が払えないのは現実問題しょうがない。だからこそ、一緒にこの思いに乗ってくれるかどうかがとても重要だ。クリス一瞬考えて、

「おう。乗った!やろう!確かにホームレス社長のような企画をやってる知り合いはいまのところいないし、他にもなかなか出てこないだろう。これは何かの縁だし、なんだか本当に面白そうだ。やろう!」

やった。決まった。ホームレス社長のドキュメンタリーが決まった。まだホームレス社長を初めて20日目のことだった。

この会話のあと、クリスはバイトに戻ったが、彼の仕事が終わるまでカフェでドキドキしながら待っていた。そして彼の仕事終了後、そのカフェで今後の予定をすりあわせながら撮影計画を立てた。お互い、できる限りの時間を合わせて着実に撮影を続けていった。クリスにとっても、タダ働きではあったが多くの時間をいっしょに過ごした。

何事も言わないと始まらない。お金はなかったし、僕自身のホームレス社長の企画がどれだけクリスの役に立てるか確証はなかった。しかし、僕は彼にドキュメンタリーを撮ってもらいたかった。黙っててもいいことはないんだな、と思った。わがままになってはいけないが、相手にもノーという権利がある。そして、こっちもモノを頼む権利がある。ホームレスにもモノを頼む権利はある。どんなドキュメンタリーができるのか、とても楽しみだ。

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株式会社sakasa | sakasa inc.

クリエイティブディレクター | Creative Director

藤本太一 | TAICHI FUJIMOTO

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