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17_ホームレスになるとモテ期が訪れました

元々モテるひとの条件として、お金があるってひとつ大きく含まれるものだと思っている。未だに。でも、それでもです。お金がなくてもモテるってことが起こった。お金がなくても、ホームレスになってもモテる。そんな話。
あれは、ホームレス社長になって約1ヶ月経った頃の話だった。突然友人のマルコから

「タイチ!お前ホームレスやん?タダ酒とタダフードがつくイベント発見したんだけど、一緒にいかないかい?ゴールドスミスという大学主催のイベント。内容も面白そうだし、ただで飯食えるし、ひとにも会える。いいことづくめじゃないか?いっしょにいこうよ!」

ここまで言われて行かない理由はないだろう。ということで、たまたま当日ぼくも大きな用事はなかったため、泊まり先に決まっていたホストに連絡をして、いざイベントへ向かった。

実はロンドンは起業家向けのたくさんのイベントが行われている。そして、その多くがスポンサードなので、入場無料+ドリンク(たまにピザや食事つき)で行われるのだ。ホームレスには本当にありがたい限りだ。そしてここで登場するマルコは、昔からの友人でぼくのホームレス生活を屈託の無い笑顔で笑い飛ばしてくれる友人のひとり。ま、この話は関係ないので割愛しよう。

いざイベントへ。その日は移動日だったので大きな荷物を背負いながらのイベント参加。ゴールドスミスとはセンターからけっこう離れた場所にあるため、かなりくたくたになってしまっていた。でもただ酒とフリーフードには目がないホームレスは鼓舞しながら向かったのだ。

少しぼくたちは遅れてからの入場。ジロっと周りのひとたちに見られてしまったが、一ヶ月のホームレス生活でその白い目線には馴れた。ふふ。そして、邪魔にならないように後方の席を確保して講義を拝聴していた。そして事件は起こった。

それは講義が終わって、ネットワークに向かう途中のことだった。ぼくは、荷物がふつうのひとの10倍ぐらいあるので、片付けにも時間がかかりもたもたしながら会場を後にした。そうするとぼくに近づいてくる女性のひとり。なぜだ。なにか忘れ物でもしたかな?とか思いながらも、平静を装っていた。もちろん女性がこっちに向かってくるなんて何事にも代え難い喜びなのは事実なのだが。

女性「あのー、ホームレスのかたですか?」

あ、多分ぼくのことだ。ぼくに話しかけてくれてる。そして日本人だ。珍しい。

たいち「はい、ホームレス社長です。あれ、ぼくどこかでお会いしましたっけ?もしも覚えていなければ失礼しました。でも話しかけてくれてありがとうございます。」

どこかで会ったかどうか思い出せなくて、でも知らずに話を続けるとトラブルのもとなので最初に確認。

女性「いえ、初めてです。実は先日あがっていた日本のメディアの記事を拝見しました。とても面白い活動してるなって思って。私も社会起業というテーマに興味があり、今日このイベントに参加していたら、いきなりハットにでかいカバンのひとが現れて。あ!ホームレス社長だ!って分かりました」
メディアの力ってすごい。確かに記事にしていただいた。少なからず、反響は受けていたがあくまでも日本での記事なので、ロンドンでなにかがあるとは期待はしていなかったので、少しびっくりした。

たいち「おおお。あの記事ですね!ありがとうございます!今からネットワークタイムですし、少しそちらの会場で話しますか?」

荷物もおろしたかったので、早速別会場に移動して話すことにした。

色々と社会起業について会話をした。ホームレス社長になる前は社会起業家として活動をしていたので、イギリスでの出来事などを色々と共有した。彼女もフェアトレード系の仕事につきたいと言っていたので、ぼくもできる限りの知識と、ホームレス社長で知り合った似たようなひとを紹介しようか、とも提案したりした。そして、宴もたけなわ。そろそろ帰ります、というので会話を終える準備にはいった。

女性「あの〜。サインとかありますか?してもらえると嬉しいです!」

うおおおおお。これこれ。小学校のときから憧れていた、サイン。小学校のとき、ぼくはサッカーをしていた。分かりやすく、Jリーグが創設された時期の少年だったので、Jリーグに憧れていた。友達とこぞってサインの練習をしたりしていた。なので、ぼくは実はじぶんのサインを持っていた。もちろんこのサインは、プロのサッカー選手になった際にする予定だったもの。決してホームレスになったから、使おうと思っていたものではない。

たいち「あ、サインですか。(うーん、ホームレス社長としてサインをするなんて思ってなかったし、少し恥ずかしいな〜)はい!します!どこにしましょう!?」

もう興奮は抑えられなかった。そして、彼女が差し出してくれたノートとペンを使って、第一号のサインをしてあげた。彼女は喜んでくれているようだった。

でも、不思議な体験だった。イギリスで大学院に通っていたとき、イギリスで企業をしたとき、はっきりいってこんな出来事はなかった。ねたまれはしてもファンになってくれるかたがいたなんて想像もしなかった。そして、一般社会でいうと最下層のようなホームレスという肩書きを得たことで、こうやってファンができる。不思議だ。大学院生でも、起業家でも社長でもない。ホームレス社長だからこそできたファン。面白かった。

お金がなくてもモテる。どうでもいいかもしれないが、大事な教訓だった。

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株式会社sakasa | sakasa inc.

クリエイティブディレクター | Creative Director

藤本太一 | TAICHI FUJIMOTO

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