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13_じぶんのできることで価値を提供する

ホームレス社長だ。あくまでも社長なのだ。仕事をする、様々なプロジェクトを抱える。ただ他の社長と違うのはお金と家がない、ということだけ。なので、他の社長さんや会社の方々と同じように仕事をするためには、ちょっとだけ頭を使う。

まずは、普段の仕事場について。『普通』の会社は、どこかしらにオフィスを持っている。オフィスを借り、家賃を払い、社長と社員は毎日そこに通う。しかし、僕にはお金がないからそれができない。そして、最近流行っているノマドワーク。特定のオフィスは持たず、カフェなどを転々としながら仕事をするスタイルだ。ホームレス社長になる以前は、確かにこれでも良かった。毎日、スタバや少しオシャレなカフェなどに出入りをし、仕事をこなしていた。特定の自分専用のオフィススペースを持つ必要はなかった。しかし、いよいよお金がなくなり、カフェに入る為に買わないといけないコーヒー代すら捻出できなくなってきた。スタバの1番安いコーヒーですら、きつい。

そこでふと一年ぐらい前の出来事を思い出した。

その当時、ぼくはふと日本で起こっている面白いニュースを見つけた。それは、東京都六本木界隈を拠点にするウェブ系スタートアップTIMERS Inc.が行っていた「まかないプロジェクト」である。まかないプロジェクトとは、創業間もないスタートアップが、地域近隣のカフェやレストランと提携してまかないをもらうプロジェクトだ。ふつうのまかないは、アルバイトが休憩時にランチ又はディナーをもらう。このまかないプロジェクトでは、実際にカフェやレストランにアルバイトとして入るわけではなく、ソーシャルメディアの使い方、ウェブサイトの更新、情報提供、などのサービスを無償で提供するかわりに“まかない”をもらう、という仕組みだ。

僕は、この記事を見つけたとき感動した。そして、まっさきに「ロンドンでやりたい!」と思い、連絡をした。スカイプをさせてもらい、このまかないプロジェクトをロンドンでやることを快諾して頂いていた。

その後、いくつかのカフェやパブに問いかけてはいたのだが、なかなか先に進んでいなかった。しかし、今回、ホームレス社長という企画が始まろうとしているときにふと思った。

「このまかないプロジェクト、使えるやん!」

そこで、早速ロンドン界隈のカフェを再び探し始めた。全ては、お金はないが、おいしいご飯を確保するため。そして、自分のオフィスのように使わせてもらえるカフェを探すこと。

必死に探すも、なかなかいいところは見つからなかった。そんなとき、ふととある友人がFacebookで「近所のカフェが、アルバイト募集してるよー!」という投稿をしていたのを見つけた。そこは、ナイジェリア料理を振る舞う、ロンドン初のフェアトレードのカフェ&バー「Fairly Square」であった。正直な話、行ったことはなかったが、なんとなくナイジェリア料理というのがとても惹かれた。なので、速攻でメールを作って送ってみた。

「初めまして。タイチと申します。友人がFacebookの投稿をシェアしているのを発見し、御社がアルバイトを募集しているのを見ました。実は、現在ホームレス社長という企画をやっています。その一環で、まかないプロジェクトというものを開始しました。ぼくは給料は要りません。しかし、なにか御社のためになることをするかわりに、ランチを無料で食べさせていただけないでしょうか?」

こんな内容のメールを送信した。怪しい単語がやたら並んでいるので実際に帰って来るかは少し不安ではあったが送らないよりは送ったほうがいい。ホームレス社長になった初日の話であった。そして、その2日後、返信があった。代表であり、その後ホームレス社長が終わるまでずっとロンドンのお母さんのようにお世話になり続けたナイジェリア出身のオノメからだった。

「素敵なプロジェクトね。うん、ぜひコラボレーションしたいわ。いつうちに来れる?とりあえずカフェを見て、いっしょに計画を立てましょう」

やった。これはやった。そして、実際にカフェに行ってオノメと話をしてきた。

連絡ありがとう。本当にマーケティングについてすごく困ってて。ウェブサイトとか見させてもらったけど、あなたのやってることは素敵ね。ぜひうちとも一緒にやりましょう。ランチだったら、無料で提供するよ。そして、あなた今、ホームレスなのね。良かったら、毎日うちに来て仕事をしていってもいいわよ」

なんとありがたいオファーなのだ。その後、しっかりと企画内容を詰めて、ホームレス社長の企画が終わる日まで毎月10食分のランチ券をもらうかわりに、僕の拠点をオノメのカフェに置き、様々な企画やイベントを行うことを約束した。

それからというもの、オノメとはとても仲良くなり、本当にお母さんのような存在となった。いつも大きな荷物を持っているときは、「置いていきなよ!歩き回るの大変でしょ!」とか「今日は大丈夫?寝る場所ある?」とか本当に色々な優しい言葉をかけてくれた。イベントや企画を立ち上げ、集客をするのは基本だったのだが、それ以外でもオノメの人柄に僕はがっつりハートを掴まれてしまい、全ての業務をここで済ませるようになり、友達も新しい知人なども指定がない限りはここに招待していた。

ホームレス社長のテーマ「ひとに頼って生きる」。お金を払えば、立派な自分だけのオフィスがもてる。お金を払えば、おいしいコーヒーが飲める。しかし、今回のようにオノメとつながり、信頼し合うことで、オフィスのような場所もゲットでき、さらにナイジェリア料理をたくさん食べれて、さらにサービスでコーヒーもつけてくれた。お金以外にも価値を提供することができるってことを身を持って体感したんだ。

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株式会社sakasa | sakasa inc.

クリエイティブディレクター | Creative Director

藤本太一 | TAICHI FUJIMOTO

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