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08_ちょっとユニークなホームレス仲間とつながる

 「類は友を呼ぶ」と昔のことわざがあるけど、それは本当だと思う。しかもインターネットで世界中がつながっている今の時代、類は世界中から友を呼べるんだ。ホームレス生活をしていく中で、イギリス国内はもちろん、ヨーロッパ全土、そして母国日本でも似たような人と知り合うきっかけをもらったのももちろんインターネット。その中でも衝撃だったのは、やっぱりあの彼かな。

 ホームレス生活○○日目の時に、スウェーデン人の友達が唐突にこんな話を始めたんだ。

 「タイチ、ホームレスと言えば私の国に不思議なホームレス起業家がいるよ。トーマスっていうんだけど、彼は家も仕事も持たずに山ごもりをしながらひたすらプログラムを組んでるそうよ。イギリスでは違法なんだけど、私の国スウェーデンでは森林のなかも自然の恵みは、食べても違法じゃないのよ。だから、実質自給自足の生活が可能なの。なんだか最近、色々なメディアにも出てるみたいだし、グーグルで調べてみなよ」

 なんと!

 それは是非とも話してみたい。もちろん、将来のライバルを今のうちに潰しておこうという気持ちは全くなく、ただただ会って話してみたかった。ホームレスがホームレスに交通費を払って会いに行く、なんてばかな話はないので、そこは文明の利器「スカイプ」を使わせてもらおう。というかスウェーデンの森の中はインターネットや電源はあるのか?謎だ。でも、とりあえずメールを送ってみよう。ということで、メールアドレスを探してみてメールを送ってみたんだ。返事はすぐに返ってきた。

 「はじめまして、こうやって同じような気持ちで人生をやってる人に知り合えるのは、とても光栄です」

 あ、パソコンは使えてるのね。うんうん。トーマスはすごく丁寧なホームレスだった。彼は、

 「スカイプで話したいのですが、実は森林のなかという環境もあり、インターネット環境があまり芳しくありません。もしもよろしければ、チャットでもいいですか?実は、家も仕事も手放したけど、少ないお金を使って、携帯電話のモバイル通信だけは確保しています。そのような通信手段なので、少しネットワークが弱いのです」

 「そうなんですね。はい、かしこまりました。では、◯日の◯時にチャットしましょう。楽しみにしていますね!」

なんだかほんと不思議な人だった。チャットをする日までに聞きたいことをリストにまとめ、僕自身も自分をうまく伝えるために色々と作戦を練ったりしながら時間を過ごした。

そしてチャット当日。ワクワクしながらパソコンの前にいたら、彼もチャットに入ってきた。

 「改めてはじめまして!トーマスです」

 「初めまして。タイチです。色々と聞きたいこともたくさんあって今日を楽しみにしてました!色々な話を聞かせてください。そもそもなんで山にこもっているのですか?」

 「うん。オレもタイチと同じような境遇なんだ。まだ1人だけどウェブを立ち上げたんだ。元々エンジニアだし、その技術を使ってじぶんのサービスを作りたくて。そこで、まずはその資金を!と思い、投資家さんにプレゼンをしまくってたんだけど全敗。理由はただ人つ。モノを見せな!ってことだったのね。それを作る時間がないから相談してるのに!っていらついたもんだよ。でも開き直ったんだ。なら作るまでの時間、全くお金をかけずにやってやる!こんちくしょーってね。それで、家賃も高いし、アパートは出て、時間を自由にするために仕事もやめた。そして、スウェーデンは自然の幸を活用することは、国も認めてるから、それがふんだんに使える森で生活しようと思ったのよ。都会に疲れてるタイミングだったしね」

 「思いっきりましたね。すごい。確かに僕のホームレス社長とコンセプトは同じですね。金がないなら、使わないっていう」

 「そう。お金がないとできないってのはウソなんだよね。オレは自然の幸を利用しているけど、タイチは人のつながりを糧に生きていく。違ったアプローチだけど、代替えの生き方を示していきたいよね」

 「そうですね!うん、一緒に色々としかけていければ楽しそうですね。ところで、いつまで続けるんですか?」

 「期間は決めてないけど、投資をもらって会社が走り出せるようになるまで、かな」

 「投資をもらうまでですか。なんだか脅しみたいですね。でも、現に今は色々なメディアにも引っかかってて、注目のホームレスじゃないですか?」

 実際に、彼のことをウェブサイトなどでチェックしているときに知ったのだが、イギリスでも新聞に載ったりしたようだ。どうやって、そんなマーケティングをしたのか、気になったので質問してみた。

 「実はListserveっていうサービスがあってね。これって世界中の人々(現在25,000人)の人が登録しているEメールの宝くじみたいなサービス。毎日、数万のうちの人りがランダムに選ばれて、その人がその膨大なメーリスにじぶんの思いの丈をメールできるサービスなんだ。それで、山ごもりを初めてしばらく経ったときに、ふと“当選しました!”とのメールが。それで、興奮しながら“いま、山で生活している技術系の起業家です。投資が受けれるだけのサービスができるまで山ごもりする所存です。ご注目ください。”ってメールしたら、ひっきりなしにメディアがくっついてくれたんだ。ラッキーだろ?」

 いや、ほんとラッキーだな。でも運も実力のうち。ちなみに僕もこのチャットの直後登録をするも、ホームレス生活が終わるまでの期間中に当選することはなかったけど……

 「こうやってメディアに取り上げられたのは、良かった。でも、やっぱり投資家はこの活動だけではお金は払ってくれないよね。やっぱりしっかり作らないとね」

 彼は、自分の生活のユニークさをしっかりと理解していると同時に、目的達成の為にやるべきことというのもしっかりと定めている戦略的なホームレスだな、という印象を受けた。

 「あ、タイチ。ゴメン。実はオレのバッテリーはポータブルの太陽パネルなのね。昨日は、スウェーデン天気があまり良くなくて、充電できてなくて。そろそろチャットから降りないと。今日はありがとう。そして、これからもよろしくね!」

 そうか。太陽光で電源を確保していたのか。それにしても、インターネット以外はお金を使わずに生活だけではなく、スタートアップの立ち上げをしているとかカッコ良過ぎだ。

 こうやって、僕もホームレス社長という肩書きを名乗り始めることで、似たような仲間に出会えた。そして、このような会話を通じてたくさんの刺激と新しいアイデアをもらえた。よく「新しい!と思って思い付いたアイデアは、同時に世界で数千人は思い付いている。それをカタチにする人は少ないけど」と言われたことがある。でも、その思い付いた人のなかからさらにアクションに落とした少数派だからこそ、このような類は共を呼ぶような出会い方は刺激や学びも多いのかもしれない。

類は友を呼ぶ

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株式会社sakasa | sakasa inc.

クリエイティブディレクター | Creative Director

藤本太一 | TAICHI FUJIMOTO

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