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0321:(GaWatch映像編005)『フェイク・バスターズ 新型コロナワクチンと誤情報』

 NHKの『フェイク・バスターズ』シリーズは、いわゆるフェイク・ニュースを検証して解説する良コンテンツだ。その最新回「新型コロナワクチンと誤情報」を観た。今なら公式サイトで配信されているので、未見の方は是非。

 デマが社会を混乱させることは昔からあった。私の青年期に、少し前の話として有名だったのは豊川信用金庫の取り付け騒ぎだ。女子高生の雑談のちょっとしたひとことが、文字どおり口コミで拡散するうちに近隣住民の間で「信金が倒産しそうだからすぐに預金を下ろさないと!」とパニックが起きた事件だ。もちろんその噂は真実ではなかった。最初の雑談からわずか六日間、口伝えの間に何がどのように誤ったものか、wikipediaでもその伝言ゲームの一端が窺える。

 通信技術の発達する以前、デマの拡散は主に口伝えと文書によるものだった。豊川信金事件の際は、電話やアマチュア無線が拡散の強力なツールとして働いたようだ。

 そして現代、ネット社会である。誰もが容易に情報を発信し、誰もが容易に情報を受けとめる。そこは真偽不詳の情報の洪水だ。必要なのは、事実とそうでないものを見極める目、そして、感情を掻き立てる情報に接したとしても簡単にそれを拡散しない冷静さだ。そうしたリテラシーを持たなければ、誰もがデマの拡散者になる。

 番組中で、SNS上の「コロナワクチンを接種すると不妊になる」というデマを分析した結果、起源として遡れるのは僅かな数のアカウントで、後はそこからの拡散であったという。これはNHKニュースサイトでも文字で読むことができる。

 つまりフェイクを防ぐためには、「起源」と「過程」の双方に手を打つ必要があるのだ。もちろん、どちらも難しい。中国のように徹底的な検閲・圧政をすれば可能だが、そんなディストピアは誰も望まない。自由な社会では、道を踏み誤ることも自由だ。そんな自由社会のあるがままで良い、とも思わない。実に難しい。

 45分の濃密な番組だったが、ある夫婦のドキュメンタリーが、デマが引き起こす事態を視聴者に分かりやすく伝えていた。妻がSNSでワクチンデマを信じ込み、自分だけでなく家族にも「ワクチンを絶対打つな、打ったらもう一生会わない」として、家族は崩壊の手前に立たされた。その後、夫の親身なコミュニケーションを通じて妻は一定の軟化をした、という流れだ。

 これを受けて番組の締めに当たる部分では、「フェイクを信じる人を否定してはいけない、ある種の共感を持って接することが大事だ」というような解説をしていた。これはカルト問題や陰謀論対策で誰もが口を揃える視点だ。まさに北風と太陽、いくら正論をぶつけて説得しようとしたって、信じ込んでいる相手は耳を貸さない。相手を論破することではなく、まずい状況を少しでも改善するという目的を意識すれば、相手への接し方は穏やかなものになる。以前書評した『テロール教授の怪しい授業』でも、学生の父親が陰謀論にハマってしまうエピソードでそのことが出てきた。

 考えてみると、こうした「相手に寄り添う」という姿勢は、一般社会からフェイクニュース問題を憂えて出てくるものであって、決してフェイクを信じる側から一般社会への姿勢として呼びかけられることはない。当たりまえだ。フェイク、デマ、陰謀論、いずれも感情を掻き立てて理性的な検証を拒むところに成立するもの、冷静さの上には成立し得ないものだからだ。

 つくづく、怖い時代だ、と思う。

--------(以下noteの平常日記要素)

■【累積42h03m】本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
実績25分、一昨日の学習範囲のチェック問題。会社法は未知の世界&区分毎に規定が違い覚えることが多すぎて、二日で随分記憶から落ちてるなあ。

■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『デカダンス』第7~9話、筋が転がるように展開していくねえ。『アイ★チュウ』第5話、Aパートが終わった時点で休息に飽きてしまい、切ることにする。『フェイク・バスターズ 新型コロナワクチンと誤情報』上記のとおり。

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