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0794:小説『やくみん! お役所民族誌』[24]

第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」
[24]二人のアナウンサー

<前回>

        *

 澄舞県庁の退勤時間は17時15分。二日目のインターンシッププログラムを終え、みなもは県庁前のバス停から澄舞大学行きのバスに乗る。すぐ先の県民会館がバス路線の結節点になっているので、この時間帯は次々とバスが来て、大勢の人を乗せていた。
 Lineで秋宮秀一に帰宅の目安を尋ねると、ノー残業デーの水曜日なので19時くらいには帰れるという。ならばと大学近くのスーパーで食材を買い込み、頃合いを見計らってグリルで鮭の切り身を焼き始めた。
「ただいまー」
「おかえり。うん、ナイス自分」
「どしたの?」
「秀くんレーダーが優秀だから、ちょうどお魚が焼き上がるところ」
 今夜の2人の食卓は、炊きたてのご飯と焼き鮭、出来合いの牛蒡サラダ、それにオニオンスープ。小さな正方形の座卓、対面ではなくL字方向に並んで座る。食器の配置は難しいけれど、少しでもくっついていたいから。
 食事をしながら、みなもはこの2日間のあれこれを話し続けた。秀一は適度にコメントを挟みながら、まるで小学校であったことを一所懸命話す娘に相対するお父さんのような、慈愛の面持ちで耳を傾けた。
 今日、二階堂とナチュラリズムの交渉で茂乃への返金の方向性が決まった後、みなもはすぐに朗に電話をした。朗は仕事を休んで茂乃とともに警察で事情聴取に臨んでいた。みなもの知らせを朗から聞かされた茂乃の歓喜の声が、スマホを通じて聞こえていた。
「インターンシップ先が消費生活センターじゃなかったら、こんな風におばあちゃんを助けることはできなかった。なんて運がいいんだろう」
「日頃の行いがいいんじゃない?」
「それ。おばあちゃんがいう信心のおかげって奴ね」
 茂乃は熱心な仏教徒で、朝夕に仏壇にお経を上げ、檀家寺の月二回のお参りを欠かさない。みなもは法事くらいしかお寺に行くことはないけれど、早くに夫をなくしたおばあちゃんの大切な心の拠り所なのだろうと感じていた。
 食事を終え、秀一が洗い物、みなもはお風呂の用意を分担する。手を動かしながら話は続き、二階堂から聴いたインタビュートラブルの話に及んだ。
「ああ、それ、うちにも話が来たよ。使うなと言った映像を放送したって」
 昨日、生活環境総務課の河上補佐が広報課を訪れ、生活環境部として今回の事案は看過できず、広報課を通じてすまテレに抗議して欲しいと申し入れていた。広報課の仕事柄、各局の朝・昼・夜の報道番組は三台のレコーダーに分けて毎日録画している。課長の求めで秀一がリモコンを操作し問題のシーンを再生した。「見た感じはむしろ勢いがあるし、全体にいい構成だけどねえ」と広報課長は言ったが、約束違反を見過ごせないという生活環境部の意向にも筋はある。広報課マターとしてすまいぬの件もあり、合わせて抗議するに至った。
 もちろん、職務で知り得たデリケートな情報を庁外で軽々しく話すわけには行かない。気を遣いながら、秀一は話を最小限に継いだ。
「柳楽アナは、一昨日の朝のテレビでも、すまいぬにちょっと強引なインタビューしてたでしょう。問題が続く時には続くね」
「問題なのかなあ。家で放送見てたけど、二階堂さん、カッコよかったよ?」
「あ、それは俺もそう思った」
「そういえば、明日すまテレに行くよ。ラジオ収録の見学」
「へえ、俺もすまいぬの収録ですまテレ行くんだ。何時頃?」
「午前中、時間はわかんない」
「もしかすると会えるかもね」
 ジャスミンティーを入れて、二人はあらためて座卓につく。白磁のカップを口元に近づけると爽やかな香りが鼻をくすぐり、ひと口含めば口中に温かなものが膨らんで、喉から胸、お腹へとゆっくり落ちていく。
「あー、沁みるなあ」みなもは緩んだ笑顔を秀一に向けた。「昨日今日、ずっと緊張してたんだって、今更気付くよ」
「大変だったでしょう。お疲れさま、あと一日だね」
「あと一日頑張るために、秀くん分を補給しなきゃ」
 カップを置き、すすす、と修一にくっついて両腕で抱き締めた。そのまま鼻先を秀一の首の横に押し当てる。すうっ、はふう。微かにツンとしたものが混じる香り。
「んー、一日働いた後の秀くんの匂い。これはこれでよしっ」
「えー、変態ちゃんですかあ」
「へへへ、吸わせろー」
 くんくんくんくん、と犬のように首筋の匂いを嗅ぐ。たまらん。そういや昨日、母しゃんも父しゃんの匂いを嗅いで悦んでたな。遺伝かな。
「俺も働いて疲れたー。みなちゃん分を補給しなきゃ」
 今度は秀一がみなもを抱きしめて首筋に顔を埋める。そのままみなもは身を横たえ、秀一が上から覆いかぶさる体勢になった。
「一昨日の朝から我慢してたっけね」とみなも。
「お預けは、もうおしまい」と秀一。
 みなもの首筋にキスを、二回、三回。顎から頬へと移って、唇が触れ合い、舌を絡める。粘膜を弄りあうと、甘美な痺れが脳と全身にゆっくりと沁みていく。
 秀一の掌が服の上からみなもの胸を包んだ。恋人の手に体を触れられることの心地よさ──。
 おぱーい、といいながら母しゃんの胸に手を伸ばして邪険に撃退される父しゃんの姿が脳裏をよぎった。
「……ぷっ」
 突然みなもが吹き出したので、秀一は怪訝な顔をした。
「なに?」
「いやあ、なんでもなあい。こっから先は、お風呂の後でね」
 若い二人の夜は、始まったばかりだ。

        *

 インターンシップ最終日。
 二階堂の運転するロシナンテは、今日は機嫌の良いエンジン音を鳴らしていた。
 松映市街地は、広大な澄鶴湖(すんずこ)から東の央海(おうみ)へ流れ込む平均川幅140mの央梁川(おうはしがわ)によって、南北に分割されている。橋北地区には県庁・市役所などの官公庁や国宝・松映城などの歴史景観地区があり、橋南は松映駅を中心に商業地区を構成している。
 駅から橋を渡ってすぐの央梁川北岸に澄舞テレビジョン本社屋が新築移転したのは、わずか三年前のことだ。みなもは中学生の時に学校行事で街外れの旧社屋を見学したことはあるが、中心市街地の新社屋は初めてだ。屋外駐車場で車から降りると、秋晴れの空の下、広い敷地を生かした低層の真新しいビルが鈍い黒銀に輝いていた。
 二階堂を先頭に、みなもと小室は玄関に向かう。玄関前には、台車で大きな荷物を運ぶ若い男女の姿があった。男は紺のスーツ姿、女はゆったりしたベージュのズボン、白のブラウスの上から水色の作業着のような上着を羽織っていた。
「あ、見覚えあるな。県の広報課の人だよ」
 二階堂がいうより先に、みなもは男が秀一であることに気付いていた。待ち合わせたようなタイミングに頬が緩む。秀一もみなもに気付いたようだ。
「おはようございます!」
 二階堂が二人に歩み寄りながら挨拶すると、二人も口々に挨拶を返してきた。
 二階堂と秀一は互いに面識がない。敢えて言えば、秀一は問題の録画を見ていたので、二階堂の顔はそれと分かった。
 女性の方は広報課の非常勤嘱託職員で、仲村静佳という。真っ直ぐに揃った前髪に隠れ気味の、少し陰のある瞳が印象的だ。消費生活室と広報課の書類のやりとりなどで時折り行き来があり、二階堂とは顔見知りだ。とはいえそれほど親しく会話を交わしたこともなく、二階堂は小さな声で「お疲れさまです」といって通り過ぎることになる。
 すれ違いざま、みなもが秀一に小さく手を振り、秀一も同じように返した。
 玄関に入ってから、二階堂がみなもに「知り合い?」と尋ねる。「今年県庁に入った、大学のサークルの先輩です」とだけ、みなもは答えた。
 階段を上がり二階の渡り廊下を進んだ先が、スマイレイディオのテリトリーだ。
 テレビと同じく澄舞・魚居両県をカバーするスマイレイディオでは、ウィークデーの10時から14時まで自主制作番組「すまいっと通り」を放送している。そのうち月に2回、金曜11時頃から5分間が、澄舞県消費生活センターのスポンサードコーナーだ。生放送ではなく前日までに録音・編集したものを流す。今日は明日放送分の収録だ。
「江戸川さん、できれば原稿差し替えたいんですけど」
 二階堂は挨拶もそこそこに、メインアナウンサーの江戸川欣二に書類を手渡した。60歳手前、キャリアは長くアナウンサー部の部長職にあるが今も現役だ。
「えー、そうなの? 今の原稿に絡めて渾身のギャグを仕込んどいたんだけどなあ」
「県内で起きたばかりの事件があって、県民にすぐに伝えたいんです」
 二階堂は香守茂乃の事件を受けて、高齢消費者被害の防止のために家族や地域の見守りを呼びかける原稿を昨日のうちに書き上げていた。江戸川アナと二階堂の掛け合い体裁による、県民向け注意喚起。説明の主体は二階堂で、プロである江戸川の合いの手はある程度お任せだ。それだけに、収録直前の差し替えは普通は厳しい。調整室の技術スタッフの二階堂を見る目も怪訝な色だ。
「難しければ、来週に回しますけど、できれば明日流したいなと」
「んー、ちょっと読ませて」
 江戸川はシナリオに目を走らせた。一度頭から終わりまで読み、再び頭へ。眉に皺を寄せた真剣な表情から、彼の脳が高速回転していることが窺えた。
「……ぷふっ、ふひゃひゃひゃっ」
 江戸川は突如破顔して両手を打ち鳴らす。
「うん、いいギャグ思いついた! この原稿でいきましょう。」
「ありがとうございます。で、どんなギャグを?」
「ないしょ。本番で爆笑しなさい」
 
        *

 本番の収録は、一発で終わった。二階堂は朝イチでイメージトレーニングを繰り返していたし、江戸川はさすがのプロだ。
「──あれ、笑うところって、どこかありました?」
 二階堂はO.K.を出した江戸川に怪訝な顔で尋ねた。
「またまたあ、今、必死で笑うの堪えてるんでしょ?」
「え?」
「え?」
 沈黙、2秒。調整室でその様子を聴いていたみなもは「ギャグってどこだった?」と小室に尋ねたが、小室も首を横に振るだけだった。
 江戸川は、しょぼん、とうなだれて立ち上がり、録音ブースから調整室へ続くドアを開けた。そこでくるりと振り返り、ビシッ、と二階堂を指差した。
「覚えてろ、来週こそ、爆笑させてやるぅ! うわあああん」
 だだだっ、とその場で小走りの真似。なんだろう、この小芝居。
 その時ふと、二階堂は察した。ギャグを思いついたというのは、周囲のスタッフの前で急のシナリオ変更を受け入れる流れを作るための便法だったのではないか。
 二階堂は立ち上がり、江戸川に深々と頭を下げた。江戸川はその様子を見て、んー、と首を捻った。
「それはえーと、待ってよ当てるから、んー、素っ頓京四郎の真似だね?」
「え、それ、芸人さんですか?」
「ううん、今作った」
 二階堂は苦笑した。この人とは無駄に話が長くなる。でもそれが嫌ではない。「喋り」のプロとして長年かけて培われたキャラクターの故だろうか。
「ともあれ、お疲れさま。帰る前にちょっとアナウンス部に寄ってくれる?」
 二階堂とみなもたちは、江戸川に先導されて渡り廊下を戻り、促されてロビーのソファに腰を下ろした。江戸川はそこから川方向に折れた廊下の先でドアを開け、中を覗き込む。そこがアナウンス部なのだろう。
「なぎらっち、ちょっと来て! 県庁の二階堂さん来てるから」
 中から出てきた柳楽修を伴って、江戸川は二階堂のところに戻る。
「二階堂さん。先日の放送では、使うべきではない映像を使ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。正式には報道部長が消費生活室に謝罪に伺うと申しておりますが、まずは柳楽の直属の上司として、心よりお詫び申し上げます」
 江戸川は頭を下げた。さきほどまでのおちゃらけた人気アナウンサーの顔ではなく、組織の管理職としての真面目な顔だ。その隣で柳楽も硬い表情で同じように頭を下げている。おそらく局内でたっぷり絞られたのだろう。
「いや、そんな、頭を上げてください」
 二階堂は慌てて両手を振った。
「結果的には、県民への注意喚起としてとても良い〆だったと、みんな言ってますから。香守さんと小室君もそうでしょう?」
 二人が口々に同意するのを聴いて、江戸川はにっこりと笑った。
「そういっていただけると、助かります。なにせこいつは」がしっ、と柳楽の方に右腕を回し「いいジャーナリスト魂を持ってんですよ。ただまだ経験が足りないから、やらかすこともある。自分のやりたい方向に無闇に突っ走るんじゃなくて、周囲と信頼関係を構築して映像に表現できるようになれば、大成すると思ってます。──思ってるんだぞ、俺は」
 江戸川は柳楽に微笑んだ。それから身を離して両手でメガホンをつくって口に当て
「いよっ、すまテレの星! 俺を養って!」
「養うのは勘弁してください」
「えー、だめなの? ちぇっ」
 皆が笑い、柳楽の表情もようやく緩んだ。
「なぎらっち、せっかくだから皆さんを玄関まで見送ったげてよ。俺は会議があるからさ」

        *

 ガラス張りの一階ロビーは駐車場側と央梁川側の二方向に開けた構造だ。みなもはガラス越しに、央梁川前のイベント広場で犬の着ぐるみが動いているのに気付いた。
「あ、すまいぬだ」
「今日は県の広報枠で使うアクションシーンの収録があるんです。見ていきますか?」
 柳楽の言葉にみなもは思わず笑顔を浮かべた。すまいぬを生で観たい気持ちが半分。もう半分は、近くにいる筈の恋人の仕事姿を補給したい気持ちだ。期待に満ちた表情で振り向いたみなもに、二階堂は微笑みを返した。
「県のマスコットキャラクターの撮影現場も、インターンシップの趣旨に合うよ。ラジオの収録も短時間で終わったし、次の予定には余裕があるから、見ていこうか」
「はい!」
 柳楽がディレクターに話をつけ、撮影の邪魔にならない位置に一同を案内した。ディレクターの近くにいた秀一がみなもに気付き、小さく頷く。みなもは手を振りたいが、我慢。心の中では思いっきり振っている。
 先ほど玄関で見かけた同僚女性の姿は周囲に見あたらなかった。
 左右に広がる川に面した広場は、秋の心地良い陽光の下、爽やかな風が吹いていた。広場の中心にいるすまいぬのスカーフも心なしそよいでいるように見えた。準備運動だろうか、すまいぬは脚を肩幅に開いて上体をゆっくり右へ、左へ回し、それにつれて両腕が体に巻き付き、膝が柔らかく浮き沈みする。余裕のある着ぐるみなので、中の人の動きは外から窺えるよりも大きいのだろう。
 みなもと小室がその様子を眺めている間、二階堂は柳楽の様子を気にしていた。先日の取材時に比べて、今日は口数が少ない。
「柳楽さん、もしかして、随分叱られちゃいました?」
「まあ、ちょっと……すごく」
 柳楽は目を合わさずに答える。
「すごくかあ、はは。でも、後悔はしてないみたい」
 二階堂のこの言葉で、柳楽と視線が合った。
「おや、分かりますか?」
「なんか、そんな顔をしてたので」
「あー、修行が足りないなあ、俺。謝罪の相手に、反省してないことを見抜かれてる」
 柳楽は右手を挙げ、指で髪の毛を梳いた。
「でも──何年も取材の仕事を続けていると、感じるんですよ。みんなマイクを向けると、心の中の本音と違う事を喋ってる。隠したいことがあったり、自分をよく見せたかったり、あらかじめ考えたシナリオをなぞっていたり、咄嗟に世間から期待されているとおりの役割を演じたり。
「ほら、子供向けイベントの取材でカメラを向けて『どうだった?』と聴くと『楽しかったです』とか、『平和が一番だと思いました』とか、微笑ましい定型句があるでしょう。子供は分かりやすい。大人は、心がひねてんのか、もっと分かりにくくて複雑だ。
「あ、でも、二階堂さんは分かりやすかったですよ」
「え、私?」
「インタビューの時、シナリオ読むなっていわれて苦労したでしょう。最初は記憶したシナリオを読み上げるのに必死で、目の焦点が合ってなかった。ちょっと技を使ってスムースなテイクを撮れたけど、それでも作文であることには変わりない。でもね、一旦撮影を終えた後のリラックスした二階堂さんからは、本当の声が聞こえました。放送しちゃったあの場面も、悪質業者と戦い消費者を護る最前線の澄舞県庁担当者として、魂の籠もった叫びでした。あれは使わない手はないだろうと、今でも思ってますよ」
 二階堂は、使わないでといった映像を使われた、いわば被害者だ。しかし、表面上は弁解と捉えることもできる柳楽の言葉を、素直に聴くことができた。柳楽の言葉に嘘はない。この人は信頼できるというあの時の印象は間違ってなかった、そう思った。
「柳楽さんの今のこれも、魂の叫びですね?」
「あ──うん、そうですね」
 柳楽は言われてやっと気付いた風だ。
「俺はね、本当はディレクター志望だったんですよ。人間に興味があって、ドキュメンタリーを撮りたくて、すまテレに入った。アナウンス部に配属になった時は正直凹んだけど、直接取材対象と会話を交わして相手の本音を引き出す仕事に、今はとてもやり甲斐を感じてます。──でもまあ、今回のことでしばらく謹慎ですけどね」
「えっ」
 月曜朝のすまいぬインタビュー事件のことを知らない二階堂は、自分の件だけで謹慎処分は重すぎると驚いて、柳楽の顔を見た。
「大丈夫、しばらくテレビへの露出が減るくらいの話です。二階堂さんに見抜かれたように、後悔はしてません」
 本番行きまーす、とディレクターが大きな声を上げた。映像撮りだけで音声は必要のない場面と聞いていたが、自然と皆が口を閉ざす。
 すまいぬが、すっ、と両手を胸の高さに挙げてから上体を捻り、歩き出す。地面に大きな円の軌跡を描きながら、身体は右へ左へ自在に転変し、両の腕はうねるように動く。なんだかダンスのようだなと、みなもは思った。
 中国拳法の中でも難易度の高い八卦掌の套路(型)だが、そうと知る者はこの場には他に誰もいない。孤高の武を「彼女」は演じていた。
「彼女も本当の自分を押し殺して生きている一人なんだよな……」
 柳楽が無意識に呟いたのを、みなもは聞いていた。自分たちを除いて、撮影現場には男性しかいないように見える。敢えて言えばすまいぬだが。
「すまいぬって、男の子って設定ですよね?」
 恐る恐る尋ねたみなもに、柳楽は「あ、ええ、そうですね」とだけ応えて、そのまま口を閉ざした。

<続く>

--------以下noteの平常日記要素

■本日のやくみん進捗
第1話第24回、5,403字から1,992字進んで7,395字でドラフト脱稿。ふう。もしかすると次回で第一話最終回にたどり着けるかも。着けないかも。年内の第一話ドラフト稿完成目指してがんばるー。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積325h15m/合格目安3,000時間まであと2,675時間】
ノー勉強デー。

■本日摂取したオタク成分
『薔薇王の葬列』第7~10話、群像劇だなあ。

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