0054:クレーム対応とストックホルム症候群
公務職場に限らず、どのような組織でもクレーム対応は日々発生しているだろう。理のあるクレームには誠実に対応をしなければならない。どうしようもない事に相手が納得出来ず話し続ける時も、切り上げ時を計りながらも、「話を聴くこと」自体がクレームを終息に導くこともある。問題はハードクレーム、無理難題を強要しようとするものだ。その対応には、良い意味での「慣れ」が必要になる。
私も二十数年間の公務員経験の中で、特にクレームが集中する職場を複数経験し、行政対象暴力を匂わせる輩系とも対峙した。最初は「嫌だなあ」と憂鬱だったものだが、やがて「慣れ」た。慣れは対応の余裕に繋がる。
輩系は相手を支配する技術を持っている。大きな声。不機嫌な素振り。こちらの話を途中で遮る。わざと非論理的なことを投げつけてくる。いずれも相手の心理をかき乱しコントロールする意識的な技術だ。こちらが複数で対応すると、必ず一人に攻撃の的を絞り、別の一人を「お前はいいヤツだ」と持ち上げる。何故か。集中攻撃された者は萎縮し、持ち上げられた者は良好な関係を崩したくないと思い、周囲の者は(攻撃されるのは嫌だ)と口を閉ざす。こうして彼らは一対多の交渉の中でも場の支配権を獲得するのだ。
この心理支配に拘束されてしまうと、彼らが引き上げた後でも、無意識に相手の機嫌を損ねず要求を呑もうとする動きが生まれる。ストックホルム症候群をご存知だろうか。銀行強盗の立てこもり事件に際して、人質が強盗に共感して積極的に支援する現証が起きた。18年前の北九州監禁殺人事件を覚えているだろうか。拷問や虐待により被害者家族を支配し、家族同士で拷問や殺人を行わせた事件だ。いずれも被害者側はある時点から積極的に犯人と同じ立場に立ち他の被害者や警察を攻撃する側に回った。昨年起きた、若い公務員のケースワーカーが粗暴な生活保護受給者の手下のように扱われ死体遺棄の共犯となった事件は、記憶に新しく、そして、いたましい。組織が若者を守れなかった典型であり、彼の上司も心理支配に拘束されていたことが次の記事からも窺える。
「死体遺棄の生活保護ケースワーカー、公判で見えてきた異常すぎる実情」(ダイヤモンドオンライン)
これらの事件の被害者の心理と行動は、生存本能として説明される。圧倒的な力を持つ強者に支配され、強者の「味方」になることで、自分の身の安全を図るのだ。それは意識して行われるものではなく、生理反応として起こる現象だ。だから、その仕組みを知らなければ、容易に強者の手下になってしまう。上記記事の事例では、組織として対峙すべきなのに一人一人が自己保身に走った(そのようにコントロールされてしまった)結果、護るべき若手職員を護れず犯罪者にしてしまった。
クレーム対応の「慣れ」は、相手の暴言が支配技術なのだと理解し、自分の心身反応が生物的に自然な反応であると受けとめた上で、相手に支配されずに自分のペースを護る余裕を生み出す。そのための知識と経験を、研修やOJTの中で組織の中に広げていく事が、悲劇を招かないために必要なのだと思う。
■本日摂取したオタク成分
『エール』本日分、古関裕而って、そんなに売れっ子だったんだ。『シュガー&シュガー』第11回、ギタータイムアタック笑った。『秘密結社鷹の爪ゴールデン・スペル』第2話、鷹の爪は第1期放映時から観てるけど安定の面白さ。『トニカクカワイイ』第6話、安定のほんわか。
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