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0669:餅は餅屋(統一教会名称変更問題)

統一教会名称変更問題については、これまでに三回、元公務員として公務組織の中の動きに注目して記事を書いてきた。

https://note.com/f_san/n/n6e5f8b98ca3f

https://note.com/f_san/n/nb8736c436911

メディアがこの問題を追ってきているが、今ひとつ的を射損ねている感が拭えない。

例えば、文化庁に開示請求をした決裁文書のうち「規則変更理由」が黒塗りになっていることを各メディアが問題視している。

しかし、そこは拘るところじゃない。理由はふたつある。

第一に、黒塗りは一行余白として二行ほどに過ぎず、「国際機関の変更に準じるため」とか更にメタレベルで「役員会の議決による」とか、大したことは書いて無い筈だ。仮に内心の動機が悪名の払拭であったとしても、行政に申請する文書にそんなことは書かない。報道で出てくるのは申請書そのものではなく文化庁のとりまとめた書類だが、そこには申請書から淡々と転記されている筈だ。

第二に、情報公開法5条2号イにより「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は非開示情報に指定されている。併せてロも参照してほしい。

行政機関の保有する情報の公開に関する法律
(行政文書の開示義務)
第五条 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
(略)
二 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの
三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
四 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
五 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ
(部分開示)
第六条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。ただし、当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。
2 開示請求に係る行政文書に前条第一号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。
(公益上の理由による裁量的開示)
第七条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報(第五条第一号の二に掲げる情報を除く。)が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができる。
(略)
(第三者に対する意見書提出の機会の付与等)
第十三条 開示請求に係る行政文書に国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人及び開示請求者以外の者(以下この条、第十九条第二項及び第二十条第一項において「第三者」という。)に関する情報が記録されているときは、行政機関の長は、開示決定等をするに当たって、当該情報に係る第三者に対し、開示請求に係る行政文書の表示その他政令で定める事項を通知して、意見書を提出する機会を与えることができる。
2 行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当するときは、開示決定に先立ち、当該第三者に対し、開示請求に係る行政文書の表示その他政令で定める事項を書面により通知して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、当該第三者の所在が判明しない場合は、この限りでない。
一 第三者に関する情報が記録されている行政文書を開示しようとする場合であって、当該情報が第五条第一号ロ又は同条第二号ただし書に規定する情報に該当すると認められるとき。
二 第三者に関する情報が記録されている行政文書を第七条の規定により開示しようとするとき。
3 行政機関の長は、前二項の規定により意見書の提出の機会を与えられた第三者が当該行政文書の開示に反対の意思を表示した意見書を提出した場合において、開示決定をするときは、開示決定の日と開示を実施する日との間に少なくとも二週間を置かなければならない。この場合において、行政機関の長は、開示決定後直ちに、当該意見書(第十九条において「反対意見書」という。)を提出した第三者に対し、開示決定をした旨及びその理由並びに開示を実施する日を書面により通知しなければならない。

規則の変更理由が直ちに「当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」ものといえるかどうか(文化庁はこれを理由に挙げている)は疑問もあるが、上記記事によれば全ての法人についてここは非開示として運用しているようだ。前述のとおりここには大したことは書かれていない。ここに拘って不服審査請求をして仮に後日開示されても、おそらく大山鳴動鼠一匹の結果に終わる。

もうひとつ、本日のミヤネ屋で紀藤弁護士の発言内容について。これはそのものを確認しておらずTwitterでの引用の誤りの可能性があるが、「通常は現地に行くなどして3年くらいかかる認証が、今回のは現地に行かずに短期間で認証が下りたのは異質だ」という趣旨の発言をされたという話を読んだ。紀藤弁護士の発言内容を正確に引用しているかどうかは留保するとして、この内容自体は、誤りだ。今回はあくまで規則の変更認証申請、法律上の形式要件を満たしていれば行政は機械的に認証する筈のものだ。現地視察なんてかけらも必要ない。

以上の二点は、どうもメディアが攻めどころを間違っているようで、隔靴掻痒の感がある。行政法の専門家であったり行政経験のある人に監修させれば、もっと的確な打ち出しができる筈なのに、勿体ない。

私なら、以下の点を攻める。

1997年から2015年までの間の、統一教会の名称変更に関する事前相談と行政指導の一切の記録の開示請求

正式な起案決裁文書は最終的な上澄みに過ぎない。ポイントは決裁以前の調整段階の記録だ。法人台帳には必ず綴られている。開示請求に対して全て黒塗りだろう。まずはそれでいい。存在を量的に確認すること、そして、今の文化庁担当ラインが過去の履歴を全て目を通し真実を理解することに、きっと価値がある。

情報公開法7条に基づく「公益上の理由による裁量的開示」の求め

これは正規の申請手続があるわけではないが、メディアはまさに「公益上の理由」として開示を求めているわけだ。議論の中で、法人情報ではあっても開示をすることの「公益上の理由」の有無を議論することは、最終的な判断権は文化庁側にあるとしても、大事なことと思う。公益性がなければどうしようもないわけで。

情報公開法13条に基づく統一教会への意見照会結果の開示請求

これも全面黒塗りと予想されるが、少なくとも意見照会をした事実は明らかになる。そこからまた攻め口のヒントが見つかるかもしれない。

--------以下noteの平常日記要素)

■本日のやくみん進捗
第1話第22回、963字から進まず。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積268h27m/合格目安3,000時間まであと2,732時間】
ノー勉強デー。

■本日摂取したオタク成分
『宝島』第1~2話、私が13歳の時のアニメ。当時は大抵のアニメは押さえていたように思うのだが(作品数が圧倒的に少なかったからね)、これは見た記憶がない。存在だけは昔から知っている作品、AT-Xの一挙放送を機会に観始める。ふむふむ、出﨑統テイスト全開。今のアニメに慣れた感覚だと展開が遅いとかんじるのだろうな。

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