0664:三度(みたび)考える「旧統一教会の名称変更と行政の認証手続」

世界基督教統一心霊協会(略称「統一教会」)が世界平和統一家庭連合(略称「家庭連合」)に名称変更し宗教法人規則変更認証を受けた件については、これまでに2回、記事にした。

https://note.com/f_san/n/n6e5f8b98ca3f

私は旧統一教会批判を意図しているのではない。元公務員であり、公務員小説「やくみん! お役所民族誌」で行政内部及び対外的な権力的現象を描くことに挑む者として、宗教法人規則変更認証手続における行政の挙動に注目しているのだ。

その意味で、最初に統一教会が名称変更を文化庁に打診した際の宗務課長・前川喜平氏のインタビュー記事の公開は、最上級の証言になる。前川氏は事務次官まで上り詰めながら安倍政権に職を追われた結果、こうした裏話を躊躇無く語ってくれる点が有り難い。

まだ前編なので後編も固唾を呑んで待つが、前編だけでも

  • オウム事件を受けた改正宗教法人法により、統一教会の所轄庁が東京都から文化庁に移管された最初の時期にあたる(1997年)。

  • 当時文化庁では、統一教会を含め公序良俗に反する宗教法人の解散命令ができないか検討していた(結局断念)。

  • 97年当時は正式な変更認証申請ではなく事前相談の段階だった

という重要な情報が目に付く。

これまでの記事で明記はしていないが、認証が下りた2015年以前は正式な申請があったのか事前相談段階だったのかが不明なことは、念頭にあった。以前記したとおり、認証申請は形式的に適法であれば行政は拒否することができない性質のものだ。今回の記事で、少なくとも97年当時は申請以前の事前相談だったことが分かった。

関連して、有田芳生氏のツイートで、2015年当時に有田氏が文化庁に質問して得た回答書が公開されている。

https://twitter.com/aritayoshifu/status/1550299538078199808?s=20&t=q6y1vwmypLHh29e9mgLdKw

まず有田氏がツイートで問題視しているA3及びA4と今回の下村代議士経由の文化庁回答の「矛盾」については、私のシリーズ記事の2回目で解説したように、今回の文化庁回答は「一般的に大臣に伺いを立てない」とはいっていても「本件について伺いを立てていない」とは記していない。あと、「伺い」は意思決定のニュアンスを含むと捉えるならば、「周辺情報としての説明」とは別物と言い張ることもできそうだ。だから私はここは矛盾とは捉えておらず、やっぱり今回の文化庁回答は「嘘は言わずにはぐらかす」巧妙に練り込まれた文体だなあとあらためて思ったに留まる。

むしろ注目はA2だろう。諸問題への懸念を統一教会に話して「結果として統一教会側から名称変更の申請はありませんでした。よって文化庁として却下した事実がありません」とある。2015年以前に申請はなかったから却下した事実がない──前川氏の証言とも平仄が合う。

しかし。あたかも統一教会の自由意思であるかのように書いているが、実態は文化庁側が「申請を出させなかった」ことを容易に推察させる。

正式な行政処分以前に様々な指導助言を行うことは違法ではない。それは「行政指導」として、やはり行政手続法の規律を受ける。

行政手続法
第四章 行政指導
(行政指導の一般原則)
第三十二条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
(申請に関連する行政指導)
第三十三条 申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。
(許認可等の権限に関連する行政指導)
第三十四条 許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。

33条で「申請の取下げを求める行政指導」の規定がある。名称変更はダメだ、と非権力的な行政指導を行ったとしても、統一教会側がそれに従わなければ申請書は提出できた筈なのだ。だから、1997年から2015年の間に、本当に一度も正式な申請が提出されなかったのか、提出されたけれども超法規的に受理を拒んだ(取り下げさせた)のか、まずそこが気になる。次に、実際に申請がなかったとしたら、文化庁は統一教会にどのような「圧迫」を掛けたのか、とても関心がある。

統一教会側は社会的批判を受けているから、文化庁の強硬な行政指導に対して反発するのは得策ではないと判断したのかもしれない。と、すれば。2015年に、それまでと何が変わったのか。なぜこの時期に申請をするに至ったのか。行政内部のドラマが目に浮かぶようだ。

前川氏の前編記事の最後は、2015年に前川氏が文科省ナンバー2の文科審議官の職にあった、という話で終わっている。後編が待ち遠しい。

--------以下noteの平常日記要素)

■本日のやくみん進捗
第1話第22回、326字からちょうど150字進んで476字。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積268h27m/合格目安3,000時間まであと2,732時間】
今日もノー勉強デー

■本日摂取したオタク成分
『マクロスF』第21~最終話、素晴らしい盛り上がり(いささかの力業)で物語が無事着地。菅野よう子楽曲が作品の魅力の半分近くを占めるな。『異世界おじさん』第3話、笑うわー。『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第3話、狂気のような日常の世界。

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