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0096:公務員の作り方(6)

 失意のうちに異動した先は、これまでまったく縁のなかった部局の一所属で、最初は関心の持てそうにない分野だと思った。ところが日を追うにつれ、眼から鱗がぽろぽろと落ち、その面白さに夢中になった。規制行政と支援行政のバランスの上に成立するその分野は、きちんと為すべき事を為す体制にあった。上司にも恵まれた。前の職場ではまともな議論が成立しなかったが、ここでは上司との間で侃々諤々議論を戦わすことができた。時には上司の論を納得して受け入れ、時には上司が私の意見をくみ取ってくださり、行政処分の方針も、広報啓発の新しいアイディアも、様々なことがクリエイティブに進めることができた。現時点で振り返っても、二十数年間の公務員経験の中で最高にやり甲斐のある職場だった。

 その後の異動では、民法実務に携わる給付行政の現場や、一般市民と関わる仕事、庁内調整の仕事などを経験した。もう「公務員なんて嫌だ」と思っていた若き日の私はどこにもいない。公務職場は社会の安定と成長のための仕事だ。人の幸せに関わる仕事だ。派手な部門もあれば地味な部門もある、その全てが、欠かすことの出来ない大切な歯車なのだ。どこに異動しても、それぞれの面白さとやり甲斐がある。心の底からそう思っているよ。

 その仕事を、来春、定年より随分と早く辞すことに決めた。次回からあらためてその辺りの話を書き留めておきたい。「公務員の終わり方」に続く。

 本日のヘッダ画像は香川県高松市・屋島寺の狸と瀬戸内海。

■本日摂取したオタク成分
『一人之下』第20~22話、つまらなくはないんだけど陰惨で、ラテンタイショウ編の雰囲気の方が好きだったな。『陸王』第8~最終話、うん、面白かった。最終回はしっかり盛り上がった。

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