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0058:人事の視点

 11月も後半となり、各役所の水面下では来年度の組織・人事の調整が本格化している。

 公務員に「競争率の高い試験を潜り抜けたエリート」というイメージを持っている人はどのくらいいるだろう。ある面では正しいが、総体としては間違っている。確かに公務員試験の倍率はそれなりに高いから、主として知識面+学生時代のキャリアによる選抜が行われていることは確かだ。しかし試験は一面一回でしかない。合格して入庁した人々を眺めると、本当にいろいろな経験・知識・性格・意思の人が混じっている。

 働き蟻の法則は有名だ。蟻の集団の中には必ず二割ほど働かない蟻がいるという。働く八割だけで新しいコミュニティを構成してみても、やはりそのうち二割が働かないのだと。(巷間に流布する説と元々の学説は違いもあるらしいのでそこらは慎重に)

 公務員試験という選抜を受けた集団も、また一般社会の縮図だ。働きの良い人も悪い人もいる。人格者もいればエゴ丸出しの人もいる。たまに犯罪を犯す人もいて、私の仕事上付き合いのあった別の役所の人などは正義感溢れる仕事ぶりだったのだが、ある日汚職が発覚して逮捕され懲戒免職となった。外から見える姿と内面が大きく食い違っていた事例だ。

 人事とは管理職にとって組織作りだ。特に所属長にとっては、どのような駒を揃えることができるかで、自分の業務執行イメージをどこまで実現できるかが左右されるから、人事は命綱だ。あちこちから引く手あまたの人材もいれば、押し付け合いで引き取り手がなく、優秀な人材と抱き合わせで受け入れさせられることもある。どれだけ優秀でも、上司の意に従わず自分の判断を主張するタイプは、嫌われる。組織全体としては有為な人材でも、自分の部下としては手に余るからだ。人事部門は、全ての所属長がそのように考えて提出する希望を、最後は決着させなければならない。パズルのピース合わせは、様々な喜びと落胆を生む。管理職にも、一般職員にも。

 毎年この時期、人事上の希望を提出した後はまな板の上の鯉の気分だった。今回は年度末の退職を決めているので、ただカウントダウンしながら、目の前の仕事に集中することができる。二十数年勤めたこの役所とも、あと四ヶ月余りでさよならだ。これまでは良くも悪くも組織に護られてきた。これからは良くも悪くも自分の才覚で世を渡ることになる。


■本日摂取したオタク成分
『ラストピリオド 終わりなき螺旋の物語』第3~5話、やはり面白いなあ。ソシャゲ原作のアニメながら、3話では『ひぐらしのなく頃に』のキャラクターが登場、5話ではガチャの沼を自嘲的にネタにしている。ゲーム類が原作で潤沢な予算でスタッフが好き放題した怪作としては『カブトボーグ』があったが、ラストピリオドはアニメとしても洗練されているのがいい。『三島由紀夫 50年目の"青年論"』、三島は実は1作しか読んだことがなくて内容もほぼ忘れている。このドキュメンタリーは観入った。とことん「情の人」だったんだなあ。退職して時間ができたら全集読んでみようかな(司法書士試験勉強は?)。

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