トランス関連用語の定義と解説
■トランス関連の専門用語は……
・急速に変化している。
・新しい用語が次々と生まれている。
・既存の用語の定義に変化がみられる。
・言葉をめぐる誤解や討論、意見の食い違いがよくみられる。
・とある団体での定義はその団体内での使用に限られる。
・異なる文化、コミュニティ、文脈によって、用語の定義も違ってくる。
■トランスジェンダー関連用語
・性別:Sex:セックス
身体の生物学的性別。
・性別:Gender:ジェンダー
社会的性役割。
・Gender role :ジェンダー・ロール
社会的性役割規範。
・ジェンダー表現:Gender expression
パーソナリティ、外見、 行動に立ち現れた、社会的性役割表現。典型的な男女のジェンダーに頼らない者もいる。
・性自認:ジェンダー・アイデンティティ:Gender identity
男(men)である、女(women)である、あるいはそれらとは違う何らかの代わりの属性であるといった、個人に『内在化』された感覚。
・性別違和:Gender dysphoria
性自認と生物学的性別との食い違いによって引き起こる苦悩。
・ジェンダーに非同調な:Gender nonconforming
文化的・時代的に規範とされる性自認・性役割・ジェンダー表現が、身体の性別(sex)に付与されるジェンダーとは異なっている人を表す形容詞。
・FTM / FtM:Female-to-Male
生物学的性別が女性(female)である個人が、身体や性役割(gender)を、より男性的なものに変えようとしている、あるいは変えた状態。
・MTF / MtF:Male-to-Female
生物学的性別が男性(male)である個人が、身体や性役割(gender)を、より女性的なものに変えようとしている、あるいは変えた状態。
・Trans:トランス
移行。
・性別移行:Transition:トランジション
生物学的性別(sex)に結びついた性役割(gender)から、異なる性役割(gender)へ個人が変わろうとすること。性別移行は、ホルモン療法や他の治療による身体の女性化や男性化を含むこともあれば、含まないこともある。
・トランスジェンダー:Transgender
性自認が生物学的性別とは異なる人々。その程度は様々。
・異性装者:Crossdresser / Transvestite:クロスドレッサー / トランスヴェスタイト
異性に典型的とされる服装や、性役割表現の実現する者。
・ジェンダークィア:Genderqueer
性自認や性役割が『男女』という二元的ジェンダー観に同調しない人々が『自己のアイデンティティを表すために』使用するラベル。
・トランスセクシュアル:Transsexual
異性化を促す医学的介入によって、一次性徴や二次性徴を変えることを希望する、あるいはすでに変えた人々のこと。永続的な性役割の変更を伴う。
・性同一性障害:Gender identity disorder
『DSM IV-TR 』に規定された正式な診断名。 性同一性障害とは、異性への強く持続した同一感、および自らの生物学的性別(sex)に対する不快感に特徴づけられるもので、臨床的に著しい苦痛を引き起こしている状態のこと。通称『GID』。
・性別適合手術:Sex reassignment surgery/gender affirmation surgery
一次性徴や二次性徴を変えるために行なう手術。通称『SRS』。
・シス:Cis
同調的な。シス女性はジェンダーに同調的な女性。シス男性はジェンダーに同調的な男性。
・トランスフォビア:Transphobia
トランス嫌悪。
・性分化疾患:Disorders of sex development
通称『DSD』。染色体・性腺・解剖学的な性(sex)の発達が非典型的である先天性疾患。インターセックス(intersex)もしくはインターセクシュアリティ(intersexuality)も同様。性分化疾患はトランスジェンダーではない。
■解説
上記の文章は▶︎世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会 “WPATH”の定義を元に記した。その際、トランスジェンダリズム思想を出来るだけ除外するよう心がけた。
■用いなかった概念
・割り当てられた性別
『出生時に医師に外性器を視認され、割り当てられた性別』というフレーズがトランス関連の文章によく見受けられるが、医師は観察の結果を記録するのみで、性別を割り当ててはいない。
■用語としてのみ使った概念
・性自認
人間の内面に性別があるかどうか、証明はされてはいない。
■ひとことメモ
・同性愛
1967年、イングランドとウェールズで合法化(それまでは処罰の対象)。
1980年、スコットランドで合法化。
1982年、北アイルランドで合法化。
1990年、米精神医学界のDSM-4で治療対象から外れる。
1990年、WHO国際疾病分類ICD-10で治療対象から外れる。
・異性装
欧州では異性装が宗教的に『異端』である時代が長かった。
2018年、WHO国際疾病分類 ICD-11で治療対象から外れる。
米精神医学界のDSM-5ではパラフィリアのひとつとして現在も治療の対象。
・命名の歴史
『トランスヴェスタイト=服装倒錯症』『トランスセクシャル=性転換症』という概念が先にあり、後に『トランスジェンダー』という概念が生まれた。
トランスジェンダー(Transgender)とは性転換症と服装倒錯症あるいは異性装との中間を示し、ホルモン療法は受けるが手術までは希望しない人を指す狭義の使われ方があるが、性転換症という医学的な病理化に反対する立場から、「病気ではなく、 生き方である」という主張を含む用語として使われる。これはアメリカの Virginia Princeによる造語である。
康 純『性同一性障害の概念について』より抜粋
■まとめ
・『トランスジェンダー』という語句は総称
2020年現在、『トランスジェンダー』は、生物学的性別とは異なるジェンダーや身体で生活を望む者全てを指す用語として使われている。
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■参考
・世界トランスジェンダー・ヘルス 専門家協会PDF↓
・『性同一性障害の概念について』康 純↓
・福岡GI性別不合診断クリニックGIC↓
・BBC
・Nexdsd Japan