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【エッセイ】ユメと現実 ~ミリ10th Act-2のSING MY SONGに寄せて~

2023年7月30日、ポートメッセなごや。
真夏の熱気に包まれる会場で、私は体温よりも熱い涙を流していました。

――だから私は、歌を歌うわ。
夢、叶うまで――

私が聞いていたのは、最上静香役の田所あずささんが魂を込めて歌ったバラード『SING MY SONG』です。

これは一端の春香・エレナPである私が、最上静香役田所あずささんを前にして、枯れるまで流した涙についての回顧録です。
Act-2の感想というにはほど遠く、半分は私の気持ちの整理のために書いている文章です。
昔のことを書くので、自分事ながら多少事実と相違することもあるかもしれません。また、ネガティブな感情に触れる部分があります。予めご了承ください。

大した価値のない他人の人生、それでも興味を持ってくださるのでしたら、しばしお付き合いください。


2017年~ミリ5th 時間を止めるまで

2017年。

私は”プロデューサー”になりました。
ニコマスから765プロにハマり、春香Pとして活動を始めました。

奇しくも同時期に始まったゲームがありました。

ミリオンライブ! シアターデイズ。

私は765とミリオンにそれぞれどっぷりと浸かっていきました。

ところで、「最初に好きになった子」と「今担当にしているor最も好きな子」が別である、という経験はありますでしょうか。
まったく視線がブレず一途だという方もいらっしゃるかもしれませんが、私はというと、担当の春香以外にも「あ、この子いいなあ」と思う瞬間がなにかとありました。

そのひとりが、最上静香でした。
実は初めて引いたSSRが静香だったのですが、特に好きになったきっかけはこの年の10月に発売されたばかりの『SING MY SONG』でした。

こうして昔のツイートを見返していると、自分が担当以外のアイドルに「大好き」という言葉を使っていることに驚かされます。それだけ本当に好きだったんだと思います。

訂正、最近でも軽率に言ってました。時間的に多分酔ってるけど。

閑話休題。
私はもともとバラードが好きだったので、まず曲調が好みでした。田所あずささんの伸びやかな歌唱力も相まって、美しい旋律は私の心をバッチリ掴みました。
また、静香の境遇についても気になるところがありました。実力を出すために焦っているように見える静香が、柔らかい声で苦しくても未来を信じて前に進もうとする歌詞を歌っているのです。新米Pの私でも、それがどれほど凄いことかは理解できました。

思い返すと、2017~2018年頃というのは(特に私のようにミリシタから入ったPにとっては)特異な時期だったと思います。一言でいえば、成熟したグリマスと生まれたてのミリシタが交錯する時期です。
特に『SING MY SONG』はわかりやすい例だと思います。タイムリミットの中で焦るようにアイドル活動を送っていた静香が、仲間と過ごす日々を経て、柔らかく、伸びやかに成長する――『SING MY SONG』はそんな静香の背景が分かっているとすんなり理解できると思います。
しかし私たち新米Pは、それを想像するしかできません。動き出したばかりのミリシタをメインに追っていると、ゲームの序盤でいきなりエンディングを見せられたような感覚に襲われます。それでも不自然さを感じなかったのは、やはり当時のプロデューサーさんたちが色んな発言・コンテンツで「最上静香とはこういうアイドルだ」と発信していたからだと思います。「ああ、きっと静香にはこういう背景があって、それで『SING MY SONG』という素敵な曲をもらったんだなあ」とポジティブに想像することができたのです。

しかし私は何かと視野が狭く、他の曲を聴いてみようだとか、もっともっと静香について知りたい、というところまでは行かなかった模様です。

しばし時は流れ、ミリ5thの時期がやってきました。
アイマスライブとしてはハッチポッチや初星宴舞を経験していましたが、これが初めてのミリオンライブ単独ライブでした。
ハッチポッチや初星は幸運ながら片方を現地で見ることができましたが、今回は(現地落ちたのかどうかは覚えていませんが)両日LV。それでも会場のSSAが近かったので現地推しして、このとき初めて交流目的でたくさんの方とお話をしていました。そういう意味でも思い出深いライブでした。

そんな新米Pの私が楽しみにしていた曲は色々とありました。もちろん、特に期待していたのは『SING MY SONG』です。この壮大なバラードをどのように歌い上げるのか、それが楽しみで仕方ありませんでした。

……

結論から言うと、大きなモヤモヤが残りました。
お気を悪くされたら申し訳ないのですが、この日の『SING MY SONG』のパフォーマンスは、私が期待していたものではありませんでした。失礼なのはわかっています、このように思ってしまってごめんなさい。
田所あずささん本人もそのような旨は語っており、歌い手・聞き手双方ともに納得がいかないものであったことがわかります。

私ごときに人様の歌の上手い・下手を論じる資格など無いと思っています。歌が悪かったとは全く思っていません。
それでもこのように言っている理由として、「歌詞の間違いにガッカリした」というものがあります。間違いを許さない――という態度は自分にも他人にも押し付けていない自負はあるのですが、当時私には、大好きでどうしても聞きたい歌詞があったのです。

「たった1フレーズも、変えていくわ百万の輝きへ、眩しい星の様な――」

2番サビのフレーズです。歌詞の中に織り込まれたミリオンスターズの要素……ここに仲間の力を得た静香の輝きが描かれているようで、その演出の巧妙さと物語の美しさに心を打たれていたのです。作詞が演出に長けた松井洋平氏であることを後から知り、膝を打った覚えがあります。
しかしここを間違えてしまっていました。この歌詞が歌われることはありませんでした。強く期待していただけに、ショックでした。

この日以降、私はあまり『SING MY SONG』が聴けなくなってしまいました。モヤモヤを思い出して苦い気持ちになってしまうのもそうですし、そのような気持ちになってしまうことが、田所あずささんや静香に対してあまりにも失礼だと感じてしまうからです。モヤモヤするからといって演者やキャラクターにマイナスイメージを抱くのは絶対に嫌でした。
こうして、私はあまり『SING MY SONG』を聴かなくなってしまいました。

ひとつの時間が、止まりました。

ミリ6th福岡 夢叶うまで

ミリ5th以降の2018年は、私にとって苦しい時間でした。
さすがにアイマスPになって1年が経つと、「765とミリオンでは供給頻度に大きな違いがある」ということを察し始めてしまいます。私は「ミリオンライブだって765プロだろう」と素直に思うことができず、「765は765で供給がないと苦しい」「ミリオンにどんどん765の、春香のリソースが奪われてしまう」と思うようになってしまいます(この感覚の妥当性は今は論じません)。特に春香単独Pだった私は、プロデューサーミーティング2018で繪里子さんが発した「私の手を離さないで」というMCが胸に深く深く突き刺さってしまい、次第にミリオンライブを純粋に楽しめなくなってしまいました。

そんな中迎えた6thライブツアー。
最初の仙台公演は私の東北旅行と重なっており、当初予定に無かった現地近くの映画館でのLVに誘われました。
そこで、Cleaskyが天海春香の『笑って!』を歌いました。
これは当時の私が(今でもですが)いちばん愛していた曲で、天海春香の特別な曲として信奉していました。
それを「765の出番を侵食している(と当時の私が思っていた)ミリオンでカバーされた」ということで、酷く混乱しました。

765ASが好きな人にとっては、ライブが無い、CDの展開スピードは遅い……という中で、ミリオンライブがどんどん765プロとして先に行ってしまっている感じがして、皆が皆ではないけど、ものすごくモヤモヤしてた時期なんです。で、先行きも無いなかでミリオン6thライブツアーがあり、特に仙台公演だとどのユニットも765ASの曲をカバーしたじゃないですか。そのことにものすごくモヤモヤした方はいらっしゃったんです。僕は当時「ASの曲のことをライブラリーかなんかと思ってるんじゃないの?」と怒っていました。あまりにも登場の機会に差があるのに、いいように使われたという気分があったんですよね。

“学会員”インタビュー⑳れぽてんさん|天海春香学会 (note.com)
※発言は私そにっぴーのものです

この後結局、「だからといってCleaskyのことを嫌いになりたくない、ステージ自体は良かったから絶対批判なんてしたくない」と思い、気づいたらCleasky自体を好きになり、それをきっかけに次第にミリオンライブを好きになることができました

……という私の人生の一大事があった裏でも、ミリ6thのツアーは淡々と進んで行きます。
Fairy STATION、 福岡公演の日がやってきました。私はツアーに現地参加する気力を持ち合わせていませんでしたが、やはり無視することはできず、LVチケットを両日握りました。そしてそこには、最上静香・ジュリアのユニットD/Zealがいました。
D/ZealのドラマCDはドラマチックで聴きごたえのあるものでした。また前述のとおりバラードが好きな私は、C/W曲の『餞の鳥』に大きく惹かれていました。当時のミリオンへの感情云々はさて置きといった感じで、それなりに楽しみにしていました。

ところで「演出」というものは、傾向が読まれたあたりで傾向をわざと崩していくことでマンネリを打破するのが定石だと思います。ミリ6thにおいて仙台→神戸と歩みを進めるうちに読まれていた「傾向」は、「どのユニットでもASカバーをする」というものでしたが……。
さて、ツアー最後(当初)の福岡公演で先陣を切ったのはD/Zealでした。『ハーモニクス』を激しく歌い上げ、続いて聴こえたのは……

空を彩る星に乗って
あたしは未来へ――

ASカバーではなく、ジュリアの『流星群』でした。
まさかの演出と美しいデュエットに熱狂したのをよく覚えています。
MCパートの後、愛美さんはゆっくりとしたリズムでギターを奏ではじめました。

既知のイントロではなかったので、最初は何の曲かわかりませんでした。
しかし。

この音を……私は知っている。

会場にどよめきが起こりました。私は震え、固まりました。
愛美さんが弾いていたそれは……

『SING MY SONG』のイントロでした。

愛美さんのアコースティックギターとハモリを得て、のびのびと歌う田所あずささん。音を楽しむと書いて”音楽”。”音楽”を奏でる二人の姿が、そこにありました。
私の目はくぎ付けでした。

5thの『SING MY SONG』に未練を覚え、この曲の存在を記憶の底に閉じ込めた私。
心を覆う氷を、D/Zealの2人が温かく溶かしました。

このツイートに書いていますが、『SING MY SONG』を心の奥底に閉じ込めてでも、嫌いにならないで本当によかったです。

変なモヤモヤは全部涙で流しました。もう思い悩む必要がありません。LVながら、最高の『SING MY SONG』のパフォーマンスを見ることができたのですから。
私は、こう思いました。

「夢が叶ったな。」


……本当に、そう思っていました。


7thR~10th Act-1~Legend Girls!! 想いを込めるまで

6th以来、私のアイマス人生は『笑って!』とCleaskyを中心に動き始めました。
次第に心からミリオンライブが好きだと思えるようになり、続いて発表されたミリ7thは連番を見つけることができ、両日現地を握ることができました。

ようやくミリオンライブに真剣になれる。

そう、期待に胸を膨らませていました。

しかし、私のみならず世界中の人々を混乱に陥れる大事件が発生しました。
新型コロナウイルスの世界的な流行が始まったのです。
楽しみにしていたイベントは軒並み中止になりました。7thも例外ではありません。私も当時相当落胆していました。

7thの中止。
何も期待できなくなった。
いや、7thの中止は正直擦れる決定打ではなかった。
2019年末のゆくM@SくるM@Sで発表されていた、MR ST@GE ENCORE(の天海春香主演回)と、765単独ライブ。
私はそのいずれかで天海春香、もしくは春香役の中村繪里子さんが歌う『笑って!』を聞けるだろうと本気で踏んでいたし、信じていて、そして期待していた。
だからその両方が無くなってしまったときにこう思った。
「期待なんてするから裏切られたときにつらくなる。コロナ渦がいつまで続くかわからない中、『期待』なんてしたほうが負けだ」
こう思うことで、どんな機会が失われても、そのときの悲しみを抑えようとしていた。

だから、7thRが発表されてからライブ数日前くらいまでは、本当に「まあ中止になっても仕方ねえな位の気持ちでいるべ~」と思ってた。

たぶん、世界で一番綺麗なファンタジスタ・カーニバルだった ~ミリオンライブ7thRに寄せて~ | sonny-harukaのブログ (ameblo.jp)
※7thRの感想ブログです

そんな中でもいろんな方が「今できることをやろう」と奮起し、新しいことにチャレンジしていたことはよく覚えています。

時が経ち、7th Reburnの開催が発表されました。ここではCleaskyの2人が出演するDay2の現地を確保することができました。
長い充電期間を経てようやくたどり着いたミリオンライブ単独現場。未だに最も印象深いライブとして覚えています。
続く8th、9thライブも片方の日は現地参加が叶っていました。

いよいよ直近まで時間が戻ります。
満を持して始まったミリ10thツアー、そのAct-1は初めての両日現地参加が叶いました。
長らく歌われていなかった楽曲や伝説の再現等、好きなところを挙げたら枚挙に暇がありません。特に私はミリシタの時期からのPなので、それ以前の曲に焦点を当ててくれたAct-1は、正直生で見るのを半分諦めていた曲ばかりで、まるで夢を見ているようでした

「夢を見ているよう」と書いたのには理由があります。
Act-1は「ミリオンの1st~4thの『振り返り公演』」として扱われていました。もちろんその通りだったのですが、1st~4thは私が直接経験したライブではありません。したがって、私にとってAct-1の「振り返り」とは自分の記憶を掘り起こすものではなく、歴史の教科書に載っていたことが現実になるという超体験でした。
そのような体験をさせてくれた感謝を込めて、私はAct-1を夢のような公演だと思っているのです。

さて。Act-1直後の6月上旬、ミリシタにて『Legend Girls!!』のイベントが開催されました。私は春香担当ラウンジ「春香色のステージ」のラウマスをしており、春香が参加する『Legend Girls!!』はラウンジ総出で挑みました。結果としては個人TPR・ラウンジPLを獲得することができ、良い結果となりました(個人的には課題が多かったイベランですが……)。
しかし私にとっては、戦績と同じかそれ以上に大事な要素がありました。イベント上位報酬だった静香の存在、そして静香と春香が絡むイベントコミュです。

最上静香が普通の女の子になった日 ~Legend Girls!!イベントコミュ感想~|そにっぴー (note.com)

詳細は↑の記事に記載しています。要約するとこんな感じです。

静香は、「足枷を背負っている女の子」を次第に脱却し、Legend Girls!!のコミュでついに「アイドルが大好きな普通の女の子」になれたのではないでしょうか。
(中略)
実は似ているところがある春香と静香。決定的な違いもありましたが、春香の姿に影響を受けた静香は、”今”を楽しいと思えるように、そして他者に伝えられるようになりました

最上静香が普通の女の子になった日 ~Legend Girls!!イベントコミュ感想~|そにっぴー (note.com)
Legend Girls!! イベントコミュ第6話 今、立っている場所

私はこのイベントコミュに描かれた静香の姿に感銘を受け、今まででいちばん真剣に静香と向き合い、上記のブログを書き上げました。個人的にはそこそこ上手くまとめられたと思っていますが、静香有識者の目から見たら甘い部分も多々あると思います。何かあればお叱り下さい。

冒頭のほうで、私がミリシタを始めたばかりの頃は、一部のコンテンツについてゲームの序盤でいきなりエンディングを見せられたような感覚があるという話をしました。平たく言えば、どこか他人事だったわけです。特に当時気に入っていた静香と『SING MY SONG』についてはその感覚が強くありました。
しかし私もミリオンライブとそれなりに一緒の時を過ごし、このように静香の変化・成長を見届けることができました。

他人事が、いつのまにか自分事になっていました。

かつて「周りを見るに、静香はこういう子なんだろうなあ」と想像するしかできなかった私は、気づいたら「ああ、静香はこういう子なんだ」と自分が見てきたものを根拠に思えるようになっていたのです。
『Legend Girls!!』の歌詞を借りれば、「憧れが現実になる瞬間が今なんだ」ということなのでしょう。

余談ですが、先日最終巻が発売されたコミカライズBRAND NEW SONGにおける静香の描写(4巻)もすごく好きです。絶対ネタバレ抜きで触れてほしい演出なので読んでね。

雑感:Brand New Song6巻 ~だいすきということ~|そにっぴー (note.com)

このようにして、静香との距離を少し近づけられたかな? と思ったあたりで慌ただしい周年イベントがやってきて、少々バタバタしたまま……ついに運命のAct-2を迎えました。

10th Act-2 私の歌にしよう

ポートメッセなごやで開催されたAct-2も、幸運ながら両日現地参戦が叶いました。
まずは迎えた初日。ライブ自体は楽しいものでした……が、個人的に思い悩んでしまい、色々と考え事をしながらライブを見るというあまり健全ではない状態でした。

(↑ふせったーのことを第二のブログだと思っている人)

唐突ですが、どうも最近自分の能力以上に色んなものを抱え込んでしまったり、調子に乗ったりして失敗してしまうことがよくありました。そんな中迎えたAct-2、『シャクネツのパレード』や『スノウレター』といった大好きだけどLVでしか見たことが無い曲のパフォーマンスを目にして、急に5th~6thの頃を思い出してしまいました。

アイマスPになりたての頃。思いついたものをなんでも言えた頃。どんな役職も背負っていなかった頃。あの頃に帰りたい、今持っているもの全部投げ出したい、逃げ出したい……目の前の楽しいライブに反して、心がだんだん荒んでいきます。
しかし初日後半に駒形友梨さんが歌った『REACH THE SKY』に励まされ、なんとか「いやいや逃げてる場合じゃない」と思い直すことができました。歌の力ってすごいですね。

おかげで幾分かマシな気持ちで臨むことができたDay2。
初日に負けず劣らず素晴らしいセトリに熱狂し、あっという間にライブは最終盤に差し掛かります。
やがて優しいイントロと共にMachicoが登場し、『泣き空、のち』を歌い始めました。

と、ここである事実に気が付きます。

ソロ歌唱を残しているのは、田所あずささんだけ。
ソロ曲の選択肢は2つ。

『はなしらべ』『泣き空、のち』とバラードが続いている今、まさか強いロック調の『cross the future』で〆るとは思えない。

この次に来る曲が何なのか、察してしまいました。
頭が真っ白になりました。

ミリ6thで清算しきったと思った夢。
十分満足したと思った歌。

しかし私は、本当はもうちょっと高望みしてもよかったんです。

大好きな曲を、生の歌で聴きたいと。
最上静香役田所あずささん、ひとりのパフォーマンスをもう一度見たいと。

それは、忘れていた夢。
いや、自分自身ですら夢と認識していなかった夢。

時間を止められたなら…
なんて思っていたんだ
このまま、ずっとここにいたくて

ああ、お前、思えば『笑って!』よりも古い付き合いの曲じゃないか。
思えば、お前を好きだったときも、見向きもしなかったときも、傍にいてくれたよな。

鼓動の一つ一つが零れ落ちていくみたい
閉じ込められた砂の様に

涙が止まりませんでした。
ペンラを振ることもできず、胸の高鳴りが熱くて苦しくて、ぎゅっと胸の前でペンラを握りしめることしかできませんでした。

だけど時計を進めなければ
出会えない未来があったの
だから私は歌を歌うわ、夢…叶うまで

歌は進んで行きます。
だんだんとボルテージが高まっていくBメロから、何かを解放するかのようなサビへと駆け上がっていきます。

たった1フレーズを、1小節、1音を
輝かすために刻み込むの
想いを込めて、私の全てを

声が会場全体を綺麗に震わせていました。音の正体が波である、という事の意味を身体で理解していました。

昨日が終わらなければ、ここに立っていなかった
心を置き去りたくないよ

そして歌っている田所あずささんの顔は、笑顔でした。
この歌を歌えて嬉しい、この歌のメッセージを届けたいと言わんばかりの、優しい笑顔で歌っていました。
5th、あのときは苦しい気持ちで歌っていたのかもしれません。
その先の未来に、こんな笑顔が待っているなんて!

音は流れる、言葉を乗せて
歌声は遠くまで届く

やがて2番サビが近づいてきます。
あのとき、恋焦がれていたのに聞けなかった歌詞。
私は祈るように、手に痛いほど力を込めました。

だから私は、歌を歌って

お願い、お願いだ……
あなたの口から、そのフレーズを聞かせてくれ……

夢…掴まえよう

俺の夢を、叶えてくれ!!!!!




たった1フレーズも、変えていくわ
百万の輝きへ、眩しい星の様な
想いを込めて…響かせたいから





余計な力が抜けました。
田所あずささんは、完璧でした。
美しくも力強い声、優しい笑顔、伸びやかなパフォーマンス。
私はもう、何も心配しなくていいのです。
気づけば涙は止まり、自然な気持ちで歌を聴くことができました。

願う明日がある、見てみたい景色がある
この気持ち、それを…私が歌う

私の歌にしよう

『SING MY SONG』は、今この瞬間、私のとって初めて「私の歌」になりました。ミリオンライブと何年も連れ添い、静香のことを少しずつ理解できるようになり、静香の成長を見届けてきた今……『SING MY SONG』は、真の意味で「私の歌」になったと言えるでしょう。

たった1フレーズの、1小節、1音の
かけがえない時に刻み込むわ

ああ、ありがとう。本当に。

想いを込めた、私の全てを――

この曲に、今までの私の全てが詰まっていました。
会場を、心を震わせた声が、耳から少しずつ抜けていきました。
もう一度だけ、肩を震わせて泣きました。

たった1フレーズじゃ収まらないあとがき

なぜ私がAct-2の『SING MY SONG』であんなにも感動したのか、それを伝えたくて1万文字ほど費やしてしまいました。
別に『SING MY SONG』の宣伝にもなっていなければ、最上静香のダイマにもなっていません。『Catch my dream』や『Precious Grain』の話も全くできていません。ごめんなさい。
でも、この溢れそうな思いを物語として書き記したかったんです。
私自身が思いもよらなかった、私のここ数年の人生が詰まっていたライブでした。
初日で色々と思い悩んだと書きましたが、『SING MY SONG』でこんなに感動できるならまだ大丈夫だな、と思えました。今私がすべきことは、全部を投げ捨てて新米の頃に逃げることではありません。初心を思い出し、夢を忘れず、次の夢を追いかけることです

失敗しちゃうこともあるかもしれませんが、これからも既にチャレンジしていることを投げ出さず、新しいチャレンジも忘れずに楽しいアイマスライフを送ります。

少し疲れちゃうこともあると思います。
それでも、その度に担当の春香やエレナから元気をもらったり、担当ではないけど大好きな静香の姿から勇気を貰ったりして、一歩ずつ一歩ずつ未来に進んで行こうと思います。

ありがとう、田所あずささん。
ありがとう、静香。