3. 解き放たれた・・ Skyliner ('62)
こんにちは。
おやじの左手(略してFLH)です。
趣味のひとつとして、1960年代の国産手巻き実用腕時計を集めてはこつこつと修理をしています。
記事の趣旨は、「自己紹介」をお読みください。
フォローもいただき、とても嬉しく思います。
引き続き、よろしくお願いします。
① SEIKO Skyliner
型番:14092 Cal:402 21石 5振動(毎時18,000振動)
ケース径:36.5mm(リューズ含まず) ラグ幅:19mm
1962年4月製造(S/Nより推測)
スカイライナーは高級腕時計ライナーの廉価版、若いビジネスマンをターゲットにして販売された腕時計です。
廉価版と言え、構造はライナーとほとんど変わらず、その薄さで人気を集めました。
1961年発表、63年にカレンダ機能追加含め4度ほどのモデルチェンジを経て1972年に生産終了。
セイコー最後の手巻き式腕時計でした。
自分、そのうちのCal 62系を結構いじっているのですが、この時計はその前のCal 402になります。
② 正面
手に入れた時、風防に割れは無いのですが、中心近辺に細く細かいシワのようなヒビが広がっていました。
プラスチックの経年劣化によるようで、浅いヒビならサンドペーパーの中目から超極細目を順を追ってかけ、ペースト研磨剤で仕上げれば、ある程度復旧しますが、深いヒビでこれをするとプラスチックが相当に薄くなり強度面から交換したいところです。
本品の風防はサンドペーパー他研磨品です。
文字盤は、汚れ取りをして実装。
このSKYLINERの上下に線が延びたロゴがカッコいいです、62系以降の筆記体のロゴよりレトロです。
この当時の文字盤には星のようなマークがあって、そのマークで文字盤の焼き付けや材質がわかりました。
この辺の話は、別の機会にしたいと思います。
③ 左右側面
自分の持っているスカイライナーのケースたち、キズはありますが、不思議とどの年代もほとんど腐食は見られません。
実用時計とは言え、スポーツマンの格上であり、ステンレスも汗、水、塩に強い素材を使っているように思います。
洗浄、研磨して完了です。
実測、薄さ9.1mm、重量36g(革ベルト含む)、薄くて軽いです。
④ 背面
擦れてタツノオトシゴがだいぶ薄くなっています、長く愛用されていた証です。
⑤ ムーブメント
これ、仕入れた時から、テンプの振り幅含め動作に問題は無いようでしたが、なんとなく秒が早いような。
緩急針を調整すれば何とかなるかと、分解を開始。
ピンセットでつまんだある部品(ツヅミ車)を何気に置いたら、コロコロと転がり他の部品にピタリ。
なんか動きが不自然だったような・・
次にある部品(オシドリ)を抜くと他の部品(カンヌキ、キチ車など)がぞろぞろくっついて来る。
あっ、あれだ。
部品を方位磁石に近づけると、指針が30度くらい振れました。
分解前の消磁を忘れていました、気づかずそのまま組み上げ調整に入るとドツボにハマります(笑)。
組み上げる前にすべての部品を消磁器にかけ、組んだ後も消磁を確認、完成後の調整は不要になりました。
⑥ 呪縛からの解放
磁気帯び時計とそう出会うことはないのですが、出会ったとき、何処で磁気をもらうんだろうといつも思います。
市場に出る前の保管場所が一番怪しいですが、もしかしたら当時の持ち主さんからかも。
60年近く前、今のようにPCやスマホなどたくさんの電子機器に囲まれることは無いですが、当時のテレビや冷蔵庫、ステレオなどは磁石の塊。
その磁力、半端なかったでしょうね、テレビやスピーカの上なんかに置いたら一発アウトじゃないでしょうか。
当時の設計思想に耐磁という観念があったのか?
→ネットでミルガウスの歴史を調べたら1956年に発表と書いてある。
国産時計メーカーがどこまで開発を進めていたか?
→進めてたとしても、まだ実用時計に展開はされてはいないかと。
当時のおやじさんたちは知ってたか?
→テレビの上に置いちゃいかんくらいは知ってたのでは。
けど、酒飲んで当時でいう午前様なんかなった日にゃ、四畳半のテレビの上に置いちゃいますわな(笑)。
さて、このスカイライナー
酒気帯びおやじの振る舞いで磁気帯びの呪文を浴びたとしたら、約60年ぶりにその呪縛から解き放されたわけですね(笑)。
呪文が解けた時の気持ちを聞いてみたいものです。
「いやぁ、針が軽くなったよ!」 とでも、答えるんでしょうか(笑)。
*****
記事にする時計たち、これからも左手で活躍して欲しく、骨董市やマルシェで出品しようと思っています。
出店など決まりましたら、この場を持って案内をいたします。
そのときは、お声がけなどいただけるとうれしいです。
「バースディウォッチ」という言葉をご存じですか?
お生まれ年に作られた時計を時計好き界隈で「バースディウォッチ」と呼んでいます。
自分が過ごした歳月を感じられる腕時計と、ともに過ごすなんて素敵かも。
1965年(昭和40年)生まれの私、懸命に針を動かしている同世代の腕時計たちにいつも励まされています(笑)。
⑦ 1962年(S37)の出来事、流行(ネットより抜粋)
・東京の人口が1000万人突破、世界発の1000万人都市に
・後楽園ホールがオープン
・マリリンモンロー謎の死
・小田急百貨店新宿店開店
・流行歌
いつでも夢を(橋幸夫、吉永小百合)、遠くへ行きたい(ジェリー藤尾)
・映画
キングコング対ゴジラ、青い山脈、史上最大の作戦
・ヒット商品
リポビタンA、バファリン、明星ラーメン、きゅうりのキューちゃん、
リプトンティーパック
・おおよその大学卒初任給 14,200円
・物価
映画:200円、ラーメン50円、週刊誌:40円、牛乳:15円、かけそば:40円
FLH
(011)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?