6. ポチャリ事件・・ Sportsman('69)
こんにちは。
おやじの左手(略してFLH)です。
趣味のひとつとして、1960年代の国産手巻き実用腕時計を集めてはこつこつと修理をしています。
記事の趣旨は、「自己紹介」をお読みいただければと思います。
今週の天気は、ぐずつき模様でしたが、少しテレワークをやめて、
駅からバスに乗らず、Podcastを聞きながら歩いて会社に行ってました。
いい気分転換ができました。
① SEIKO Sportsman
型番:6602-9982 Cal:6602B 17石 5振動(毎時18,000振動)
ケース径:36mm(リューズ含まず) ラグ幅:19mm
1969年9月製造(S/Nより推測)
スポーツマンは1960年に発売開始。
17石は、3回ほどCalが変わりますが、開発当初の設計がよくできていたのか、基本的に構造は変わりませんでした。
② 正面
スポーツマン17のカレンダ付きなのですが、「17」のロゴも「calendar」のロゴもありません。
12時下には、「SEIKO」のロゴだけ。
1967年くらい、型番が6602-9982になってから、カレンダ付きでも「Sportsman」で名前が統合されたようです。
1970年が近づき、時代がシンプルさを求め始めて来たのだと思います。
③ 左右側面
スポーツマンのこの型番9982のケース、型番9981含め、ステンレスの腐食が非常に多いです。
エッジのメッキ剥げも多く、綺麗なケースは、なかなか手に入りません。
だれもが、相当過酷な環境で使っていた、裏返すとそれだけ信頼されていた腕時計だったかと。
ですが、このスポーツマンは、細かい打痕はありますが、とても綺麗です。
その理由は、後ほど。
④ 背面
型番9982になってから、タツノオトシゴが無くなり、シンプルな「SEIKO」ロゴの刻印になりました。
なんか、残念です。
特筆すべきことに、
ラグ裏のメッキがちょっと凹んでるだけで、綺麗に残っています。
この時代のスポーツマンでは珍しく持ち主さん、メタルベルトから革ベルトに変えて使っていたようです。
これも、綺麗さのポイントを上げています。
⑤ ムーブメント
この時計、入手時、見た目の汚さから、何も期待せず、治すつもりもありませんでした。
案の定、状態は不動かつ、リューズも固着して回りません。
ケースもひどい泥のような土汚れまみれでラグやベゼル、風防の隙間も土がびっしり。
ただ、軽く汚れを落としてみると、全体的にキズもメッキ剥げも少なく、けっこう綺麗だったんですね。
これ、こんな状態の時計でも、”にんまり”です。
汚れがつまっている裏蓋をバリバリとこじ開けると、予想通り、サビサビのムーブメント。
はい、間違いなく水没しています。
リューズが回るはずもなく、テンプもゼンマイも歯車も完全固着。
強引にネジを回せば、ネジは切れるわ、錆カスが出るわ、文字盤も変なシミだらけ。
はい、ムーブメント、文字盤、全て交換です。
風防に割れもキズもなく、汚れを取って磨いたら透明を取り戻し。
ケースを丁寧に洗浄研磨し、予備のOH済のCal6602と、型番9982の文字盤を装着。
そうとうに状態が良い代物になりました!
⑥ ポチャリ事件
さて、いつもの勝手な持ち主考察です。
持ち主のおやじさん、買って早いうちに泥水に落としましたねえ。
落とした場所は、池?、川?、沼?
加えて、時代背景。
このスポーツマンは、1969年製。
昭和40年代中盤、1970年あたりから、空前の釣りブームが始まります。
好景気から、お金と時間にわずかの余裕ができたサラリーマンたちが、こぞって釣りをし始めます。
Wikiを見ると、”釣りキチ三平”は、1973年から連載開始。
”釣り”だな(笑)。
泥水から察するに、海釣りでは無いな。
池?、川?、沼?、泥、土・・ 狙う魚は、ヘラブナだな。
事件現場は、関東なら当時のヘラのメッカ、千葉の成田・佐倉方面だ!(ホントかい!?)
まてよ、釣り堀という線もある。
ブームに乗って釣りに出かけて、釣っている最中に左手のスポーツマンが気になった。
やっぱ、買ったばかりだし、濡らしたく無いなと、時計を外したところで、魚がヒット!
慌てふためく、おやじさん。
運悪く、持つ手を離したら落ちる革ベルト(笑)、スルリと抜けてポチャリ。(ホントかい!?)
その程度で、慌てふためいたということは、
このおやじさん、釣りを始めたばかりだな、道具一式買い込んでいる姿が目に浮かぶ。(ホントかい!?)
悲しかったろうなあ、おやじさん、(涙)。
この”ポチャリ事件”のショックから、釣りを辞めてしまったかもしれん(笑)。
汚れやサビ具合から、すぐには拾われていないような気もする。
さあ!ご主人のために針を回すぞ! と思ってた矢先に泥の中。
あの”ポチャリ事件”から長い年月が経ち、ひょんなことで偶然に拾われた。(ホントかい!?)
悲しかったろうなあ、おまえも、(涙)。
悲しいお二方には申し訳ないのですが、このスポーツマンを見るたび自分は、”にんまり”します(笑)。
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記事にする時計たち、これからも左手で活躍して欲しく、骨董市やマルシェで出品しようと思っています。
出店など決まりましたら、この場を持って案内をいたします。
そのときは、お声がけなどいただけるとうれしいです。
「バースディウォッチ」という言葉をご存じですか?
お生まれ年に作られた時計を時計好き界隈で「バースディウォッチ」と呼んでいます。
自分が過ごした歳月を感じられる腕時計と、ともに過ごすなんて素敵かも。
1965年(昭和40年)生まれの私、懸命に針を動かしている同世代の腕時計たちにいつも励まされています(笑)。
⑦ 1969年(S44)の出来事、流行(ネットより抜粋)
・東名高速全線開通
・サザエさん放送開始
・アポロ11号、人類初の月面着陸
・日産「フェアレディZ」発売
・地下鉄千代田線開通
・流行歌
長崎は今日も雨だった(内山田洋とクールファイブ)、黒猫のタンゴ(皆川おさむ)
・映画
ウェストサイド物語、明日に向かって撃て、イージーライダー、男はつらいよ
・芸能
8時だヨ全員集合放送開始、タイガーマスク、ムーミン放送開始
・ヒット商品
UCC缶コーヒー、プッシュホン、パンタロンブーム
・おおよその大学卒初任給 27,906円
・物価
映画:600円、ラーメン:90円、週刊誌:70円、牛乳:23円、かけそば:80円
FLH