5. 浮かび上がる人物・・ Homer date(’64)
こんにちは。
おやじの左手(略してFLH)です。
趣味のひとつとして、1960年代の国産手巻き実用腕時計を集めてはこつこつと修理をしています。
記事の趣旨は、「自己紹介」をお読みいただければと思います。
GWに革ジャン他、冬物を整理したのですが、
はやくも半袖を着る日が増えてきました。
今年も酷暑なんでしょうね、今から覚悟しています。
① CITIZEN Homer date
型番:HD140131 17石 5振動(毎時18,000振動)
ケース径:37mm(リューズ含まず) ラグ幅:18mm
1964年6月製造(S/Nより推測)
ホーマーといえば鉄道時計が有名ですよね。
自分、鉄道時計は集めていないのですが、鉄道時計は、まさに実用腕時計の鏡かと。
雨、雪、汗ほか、どのような環境にも耐え、かつ正確に時を刻まなければならない宿命。
鉄道マンの頼れる相棒であったことは間違いなかったと思います。
② 正面
風防はデッドストック品と交換、文字盤も綺麗です。
ロレックスを意識したんでしょうね、フルーテッドベゼルが光っています。
入手時、見た目と動きに気になる点がありました。
日付窓から見える、ほとんどの日付が汚れていました。
日車は、回転するパーツゆえ、文字盤の裏側との擦れによる汚れです。
今までの経験上、文字盤の裏側は少しの湿気で錆や汚れを帯びるようです。
小さい窓から見えるだけの数字ですが、やはり、気になりますね。
加えて、リューズを引き、時刻合わせの確認をしたところ、
本来なら、22時くらいから日付が動き始め、0時近辺でカシャ!と日付が変わるのですが、
0時過ぎても日付がもっさり、3時くらいまでゆっくり動きカシャっとは変わりませんでした。
・日付が汚い。
・日付がもっさり動く。
事前確認で、ふたつの問題点がありました。
部品洗浄と合わせて、原因調査です。
③ 左右側面
極端なボックスタイプの風防、レトロ感満載です。
ケースにキズも腐食もあまり無く、メッキも綺麗です。
大事に使っていたんだな、と思います。
④ 背面
刻印がそうとうに擦り減ってますね、長く愛用されていた証です。
裏蓋を外しても土汚れは無く、持ち主さん内勤の方だったのかな?。
ケースより、裏蓋の方が細かいキズが多く、仕事中は外していたんじゃなかろうか。
この1401のケースが、65年になるとベストセラー型番HODS1401になります。
⑤ ムーブメント
さて、汚れともっさりの原因調査。
文字盤を外してムーブメントの文字盤側(日ノ裏側)の水平を見ますと、日車を押さえる板(日車押さえ)が若干浮いていました、これが原因かと。
このような場合、安易に日車押さえを外すと日車を制御しているバネが飛んでお終いです。
慎重に、慎重に。
外した後、浮いていた場所を見ると、リューズ周りを押さえる板(裏押さえ)の固定ネジが緩んでました。
緩んで背が高くなったネジが、日車を持ち上げてたことで、
・文字盤の裏面と日車の接触が増え日車が汚れた。
・その摩擦によりバネ制御が弱くなり、もっさりと日付が変わった。
問題点の、点と点が、線になりました。
裏押さえという部品、細いバーが伸びておりまして、そのバーをオシドリという部品の突起にひっかけリューズの引きをロックしています。
サンプル画像の赤丸部分に少しだけそのバーが見えます。
リューズを引くと「カチッ」とするは、このひっかけた部分が変わるためです。
このバーが、ホントよく折れてるんですね、古い時計の不具合の上位に入る部品です。
推測ですが、
この裏押さえのバーが折れ、修理交換時のネジの締めつけが緩かったんじゃなかろうか。
裏蓋に修理やオーバホールなどの記録印字はありませんでした。
持ち主のおやじさんがしたのかな?
だとしたら、おやじさん、故障原因がわかってから、ちょっと、気が緩みましたね(笑)。
部品洗浄後、浮きが出ないようしっかりと組み直し、汚れた日車を予備と交換して完成です。
⑥ 浮かんだ人物
このような問題があっても、時計としては、
・NG部分と時間の刻みは関係ないので、時間確認なら問題ありません。
・日付がもっさり動いても数時間経てば替わるので、寝ててりゃ気づきません。
うむ、今に至った線と線が、面になりました(笑)。
ということは、この持ち主のおやじさん。
・あまり夜更かししないお方。
・実用腕時計の歴史から見ると、カレンダ機能付きは1963年あたりからの発売で新機能。
日付合わせのときに?と思っても、こんなもんかな? と流していたのかも。
と、見た。
おぉ!
持ち主さんの面と面が、昭和の時代を生きた人物像を見事に浮かび上がらせました!(笑)
ん?
なんとなく、自分、その人物像に似ているぞ。
眠くなるのが早く、寝るのも早いし、
スマホの新機能についていけるはずもなく、ふーんと流しているし(笑)。
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記事にする時計たち、これからも左手で活躍して欲しく、骨董市やマルシェで出品しようと思っています。
出店など決まりましたら、この場を持って案内をいたします。
そのときは、お声がけなどいただけるとうれしいです。
「バースディウォッチ」という言葉をご存じですか?
お生まれ年に作られた時計を時計好き界隈で「バースディウォッチ」と呼んでいます。
自分が過ごした歳月を感じられる腕時計と、ともに過ごすなんて素敵かも。
1965年(昭和40年)生まれの私、懸命に針を動かしている同世代の腕時計たちにいつも励まされています(笑)。
⑦ 1964年(S39)の出来事、流行(ネットより抜粋)
・東京オリンピック開催(日本の金メダル16個)
・東海道新幹線開通(ひかり:東京→大阪 4h 2,480円)
・日本武道館開館
・流行歌
明日があるさ、幸せなら手をたたこう(坂本九)、愛と死をみつめて(香山和子)
・映画
マイフェアレディ、007ゴールドフィンガー、クレオパトラ
・芸能
オバケのQ太郎連載開始、ひょっこりひょうたん島放送開始、子供電話相談室放送開始
・ヒット商品
カッパエビセン、ワンカップ大関、みゆき族、アイビーブーム
・おおよその大学卒初任給 17,100円
・物価
映画:300円、ラーメン:60円、週刊誌:50円、牛乳:18円、かけそば:50円
FLH