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【中編小説】兄弟と遊弋書庫 梗概

 本記事には結末部分を含むネタバレがあります。ご了承ください。


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 草原の王子ダームダルクは、押しかけ弟子として南の島のツァフ博士のもとへ行った。
 期待に反して、博士は秘密主義で人殺しもする魔法使いであった。博士はダームダルクを軟禁して、片手間に発明した滑空機械の実験台という役割を押しつける。対するダームダルクは、博士の魔法を盗んで脱出する機会を伺いつつ、実験台の身分に甘んじていた。
 博士が人形をして小作人の子どもをためらいなく殺させたある日、とうとうダームダルクは滑空機械で島から脱出した。博士の使い魔である黒猫ハトラが協力者になった。使い魔でさえ、博士に愛想を尽かしていたからだ。ところが、突風が滑空機械を半壊させた。

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 ダームダルクが不時着したのは、巨大な箱船だった。不時着するなり箱船を襲う海賊と戦い、誰にも気づかれることなく、箱船勝利の立役者となる。ところが、戦いのなかで、ダームダルクは修理するつもりだった滑空機械を紛失してしまう。
 機械をさがして船内を探索するうちに、乗組員が人外のものばかりだと気づく。彼らの目を盗んですすみ、ようやくあえた同じ人間は、弟のバーキャルク。王位を求めて対立するライバルだ。
 弟は船についての情報を教えることで、自分の命をあがなった。奇しくも弟がツァフ博士のパトロンであるということから、ダームダルクもまた、自分の命をあがなう。味方の味方は味方という理屈だ。

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 脱出手段たる滑空機械を見つけられないダームダルクは船長と接触する。機械のことは秘密にしたまま、箱船を海賊から救った礼として陸にかえしてもらうつもりだったのだが、目論見は外れた。船長もまた秘密主義者であり、船長は船の秘密を守るためダームダルクを軟禁した。
 そんなダームダルクのことは全く知らずに、ツァフ博士が動きはじめていた。動く城壁を海に押し出して、箱船を鹵獲するという計画だ。ダームダルクと乗組員たちが海図にない島に気づいたときには手遅れ。島は円状の壁に変形して、船を捕らえた。

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 ここにきてようやく、ダームダルクは滑空機械の存在を船長に明かす。するとダームダルクは、乗組員である庭師が、滑空機械を独断で回収して修理していたことを知る。ダームダルクは新しくなった滑空機械で、城壁に討ち入りをかける。
 城壁内部では、事故によって博士がこときれていた。あとに残されたのは、ダームダルクと博士の小作人たちだけだ。博士の死をきっかけに崩れていく城壁から、一同は脱出を試みるが、自由になるあてがない。
 窮地を救ったのは、弟のバーキャルクだった。小作人たちのおかげで兄弟の争いも回避される。箱船から奪った小型船を駆る弟は、小作人たちを自由にすると約束して身柄を引き受けて去った。ダームダルクもまた、箱船に別れを告げ、滑空機械で飛び立った。
 別れ際に弟から渡された宝は偽物だったと、気づいたときには遅かった。

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