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外套と酒場の小説を読んだ【読書感想文】
「赤いマント」という短編小説が剣と魔法らしくて大満足で、かつフリッツ・ライバーらしさもあって、大大満足だった。
唐突にライバーを出したことへの弁解は後ほどするとして、書誌情報は以下の通り。
エレン・カシュナー(井辻朱美訳)「赤いマント」(『剣の輪舞〈増補版〉』2008、早川書房に収録)
分量
約7900字
40文字*18行*11頁
短編ファンタジーの中でも短めなほうだろう。
あらすじ
剣の腕はからきしなのに挑発癖のあるアレクと、彼のそんな欠点すら好んでいる剣客リチャード・セント・ヴァイヤーは、ある雨の晩に酒を飲むべくマーサ亭を訪れた。
アレクが常連客を挑発し、セント・ヴァイヤーを困らせているところへ、黒衣と黄金と血の色のマントを身につけた見知らぬ男が入ってくる。アレクはその男をすら挑発するのだった。
「赤いマント」と著者の他作品との関係
「赤いマント」は著者エレン・カシュナーのデビュー作だ。「赤いマント」と他の作品について、著者は以下のように述べている。
「赤いマント」やその他書きかけの断片のスタイルをいじいじと踏襲しようとしたために、何度も挫折しかけたが……最後に完全な方向転換をして、いま読者の手にあるような形(引注:おそらく長編「剣の輪舞」のこと)にまとまった。
(『剣の輪舞〈増補版〉』2008、早川書房、p464)
つまり、『剣の輪舞〈増補版〉』に収録されているほかの三作と「赤いマント」はスタイルが異なる。
「完全な方向転換」をしたと述べている著者が方向転換する前の作品について、あれこれ書くのも気がひけるのだけれども…。
剣と魔法として読む
早い話が、「赤いマント」は剣と魔法として読めて、本記事の筆者のツボをバッチリおしてくれるのだ。たとえば、酒場にやってきた見知らぬ男、という要素はライバー「凄涼の岸」(『死神と二剣士』収録)と共通する。
もちろん、見知らぬ男がやってくる前と後には独自性がある。本記事の筆者が気に入ったのは、猫を引き合いにだしつつ、セント・ヴァイヤーとアレクを紹介する箇所だ(p498)。
剣と魔法として読む話に戻る。著者のホームページを読むことで、剣と魔法ものとして読めることにも納得がいく。
I was reading a lot Fritz Leiber’s “Lankhmar” stories then, some Sherlock Holmes, and had just discovered the Regency of Georgette Heyer, Dorothy Dunnett’s Lymond books, and raunchy Blue Boy Magazine…
強調は本記事の筆者による
著者は、2015年のインタビューでも、ほかの作品や、美術、音楽について触れつつ、ファファードアンドグレイマウザーに言及している。
ということを踏まえると「赤いマント」に「凄涼の岸」の面影を見て取るのは無理筋でもなさそうだ。
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