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スター・ウォーズ ゲーム研究本を出すために 第13回 『スター・ウォーズ』のクライムアクションアドベンチャーゲーム『スター・ウォーズ 無法者たち』

【執筆者:畑史進 (ハタフミノブ)】

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Instagram:https://www.instagram.com/fuminobu_hata/

■『スター・ウォーズ 無法者たち』 2024年8月26日

『スター・ウォーズ 無法者たち』(Star Wars Outlaws )は『ディビジョン』シリーズを手掛けてきたマッシヴエンタテインメントが制作、Ubisoftから販売されるクライムアクションアドベンチャーゲーム。

タイトルよりも長いジャンル名の長さに面食らってしまうが、本当にこれなんだから仕方がない。

クライム→犯罪

アクション→活気、行動

アドベンチャー→冒険

『スター・ウォーズ』の世界を舞台にこれらが詰まったゲームなんだよ。

まだこのコラムも始まって12回で中々新しい書き下ろしができていないが、広くスター・ウォーズゲームを振り返ってみると、アドベンチャーゲームは多くあれど犯罪行為を主軸においたようなゲームは無い。

その前このゲームの概要をざっくりと。

舞台は『エピソード5/帝国の逆襲』と『エピソード6/ジェダイの帰還』の間で、コルサントとかの中心部ではなくタトゥイーンといった銀河外縁部あたり。ここからも分かるようにダース・ベイダーやルーク・スカイウォーカー、レイアや皇帝といった遥か彼方の遠い銀河のヒエラルキーの高い、高貴な人たちの物語ではない。メインストーリーの影の物語だ。

主人公は『エピソード8/最後のジェダイ』に登場した銀河外縁部の惑星カント・バイト出身の女性ケイ・ヴェス。カント・バイトはカジノが盛んで銀河中の富豪が娯楽のために訪れる。そんな場所なので経済格差も大きく、お世辞にもケイの育った環境は良くなかった。そんな彼女は生きる術として母親から犯罪の手ほどきを受けて育った。

ある日、彼女は依頼された仕事で反乱軍のトラブルに巻き込まれてカント・バイトを脱出せざるを得なくなる。この時、カント・バイトを根城にする犯罪組織「ゼレク・ベシュ」のリーダー、スリロの船を強奪して脱出する。これがキッカケでケイはスリロの手先に追われながら銀河の裏社会を牛耳る犯罪シンジケートの仕事を請け負い、銀河で名高いワルになるために奮闘することになる。

プレイヤーは4つのシンジケートと渡り合ってケイを銀河一のやり手ワルにするのがこのゲームの目的。

シンジケートは「アシェガ・クラン」「パイク・シンジケート」「クリムゾン・ドーン」「ハット・カルテル」。

「アシェガ・クラン」はこのゲームで初登場のシンジケートで、『エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』で登場した惑星キジーミを根城にするシンジケート。惑星キジーミはポー・ダメロンが元カノを頼って訪れた極寒の惑星と言えば思い出すだろう。

「パイク・シンジケート」はアニメ『クローン・ウォーズ』シリーズを見ている人ならおなじみ(?)の犯罪組織。スパイスというあの世界の麻薬を取り仕切っている奴らだと思えばいい。

「ハット・カルテル」はおなじみジャバ・ザ・ハットらの種族、ハット族が仕切っている犯罪組織。『クローン・ウォーズ』ではジャバの他にもズィロとか色んなナメクジたちが出てきたが、実はジャバはこの中で大きな勢力というだけであって、ジャバの上には「ママ」と言われる一族の総大将がいたという衝撃の事実が明らかになった。ちなみにめちゃくちゃデカい。どうやらあの一族は年を重ねるにつれてデカくなるみたいだ。余談だが、最も力を持っていたジャバが『エピソード6』でレイアに殺されてしまってからハット族の勢力は落ちていったということらしい。

そして最後の「クリムゾン・ドーン」が個人的には思い入れ深い。これはかの大人気ヴィラン、ダース・モールが興したシンジケートで、元々はダソミアの魔女、マザー・タルジンの命令で「シャドウ・コレクティヴ」というシンジケートだった。

ここからかなり長くなるが、『クローン・ウォーズ』のエピソードをちょろっと。

ダークサイドのフォースを使えるモールが頭領ということもあってか、シャドウ・コレクティヴの勢いは急速に拡大してマンダロリアンの一集団のデス・ウォッチとともに惑星マンダロアを掌握するまで巨大化していた。

そんな矢先にかつての師匠であったダース・シディアスが惑星マンダロアに訪れて、モールと再開するがシディアスはモールを捕らえる。

その後、デス・ウォッチの助けもあって脱出後に故郷の惑星ダソミアでシディアス、ドゥークー伯爵、グリーヴァス将軍が勢揃いし、「ダース・モール&マザー・タルジンVSシディアス、ドゥークー、グリーヴァス」という「魔術VSダークサイドのフォース」という闇の頂上決戦が行われる。結果はマザー・タルジンの敗北でダース・モールは命からがら惑星マンダロアに落ちのびて身を隠すことになる。その後の惑星ダソミアは大量のドロイド軍を送りこまれた総攻撃によって民族ごと壊滅。ダース・モールの築いたシャドウ・コレクティヴもほぼ崩壊してしまう。大分端折ったがこのあたりの流れは本来アニメ『クローン・ウォーズ』で描かれる予定だったが、コミック『スター・ウォーズ:ダース・モール ダソミアの息子』に描かれているので興味のある人は読んでほしい。ちなみにこのあたりの背景を知っていないとEAの『ジェダイ:サバイバー』や『ジェダイ:フォールンオーダー』もわからないので知るためには必読書。

長くなったが、「クリムゾン・ドーン」はこの「シャドウ・コレクティヴ」の流れを引くシンジケートなのだ。そんなクリムゾン・ドーンが公に登場したのは映画『ハン・ソロ』。この映画ではドライデン・ヴォスがボスとして振る舞っていたが、ドライデンがハン・ソロの元恋人キーラによって殺害され、その後の通信によってこのシンジケートを裏で操っていた真の主導者がダース・モールであることが判明。

その後はアニメ『反乱者たち』でクリムゾン・ドーンは出てくること無く、ダース・モールはタトゥイーンで隠遁生活を送っているオビ=ワンに殺されてその生涯に幕を下ろした。

ここでクリムゾン・ドーンのツートップは死亡してる。では誰がクリムゾン・ドーンを率いているのか?

他でもない、ハン・ソロの元恋人、キーラなのだ!

PVでは顔が実写と違っていて確認できなかったが、この作品ではキーラが登場してちゃんとクリムゾン・ドーンを運営しているのが分かる。台詞の端々からもクリムゾン・ドーンは暗躍に徹して裏切りをほのめかしているのでそこにダース・モールの意思があると感じられる。

映画ではエミリア・クラークが演じていたが、海外情報では演じていないということなので似た声質の声優を引っ張ってきたのだろう。今回のゲームを遊んでいてもキーラは映画『ハン・ソロ』で起きたことを想起させるセリフを発していたりと、このゲームでようやくあの映画が本格的に救済されている感じがあって良かったと思う。

だいぶ話が込み入って長くなったが、プレイヤーはケイを操作してこの4つのシンジケートの好評を得ながら裏社会でのし上がっていく。ゲームには実際に4つのシンジケートの評価がメーターで表されており、この評価がゲームを攻略するうえで鍵となってくる。

メインストーリーからサブのミッションまでシンジケートと関わることが多く、仕事をすることでこの評価は変動していく。

他にも会話パートで選択肢がでてくるのだが、この選択次第によってシンジケートの評価が変動する。叶うなら八方美人でどのシンジケートとも良好な関係を築いていきたいがかなり難しい。

パスワードアンロックミッションもある

仕事の殆どは敵対するシンジケートから物を盗んだり、時には帝国軍基地で重要な資材を取ってくるというもの。これらは『メタルギアソリッド』のようなステルスアクションが要求され、敵兵に気づかれないようにステージを侵攻していくことになる。

『アサシンクリード』シリーズのUbisoftなのでステルスキルも用意されている。ただ、ステルスキルは積極的に行うようなものではない。というのも何度もトライアンドエラーを繰り返して感じたのだが、ステルスキルは他の敵ユニットに見つかることが多く、必要かつ確実に見られないようなシチュエーションでないと逆に不利になることが多い。

必要最低限のステルスキルで済ませて敵の目をかいくぐってステージを侵攻していくのがこのゲームのステルスアクションとなる(というか、ビッグボスみたいに麻酔銃で眠らせまくるのがおかしいんだよ。いいんだけどね)。

ステルス一辺倒のステージ侵攻かと思うかもしれないが、スターウォーズファンなら察しがつくだろう。んなワケがない!

『エピソード4/新たなる希望』でデス・スターのステルスミッション中にハン・ソロは何をしたか?途中からブラスターをぶっ放して力技で突破したでしょう?

それと同じようにあるタイミングからは帝国軍やシンジケートとドンパチをする。これほどスター・ウォーズイズムが反映されているバカなゲームが遊びたかったんだよ。ブラスターメインのゲームならこうでなくちゃ!


ときには耳をすませて情報をゲットするといったことも

ケイには相棒のクリーチャー「ニックス」がいるのだがこいつとの連携プレイも中々に楽しい。先程ステルスアクションでは音を出して気を引かせたり、時には攻撃してステルスキルの助けをしたり、遠くのスイッチを押してステージの侵攻を助けたりと色々な役割をこなしてくれる。正直最初は「なんだコレ?」となったものだが、プレイヤーにとって有益なことが多い上に仕草が愛らしく段々可愛いと思えてきた。

いわゆるMGSVの双眼鏡

この手のゲームではフィールド移動、探索が楽しみの一つになって来るわけだが、ミッション中のフィールド移動はここ近年のトレンドである「掴まれるところを探す」というフィールド探索・観察要素が入っている。これは「移動できますよってペイントをペタペタ塗られたり、自己主張が出ていたりするのは興をそがれる!」という声から来ているのだけど、正直僕としては勘弁してほしい要素。愚痴だが『ジェダイ:フォールンオーダー』『ジェダイ:サバイバー』みたいに「さっき掴まれた崖と同じような物なのに掴めない」とか「明らかにそれは掴めるだろ!」っていう理不尽な気持ちを毎回抱くのは正直うんざりする。このゲームも同じかと思いきや、設定画面の「ハイコントラストモード」というところで「インタラクト対象」や「よじ登れる場所」を強調することが意図的にできる!これはありがたい!!お陰でゲームプレイは快適にできるし、ストーリーに集中できる。ここ近年のスター・ウォーズゲームで大当たりを感じた。雰囲気がぶち壊れようがなんだろうが快適さを優先するか、ゲームを“深く”楽しむかというプレイヤーの選ぶ自由にあって、他者にどうこう言われる筋合いは無い!

くっそありがてぇ!

とにかく移動できるところは明確にしていただきたい!それが選べるから最高だ!

雰囲気を重視したいならヒントも極力消すこともできるので広くゲーマーにオススメできる。

ゲームでは他にもスピーダー・バイクに乗って移動することができたり、スターシップに乗っての惑星移動やフライトコンバットもできる。

スピーダー・バイクはストーリーの進行で水上での走行も可能になるし、このゲームがどれだけ壮大な世界になっているのかが肌で感じられる。また、このゲームは画面比率が通常の16:9の他、映画と同じ21:9にも切り替えられるのでより映画とのシンクロが感じられるだろう。これはもっとデカいモニターかスクリーンに投影して遊びたい。

全体の半分くらいは遊んだと思うが、アイコニックなヒーローでもヴィランでもないケイの生い立ちや無名ながら裏社会で懸命にのし上がっている姿はある種の共感が感じられるだろう。また、今作では新たな反乱軍や帝国軍の一面を見られて脚本家の視点に唸ることも多い。

何者でもない。という主人公に大きな意味をもたせた作品として成功したと思える。

さて、最後にここ近年のスター・ウォーズ、というかコンサにも共通している主人公の「無個性」について触れておきたい。

ジョージは2005年の『シスの復讐』の公開後は『スター・ウォーズ』は全6部作で終了として、その後は間の空白をアニメやゲーム、ドラマといったスピンオフで埋めていくと話していた。その中に『フォースアンリーシュド』や『クローン・ウォーズ』と言ったものがあり、ドラマ『アンダーワールド』、ゲーム『1313』というのも予定されていた。

他にも過去にはUbisoftからは『リーサルアライアンス』というゲームも有り、これも今作のようにフォースを使わない、元傭兵が最終的にデス・スターを発見するという『ローグ・ワン』に先駆けた内容となっていた。事実、元ネタと思われる箇所も散見される。だがゲーム自体はお世辞にも出来が良いとは言いづらかったが、今作『無法者たち』は『リーサルアライアンス』をブラッシュアップしたような感じがする。

話を戻そう。ドラマ『アンダーワールド』は帝国軍でも反乱軍でもない、『スター・ウォーズ』のメインストーリーから外れた暗黒時代の社会に生きる人らにスポットを当てた内容になるとされていた。それは他ならぬ「何者でもない」人たちであって、裏社会にスポットが当たるのはある種の既定路線であった。

今作の『無法者たち』はかつてのルーカスの精神を受け継いだもので、残りのストーリーも楽しみなのだ。

というわけで、30日から発売開始の本作を楽しんでいただきたい。

アルティメット・エディション、UBISOFT+では明日27日からプレイ可能だ。



ジャンル: クライムアクションアドベンチャーゲーム

対応機種: Xbox Series X|S ・PC ・PlayStation 5

開発元: Massive Entertainment Lucasfilm Games

発売元: Ubisoft

発売日:2024年8月30日

次回以降も書いていくので支援をお願いします。

また、私も全てのスター・ウォーズゲームを持っているわけではないので、譲っていただける方募集します。

連絡先は以下のメールアドレスか、TwitterのDMまで。


hata.fuminobu@gmail.com


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