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教えて! 子どもと性教育 座談会【前編】子どもへの性教育の始め方

〈監修者〉
丸の内の森レディースクリニック
院長 宋美玄先生

大阪大学医学部医学科卒業。周産期医療、女性医療の診療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』『産婦人科医 宋美玄先生の生理だいじょうぶブック』『産婦人科医宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』などがある。2017年に開業した丸の内の森レディースクリニックは日本屈指のオフィス街とターミナル駅に近く、近隣で働く人から遠方に住まう人まで幅広い層の女性が訪れている。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。

〈本文〉
産婦人科医の宋美玄先生に聞く「からだと生理の話」。
その特別編として「gokigen Lab.(ゴキゲンラボ)」編集部と宋先生との座談会をお届けします。
編集部にはそれぞれ、性教育に関する自身の疑問を宋先生に投げかけてもらいました。
前編である今回は、子どもへの性教育の始め方について、トークが広がりました。

わが子への性教育、まずはどこから始めればいい?

Lab.編集部・E(以下、E)「私には今、5歳の娘がいます。娘には将来的に自分を大切にし、正しい知識を身につけてほしいという思いがあります。そんな娘に、父親としてどのようなステップでからだのことを伝えていくべきかが気になっています。私自身、きちんと性教育を受けた記憶がないので、伝え方が難しくて」

Lab.編集部・E。来年小学生になる5歳の娘のパパ。男性として知識不足を感じるので知識を増やしていきたい。娘が自分のからだを守るために、男親としても伝えられることを知りたい。


「プライベートゾーン」を教えることから始めるとよいでしょう
今、5歳ということですが、お風呂でからだを洗うときはどうしていますか?

E「できるだけ子どもが自分で洗うようにはしています。でも、まだ『洗って』と言われることもあって、どうしたらいいかなと……」

まずは、からだの中には「プライベートゾーン」と言って、他人に見せたりさわらせたりしないほうがいい場所がある、ことから教えるのがいいと思います。
お風呂では「ここは大事な場所で、お父さんやお母さんでも、気軽にはさわらないほうがいいところなんだよ」と言って、自分のからだにも特別な場所があることを伝えていきましょう。
そうすると、子どもも「そうか、ここはお父さんやお母さんでも遠慮する場所なんだ。ここにさわろうとしてくる人はおかしいんだな」と思うようになっていくはずです。
その教えが、ファーストステップかと思います。

E「その次のステップとしてはどうするのがよいのでしょう?」

次は、からだの構造を教えていきます。特に女の子の場合、自分のプライベートゾーンがどうなっているのかわかりにくいです。
「赤ちゃんってどこから出てくるの?」という疑問が子どもから投げかけられたら、「女の人のお腹の中には赤ちゃんのお家(子宮)があって、その外側には『おまた』(わが家ではこう呼んでいます)があって、その間に赤ちゃんが通る道があるよ。おまたは赤ちゃんが通るところだから大事なんだよ」と説明するとか、それだけでだいたいの解剖学的説明ができますよね。
5歳ぐらいだったら、まずはそれで十分です。
もうちょっと大きくなったら生理や妊娠について、興味や段階に応じて教えられるといいと思います!

E「まずはプライベートゾーンの説明からですね。早速今日からやってみます! ありがとうございます」

最近、「家庭での性教育」が話題になっていますね、なぜですか?

Lab.編集部・B(以下、B)「最近、家庭での性教育が話題になっていて、関連する本もたくさん発売されています。このブームは何がきっかけなのでしょうか?」

“自身を守る術”なのに学校では教えてもらえないからでしょう
性教育が必要だと思っている人は多い。でも学校では教えてくれない。じゃあ、家で教えるしかないねということで今、広がっているのだと考えられます。

B「日本の性教育は、世界の中ではどんな位置付けなんでしょうか? 進んでいるのでしょうか? それとも遅れている?」

Lab.編集部・B。独身で子どもはいないが、プロジェクト全体を通して、性のことがもっとオープンに当たり前に話せるようになる未来に光を見いだしたい。

進んでいるか遅れているかで言えば、だいぶ遅れているといえます。日本では「性教育をすると寝た子を起こす」という考えのもと、高校生になるまでセックスについて直接習う機会がありません。
例えばフランスでは、非常に具体的な避妊方法について教えていますが、日本では「安易に具体的な避妊方法の指導等に走るべきではない」として、具体的な避妊方法について教えてくれません。子どもが自分たちの身を守る術を、学校は教えてくれないんです。
さらに最近では、多様な性についても習うようになりましたが、「性のめばえ」について書かれたところには、「思春期になると異性に興味をもつようになります」と書かれていて、結局、異性愛しか前提としていない……といった矛盾もある状態です。
世界とひと口に言ってもさまざまですが、それでも日本の性教育は先進国の中では明らかに遅れていると思います。

B「遅れている日本の教育がどうなればよくなると、先生は思いますか?」

この性教育ブームを機に、学校教育が変わっていって、子どもの発達段階に応じた知識や、人との付き合い方などを義務教育の場で教えてくれるようになるのが理想だと思います。
さらには、性に関する情報には大人になってからもふれますが、間違った知識も多いもの。インターネット検索のアルゴリズムも今よりもっと改善されて、妥当な情報にたどり着きやすくなってほしいとも思っています。


先生はお子さんにどうやって性教育をしていますか?

Lab.編集部・A(以下、A)「先生はご家庭でお子さんに、どのような教育をされているんですか?」

Lab.編集部・A。小学1年の娘のママ。一人っ子。性教育や多様な人種がいることは小さいころから意識して伝えているほう。

まず「同意」について伝えています
最近「性的同意」という概念が出てきています。性的な行為をする際に、それはお互いが積極的に望んでいるのかどうかを、意思表示をして確認することです。
性教育というと、性行為や生理のことを話すというイメージがあるかもしれませんが、わが家ではまずこの「同意」について伝えています。
同意ってスキンシップや性だけのことではないと思うんです。例えば「あなたのお気に入りのハンカチを貸してほしい」とか、そういうことでも同意をきちんと確認し、共有しておくほうがいいはずです。
日本では特に「暗黙の了解」のような文化があり、同意をうやむやにするのが一種のカルチャーになっている傾向がありますが、明確に同意を示さずにいると、自身の思いからズレた結果になってしまうおそれもあります。これからの世代には同意に対する意識を高めていくほうがいいと思います。
わが家では子どもたちに『子どもを守る言葉 「同意」って何?』(レイチェル・ブライアン:著、中井 はるの:翻訳/集英社)という本を渡しました。1冊まるまる同意について書かれた本で、「同意というのは積極的にするもの」とか、「雰囲気に飲まれたり、パワーバランスがあったりする場合は、同意が成立しないこともある」とか、「いったんした同意を撤回してもいい」とか、同意に対する基本的な考えが書かれています。この本はおすすめです。

A「ご紹介いただいた本『子どもを守る言葉 「同意」って何?』、参考にします! わが家には小1の娘がいて、プライベートゾーンについては教えているほうだと思います。
私は子どもを性犯罪からどう守るのかが気になっています。私自身が子どものころ、家の近所で怖い思いをした経験があり、それが怖くて今はまだ娘を一人で遊びには行かせていません。公園にも一緒に行っています。いつからなら一人で行動させていいのかな? というのが、今のところの悩みです」

それは難しい悩みですね。海外では10歳ぐらいまで送り迎えが必要とされる風潮があるけれど、日本は治安がいいこともあって、小さなうちから一人で行動させることが少なくないですよね。
でも、親御さんによっては大きくなってからも送迎している人もいるし、思春期になったらなったで、また心配ごとが出てくるし……。
親としてはGPSを持たせて、知らない人に声をかけられても無視する、死角になるところで一人にならないといった最低限の防犯意識をたたき込むことは必要だと思っています。
女子だけでなく、男子も被害に遭います。何より被害に遭った子どもが自分を責めてしまうのがつらいです。子どもに性加害をするほうが圧倒的に悪いのに、「被害に遭ったのは自分が悪かったんじゃないか」という罪悪感を子どもが抱いてしまい、親や周りの大人に話せない状況が少なからず発生しているのが悲しすぎます。

後編に続く


〈今回のPoint〉
・性教育は子どもの発達段階に応じて、まずはプライベートゾーンを教えることから始める
・プライベートゾーンの次に、からだのしくみを教えていくのが望ましい
・これからの世代では「同意」に対する意識を高めていくことも大切!


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