見出し画像

教えて! 子どもと性教育 座談会【後編】どうする? 思春期の子どもへの性教育

〈監修者〉
丸の内の森レディースクリニック
院長 宋美玄先生

大阪大学医学部医学科卒業。周産期医療、女性医療の診療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』『産婦人科医 宋美玄先生の生理だいじょうぶブック』『産婦人科医宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』などがある。2017年に開業した丸の内の森レディースクリニックは日本屈指のオフィス街とターミナル駅に近く、近隣で働く人から遠方に住まう人まで幅広い層の女性が訪れている。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。


産婦人科医の宋美玄先生と一緒にお届けしてきた「からだと生理の話」。
最終回である今回は、前回に引き続き「gokigen Lab.(ゴキゲンラボ)」編集部と宋先生との座談会(後編)をお届けします。
思春期の子どもに性教育をするにはどうすればよいのか? 先生に伺いました。

前編から読む
教えて! 子どもと性教育 座談会【前編】
子どもへの性教育の始め方

思春期の子どもに、性のことをどう話す?

Lab.編集部・C(以下、C)「わが家には小5と中2の娘がいるのですが、うちはけっこう、早い時期から子どもには一人で行動させていて、習い事は一人で行かせています。ただ、最近特に中2のほうが、からだつきもどんどん女の子らしくなっていて生理も来ているので、セックスや避妊のことをきちんと教えないと……と思いつつ、親子の関係だとすごく恥ずかしいし、どう教えたらいいのかもわからないし、むずかしいなというのが目下の悩みです」

Lab編集部・C。中学2年、小学5年の2人の娘のママ。そろそろ娘たちにセックスや避妊のことをリアルに伝える時期だと思うものの、自分が恥ずかしいという気持ちとどう伝えたらよいかがわからず、教えられないまま不安になっている。

誠実に答え、“きっかけ”をうまく使って話をしてみて!
子どもに性の話をする方法は、思春期までに家で性の話がどれぐらいされているかによって変わってくるのですが、どんな場合でも大切なのは誠実に答えること! 
例えば、小学校高学年の子に「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんだよ」などと説明していたら、子どもから「うちの親はこの疑問にきちんと答える気がないんだ」と思われてしまい、それ以降、親子間で性の話は出なくなると思います。
かといって、改まって「あなたは生理がきたけど、セックスっていうのは……」と切り出しても、子どもが戸惑ってしまうかもしれないですよね。
なので、誠実に答えつつ、いろいろなきっかけを使って性の話をするチャンスをつくっていきましょう。
例えば「今日宋先生からこんな話を聞いたわ」などでもいいし、「仕事で『思春期の子に気持ち聞いてきて』って言われているんだけど」とか、そんなエクスキューズを上手に使って会話の糸口にするのがいいと思います。

C「なるほど、唐突にならないよう、上手にきっかけを見つけると話しやすいですね!」

トイレ文庫もおすすめです!
また、家庭内でおすすめなのが「トイレ文庫」! 性教育的な本は、きっと子どもは興味があるんだけど、本棚に置いても読むのが気恥ずかしいでしょうから、誰からの目線も気にならないトイレに置くのもいいでしょう!
性の話の本だけを置いているとわざとらしいので、同じくライフスキルになりそうな「子どもに伝えたいお金の話」、「SDGsの本」などを一緒にセレクトして置いておくと、そのうちきっと読んでくれると思いますよ。
ちなみに私の書いた『生理だいじょうぶブック』(小学館)という本は、これから月経を迎える年齢の子どもたちや親御さんに好評のようなので、よかったらお父さん、お母さんも読んでください(笑)。


産婦人科医 宋美玄先生の生理だいじょうぶブック(宋美玄:監修、あべさより:漫画/小学館)


ところで娘さんは、生理痛は大丈夫そうですか?

C「ちょっとしんどそうですね……ただ、寝込むほどではないし、痛み止めを飲むまでではないみたいですが。私も彼女の生理周期をわかってないので、それもよくないかなと思っています。旅行の予定があるときには『いつが予定?』と聞くことはあるんですが……。普段から、どういう周期で何日間続いているとか、一応知っておかないといけないなと思いつつ、把握していないです」

思春期からでも低用量ピルを活用するのも一案です
思春期の月経周期は不安定ですが、3ヵ月来ていない場合は婦人科を受診してほしいので、何となくでも把握しておけたほうがいいです。トイレのサニタリーボックスを片づけるタイミングでわかるのであれば、それでOKです。
また、からだが未熟なために月経痛がきつい傾向にあるので、お子さんがつらそうであれば低用量ピルの服用を検討するのもよいと思います。排卵を止めるため避妊効果も期待できるので、望まない妊娠の予防にもなります。
受験や部活の試合、旅行などに月経が重なるのって嫌じゃないですか。本当に妊娠したくなる時にそなえて子宮と卵巣を温存しておくために、低用量ピルの服用を一案として知らせておくのもよいかもしれません。
私のクリニックにも、10代で受診している子は多いですよ。月経痛やPMSが理由だったり、中学受験目前に初経が来てしまったので何とかしたいというケースもあったりします。
そういえば子宮頸がんのワクチンはもう打ちましたか?

C「まだです。副反応の話などを聞くと怖くて……。自治体からお知らせは来るので、『打たなくては』と思いつつ、今はそっとしているところです。子宮頸がんワクチンは接種しても大丈夫なんですか?」

子宮頸がんワクチンは早めに接種を
安全性は充分確認されているので大丈夫です。打つのが早いほど免疫がつきやすいので、早めの接種をおすすめします。
それをきっかけに、かかりつけの婦人科を決めるのもおすすめです。私は、娘が小6になり次第、接種させようと思っています。
子宮頸がんワクチン接種のお知らせをきっかけに、お子さんと性の話をするのもいいかもしれません。「ワクチンのお知らせが来てるんだけど、子宮頸がんっていう病気があって、これの原因はヒトパピローマウイルスっていうウイルスで、日本人の20人に1人ぐらいがもってるウイルスなの。これは何でうつるかというと、プライベートゾーン同士の接触で……」というところから、セックスや避妊の話につなげるのもありだと思います。

性の話をタブー視しないことも大切
Lab.編集部・F(以下、F)「宋先生はご著書の中で、『性教育は子どもたちが幸せに生きるためのライフスキル』とおっしゃっているのですが、これはどういう意味なんでしょうか?」

Lab.編集部・F。子育てはしていないが、男性として当たり前に性について話せることを実践すべくかかわっていきたい。性教育に関しては、新聞で「性的同意/合意するとは?」という記事を読み、この教育がキーになるのでは? ということに興味をもっている。

性教育は子どもをしあわせへと導くライフスキル
性教育って何のためにあるかというと、勉強というよりも生きていくのに必要な知識を身につけたり、自分の身にトラブルが生じたとき、どうやったらそこからカバーできるかという「選択」を自分自身でできるようになったりするためだと、私は思っています。
例えば、大人からプライベートゾーンをさわられるような性加害に遭ったり、ある日突然望まない妊娠をしたりすることは、残念だけどどんな人の身にも起こる可能性があります。
そうしたことに直面したときでも、そこから回復=カバーするためにはどうすればいいのか、それを考えられる意識と知識があることで、その後の子どもの幸福度は変わってくると思うんです。
性教育とは、そのために身につけておくべきスキルだと私は思っています。
さらにそれを家庭ですることで、「この家では、性の話題はタブーじゃないから、心配ごとがあったらママやパパに相談していいんだ」という子どもの理解にもつながるはずです。
性の話に対して下手にタブー感を抱かせると、その後、性機能障害を引き起こしてしまう人も少なくありません。
家で性の話はタブーだったので、結婚してもセックスに興味が湧かないとか、妊娠したら親に「セックスをしたのね」という目で見られると思うと怖いとか、そんな感覚をもったまま大人になってしまった人をたくさん見てきました。
その結果、ご本人が苦しんでしまうのはつらいことです。
各ご家庭、いろいろと方針はあるかもしれませんが、性の話をあまりタブー視せず、子どもの疑問と真摯に向き合うことが、結果的に子どもを守ることになるのではと私は思っています。

F「なるほど! 知識をつけることで、自分を守れるようになるというのは、今回の連載でもあらためて感じました。大切ですね。貴重なお話、本当にありがとうございました」

座談会を終えて――Lab.編集部それぞれの感想

これで座談会は終了です!
最後に、宋先生との実りある座談会からどんなことを感じたのか、編集部それぞれに感想を寄せてもらいました。


■娘が自分の身を守る術を身につけるサポートをしたい
父親として、成長する娘にどうやって知識を授けていけばいいのかわからなかったのですが、今日の座談会に参加できたことで、具体的な筋道が見えてきたように感じます。
今後、妻とも連携して、娘が自分で自分の身を守る術を身につけられるようにサポートしていきたいです。(E)

■自分の経験を娘が参考にしてくれたら
私は幼いころの自分の体験が今でも怖くて、子どもも同じ目に遭うんじゃないかとばかり考えていたのですが、座談会の後、宋先生に「子どもは親の失敗から学ぶことが多いので、頃合いを見て、うまく話してあげてほしい」と言ってもらえて、少し肩の荷が下りた気がしました。
娘には私の経験を、怖がらせすぎないように伝えて、同じ目に遭わないようにしていけたらいいなと思いました。(A)

■子どもたちとの対話も、子宮頸がんワクチンも進めていきたい
子どもと生理の話、セックスの話などをしなければと思いつつ、どうやって話せばいいのかがまったく見えていなかったのですが、先生から「話すきっかけ」のヒントをいろいろいただけたので、子どもたちとの対話に生かしていきたいです!
迷っていた子宮頸がんワクチンの接種も、先生の話を聞いて一歩踏み出せる気がしました!(C)

■「同意は撤回していい」と知れるだけでも気持ちが違うはず
私自身にはまだ子どもがいないのですが、一人の男性として、親戚や身近な子どもたちに、機会があれば同意について伝えるところから始めていきたいです。
「一度同意しても、それを撤回していい」ということを知るだけでも、子どもたちはずいぶんラクになるんじゃないのかなと思いました。(F)

■夫婦のあり方、子どもとの接し方、将来の参考にしていきたい
私は性について話しづらい家庭環境で育ったこともあって、性教育といわれても、どうしたらいいのか想像がつきませんでした。将来パートナーと意識を合わせていくというのもどうすればいいか、まだよくわかっていません。でも、座談会の話をきっかけに、夫婦のあり方も、子どもとの接し方も家庭によってそれぞれなんだということがわかったので、将来の参考にしていきたいです。(D)

■思春期ならではの気恥ずかしさをカバーしてあげたい
座談会に参加していて、ふと「そういえば私、生理が来たことを親に言っていなかったなぁ」と思い出しました。親とは仲が悪かったわけではないんですが、何となく恥ずかしくて言い出せず、そのまま30代まで来てしまいました(笑)。思春期には私のように、よくわからない気恥ずかしさをもつ子もいると思います。今回のラボの記事を読んで、そんな子が少しでも減ってくれることを願います。(B)


性やからだのことについて、正しい知識や意識をもつことは、自分を守ることにつながります。私たちがそれを知るのと同時に、子どもたちにも、ぜひそれを伝えていけたらと編集部一同思いました。
それではみなさん、また会う日まで、ゴキゲンで!


〈今回のPoint〉
・子どもからの性の質問には「誠実に答える」ことが大切!
・子どもが思春期になって性の話をするきっかけをつかみにくい場合は「トイレ文庫」がおすすめ
・性の話をタブー視せず、真摯に向き合うことが結果的に子どもを守ることにつながるはず


gokigen Lab.の商品はこちらでご覧いただけます

SNSでは商品の情報や最新情報を発信中

https://www.instagram.com/gokigenlab_felissimo/