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ハリケーンラブ

野呂家

「恋はいつも唐突にハリケーンラブ」などと意味不明な供述をしている野呂亮。
野呂亮の部屋に勉強机の椅子に座る野呂亮に、あぐらをかいて足を揺らしながら座る俺(チャーミー)の2人きり。

「なぁ。悪いことは言わんから、あの子は止めておけ」俺は頭を抱えながらうめく。
宗教がダメとか、何かに信仰している人がダメとかの話ではない。
色々ある信仰対象の中でもリコピン教を信仰しているような人はダメだろうという話だ。

「なんで?」

「なんでって? そりゃー……リコピン様がトマトで勧誘があれなんだよ」

「いや、何言ってるか分からん。それより、なんで僕がサヤちゃんを意識しているとわかった?」

「見れば分かる。ってか、君こそなんで名前知ってるの?」

「そりゃ、連れの女性がそう呼んでたから」こいつの耳はダンボなのだろう。都合のいいこと限定で。

「なるほど。いやー、可愛かったなー。サヤちゃん。また来ないかなー」

「来るんじゃねーの? ここら辺で活動しているらしいし」魔法で盗み聞きした情報。

「活動?」単語を拾い上げる。身を乗り出して聞いてくる。

「リコピン教。知らない?」

「あー……大学で注意喚起されてた気がする……」
最近、女生徒が入信しているとのことだった。
当然、学外ではあるけれど、トマト帽子をかぶって布教活動している姿のユーモアさと違い、実態はここで記す言葉をもたない被害にあう人もいるとのことだった。

「それの信者だったりしたら?」

「関係なくない? 恋はバーリトゥード、何でもありだよ」
あかん。普段悪い頭がより悪くなっているようだ。
「僕はサヤちゃんに勧められたら神でも鰯の頭でも信じる」
下心しかないようだ。諦めさせるのは難しそうだ。

「ラブレターを書こう」何か言い出したぞ。
野呂亮は机に向きを変える。

「のーろすけくん。ラブレターとおっしゃいました?」

「ああ。僕の華麗な文才があれば大丈夫だよ」いや、さっき恋は唐突にハリケーンラブとか言っていた奴が言っていい言葉じゃねーよ?

「何を書こうとされていらっしゃるんですかー?」

「僕の熱い胸のうち、恋のリビドーマグマをありったけ詰め込んだハートフルなメッセージを送りたい」大事故しか見えない。これはダメだ。

「野呂亮さーん。令和ですよー? 今時、ラブレターはないっすよー?」なだめる方向で止めたい。

「僕のパッションがわからないのか?エロスエターナルだぞ」なんでも横文字言えばいいってもんじゃないぞ。おい。
「よし!書けた!」早っ!

ただLINEアカウントが書かれていただけだった。
あぁ、喫茶店で連絡先を渡すやつね。まぁ、令和のラブレターらしいっちゃ、ラブレターらしい。
まぁ、さっきの語彙センスで書かれたラブレターに比べたら事案になるリスクは低い……と思いたい。
知らん男からいきなりLINEアドレスを渡されるってどうなんだ?とは常識的には思うが……先ほどまでのワンダーなセンスを見た読者諸賢から「比較すれば……まだマシかもね?」程度にはハードルが低くなっていれば成功だと思う。

「あー……LINEアドレスですかー……まぁね……そっからですよね……はい……それで、ありったけの気持ちとやらは、どこに込められてるんでしょうか?」

「それはLINEでやり取りするようになってから存分に振る舞うよ。愛の嵐を。ラブハリケーン」

なんか……相手の方が可哀想になってきた。


2024年 文披31題 day7 ラブレター

後書き
ラブレター。今はLINEやSNSのアカウントか、メールアドレスを渡して、オンライン上のやり取りがラブレターになるのかなー。
と思います。
真夜中ラブレターは地獄が作られると経験者の皆様が語る談ではございます。
野呂亮くんが恋愛だと知能指数ダダ下がりで、語り手にしなかった理由がお分かりいただけたと思います。
書き溜めで最初の1行が
恋はいつも唐突にハリケーンラブだったので、このまま書いたら大事故だなと思い、チャーミーに視点を変えました。
チャーミーが突然言葉遣いになるのは、ドン引きしているからです。

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