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酷薄

張り裂ける音を鳴らせ、
呼吸する肺に直接入っていそうな突風に、
叩きつけるような豪雨。
心音をかえりみる余裕すらない氷が
芯から体に染み込んでいくように。
涙の一雫が落とす音は聞こえない。
稲妻がさえずる。
目がにじんで、ぼやき、視界は乱れ荒れていく。
台風のその様子は、
白日に暴かれるのを拒む
ある種の感情に似ている。
死海のほとりで
鎮魂歌を紡ぐ竪琴の弦を
焼き裂くような。
その感情との葛藤の刹那に、
台風は起こる。
そんな胸中にあるものもいる。
虹はそれでも無関係に瞬いている。

お題『台風』言葉の添え木様
#詩 #散文詩 #言葉の添え木

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