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夕暮れのおじさん

夕涼みがてら近所の河川沿いを散歩をしている時だった。
河は緩やかな流れをたたずませて、濃紺色の空を映し、底を見せない。
昼間の暑さの名残と、夜を迎えようとする中に心地よさを感じる。
そんな何気ない景色の中、唐突に非日常なものが歩道に落ちていた。

捨て猫のようにおじさんが落ちていた。
そのおじさんは段ボールの中に入っていた。
頭髪は両サイドは残っているが、頭頂に一本だけのせいか存在感が強い……波平さんヘアーである。
牛乳瓶のようなメガネをかけ、鼻の下に毛は生えていないし、魚が死んだような目をしているので,波平さんほど威厳は感じない。
ヨレヨレの白いシャツに、白いステテコ、腹巻きとステレオタイプなおじさん三種の神器を身につけていらっしゃる。
そのおじさんには何故か……蝶のような羽が生えており、お札程度の大きさ…16センチ程度だった。
ダンボールには「拾ってください。あなたにいつもと違う夏を提供します」そう書かれていた。

怪しさしか感じないので、見て見ないふりをすることにした。普段歩く速度よりほんのちょっとウサインボルトを意識する程度の速足を試みるも

「待て」後ろから犬を呼び止める指示のような声。

今日は朝から寝違えていた予定の日だったので、振り返りたくても振り返れないんだ。そう、これは無視ではない。

その小さなおじさんが前に回り込んでくる。
RPGだとイベントバトルは逃げられない仕様だし、物語とか相手にしない選択肢はご都合主義で曲げられてしまうし……きっと、これを書いている誰かも長いものには巻かれまくるし、ご都合主義の権化なのかもしれない。
兎にも角にも僕の逃げ道は塞がれた。

「暑いからさ。ちょっと、そこの喫茶店に行かないか。君に話があるんだ」
僕はおじさんに話はない。そんな切り返しをできない僕は小さなおじさんと喫茶店に行くことになった。

18歳、色々と期待に胸を膨らませ入学した大学生活での初めての夏は、期待から大きく横道へ逸れて不穏なスタートを切った。

2024年 文披31題
1日目お題「夕涼み」

後書き
今回は共通する設定で31題で対応していきたく思います。

そんな訳で。主人公その1。僕について解説

僕(野呂 野呂亮 のろ のろすけ)
どんなお題でもいいように便利な設定にしちゃおー。ドラえもんか、魔法少女っぽい設定なら大丈夫だよね☆
とテキトーに作られたお話のテキトーなネーミングの主人公。年齢設定もテキトーです。学校やバイト先に行く描写や、今時の若者らしさを見せてくれるかも謎。
両親はどんな思いを込めて名付けをしたか理解に苦しむけども、作者は「ゴツゴウシューギ☆」という力業というか、魔法が使えるので大丈夫。
そんな両親も出てくるか、1話を書いている時点でまったく考えない状態で話は始まります。

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