見出し画像

回天にまつわる本たち

回天特攻隊について一番最初に読んだ本が横田氏の本。横田氏が特攻隊員となり出撃、終戦を迎えるまでの経緯を追いながら、回天特攻隊の全容も理解出来る。隊員のそれぞれの人柄、エピソードまで記載があり、横田氏の思い入れが伝わってくる。
何より、潜水艦出撃を経験し、一度死を約束されながら生還した人の記録として非常に貴重である。回天の搭乗員の多くは訓練中に事故死し、また出撃後に潜水艦が攻撃されるか、または本来通り回天に搭乗・発進し死亡した。


横田氏の本のまえがきで、はげましの言葉をかけてくれた思い出の人として登場する和田稔氏。訓練中に遭難し、終戦後の台風により搭乗した回天が山口県の岸に打ち上げられた。回天から引き上げられた彼の死に顔はおだやかなものだったらしい。「私の青春の真昼前をささげる」という詩で有名。バイオリンの奏者であり、光回天基地きっての秀才・文化人。
和田氏の手記は、当時に執筆されたという点で非常に貴重である。戦後に回想で執筆されたものとは違い、脚色や記憶違い、またあえて隠すという事もなく、隊員としてのリアルな気持ちの揺れ動きが伝わってくる。
日記・手紙・詩で構成され、和田氏の父親によって編纂されたこの手記は、当然本人にとって公開の予定はなかっただろう。ただ、和田氏の親友の武田五郎氏が「彼の知性は、終戦も予見していたのでは」と言う様に、どこかで自らの記録が後世に伝わる事を予見していたのでは。「見られている」事を確信しながら書くからこそ、青年らしい自らの恥も、神経質な程赤裸々に書きつける真面目さを感じさせる。


和田稔氏の友人、武田五郎氏が終戦後に回想した。学徒出陣の隊員として、率直に回天特攻隊に対する気持ちを書いている。この様な率直さが、繊細な性格の和田稔氏に愛された理由なのだと感じさせる。

海軍訓練生時代から和田稔氏と同じ隊で過ごした友人の神津直次氏の手記。特攻隊の熱狂からは距離を置いた冷静で淡々とした語り口で、光回天基地の日常をつぶさに描く。爆弾で漁をするという穏やかなエピソードも。この記憶力に感嘆。
ただ、和田稔氏遭難前後のエピソードについては、激しい後悔の念をもって書かれている。

回天搭乗員を乗せた潜水艦の乗組員の手記。同じ兵隊と言えども、特攻隊員の気持ちを計り知れないものとして感じる事が率直に書かれる。自らの遺書をレコードに記録した事で有名な塚本太郎氏が登場。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?