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短編小説|呪ってやった
卒業の日に呪ってやった。
式の前に、彼女の下駄箱に手紙を入れた。今日が終われば二度と会うことはないであろう、名前を知っていたかも怪しいクラスメイトからの恋文。返事なんて期待していない。この日、この俺から恋文を貰ったという記憶を、焼き印のように脳に押し付けてやりたいだけ。これはただの呪い。
式もHRも終わると、俺はさっさと教室を出る。別れを惜しむ友人はいない。階段を駆け下り、まだ誰もいない玄関で靴を履き替えようと下駄箱を開ける。すると手紙が入っていた。周囲を見渡してから震える指で開くと、差出人は彼女。
「きっとすぐに帰っちゃうんだろうから、私も手紙を書きます。さっきは手紙をありがとう。いつもチラチラと見てくるのが本当に気持ち悪かったけど、それももう終わりだと思うと淋しい気もします。元気でね」
呪われたのは俺の方だった。
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