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他愛のない話

電車の前の席に座っていたおばちゃん3人。

っていうか、わたしもおばちゃんだから
もう一歩二歩、人生の先輩の方々。

揃って「◯◯商工会婦人部」の
刺繍のある鞄を手にしている。

婦人部の寄り合いのあと
皆さんでお帰りなのだろう。

推測するに歳の頃は7〜80だろうか、
旦那さんは昔の人と言われる年代か。

真ん中に座るご婦人が
家での旦那さんの様子を語る。

美味しい、美味しくない等感想を言わないから
何が好きで好きでないかが分からない。

お味噌汁の具や旅先で買ってきた焼酎でさえ
感想がないので好みが読めない、と。

美味しいか尋ねても
「普通」と言われるそうだ。

その話に反応する右側の奥さんと
その話を静かに聞く左側の奥さん。

夕陽差す電車
3人の声が車内に響き渡る。

聞いていなくても
勝手に入ってくる声の強さと、話の込み入り具合。

目を瞑って寝ている風のわたしでも
へーそうなんだー、なんて思えるくらい。

お味噌汁の具の構成や
旅先の焼酎の感想など

あってほしいけど、なくてもいいし
他人の家族の件なら尚更興味が薄い。

ただ、そのおばちゃん3人の空間には
すこぶる活気を感じた。

文句を言っているようで言ってない
不満なようで不満でない感じ。

あのおばちゃん達は他愛のない話とともに
めちゃ元気なのだ。

意味ないじゃん、とか
だから、なに?とか

結末やオチがないことや
改善策が見当たらないことなど

どうしても進歩、深化したい
とか思ってしまうわたしには無い

ただただ今を生きる人の鮮やかな瞬間に見えて
活気と感じられた。

ああいう歳の取り方
ええかもしれへん。

他愛のない話がさほど重要でなくても
その瞬間に輝きがあれば

満ちていると思う。





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