見出し画像

ベロニカは死ぬことにした

2005年公開、堀江慶監督作品。真木よう子主演。
丁度10年前の作品で、当時監督は26歳だったようです。


主人公・トワは虚無感から自殺未遂をし、それによって精神病棟に入り余命を宣告され、短い余命の間を主人公は他の入院患者たちと暮らすうちに心情に変化が起こる。というあらすじ。
原作では主人公はベロニカという名前ですが、このトワという名前はどこからきているんでしょうかね。永遠?


一言でまとめると、ちゃっちい、という感想の作品でした。
監督は劇団出身のようで、確かにそういった舞台に近いような印象を受けましたが、だったら舞台でやればよいのでは。

パウロの原作からは超然とした澄んだ雰囲気を感じましたが、映画では正反対にかなり躁的。精神病棟というよりはポンコツな玩具箱です。

何かとくに感じる所があったという訳ではないので、箇条書きで簡単に。
ネタバレもあり〼。


よかったところ

・冒頭の手紙(遺書?)を書くシーン
 前かがみになって小さく紙を折りたたむ姿には切なさや必死さがあった。

・中嶋朋子演じるサチ
 一番好感が持てた人物でした。他が糊でぺたっとラベルを貼られたようなキャラクターばかりだったけれど、サチは性格のある人物で、まともさを持ちながらも正気では生きづらく滑稽であろうとし、奇人扱いされることもなく傷つく可能性も外界より少ない精神病棟の気質をひとりで担っていてくれた人です。

・「通りかかっただけよ」を復唱する入院患者たち
 基本的に入院患者たちは壊れたおもちゃとか、紙人形劇に出てきそうな人ばっかりなんですが、このシーンだけは何か人のおぞましさを感じた。

・同じ一日などないのだと気付くトワ
 石も成長する、というくだりは置いておいて、今までの単調で無機質な生活から、大袈裟な患者たちが暮らす精神病院で「感じる」を取り戻す。精神病棟が生きた瞬間でした。


きらいなところ

・CGが雑(10年前の技術ってこんなものなんですかね)
 ストーリーに深みを持たせる余裕がなかったのなら、せめて映像にはこだわってほしかった。水中の映像、瓶が沈んでいく様子の違和感。サチが”飛ぶ”ところなんかは、映像にするよりも、そよ風が起こり患者たちが気配を感じる、みたいな演出の方がよかったのでは…。

・キャラクターがみんなオーバーで薄っぺらい
 奇人ぶって実は有能(という設定の)医師、ニタニタした看護婦たち、いかにもコイツが原因です!みたいな母親、仕掛け人形みたいな他の入院患者たち。人間らしさが全くない。人、というより本当にキャラクター。

・イ・ワン演じるクロードがペットみたい
 トワはクロードと接することで攻撃的だった態度も穏やかになるのですが、クロードは全然喋らないし感情表現もすこしずれているしで、自分を受け入れてくれる存在に出会い生きる事に前向きになるというより、精神を落ち着かせられるペットをゲットできましたって感じ。

・エンディング
 原作では、本当は主人公は死ぬ運命になどないというのが、医師によって計算された結末、またそこから発生する不安も含めて面白かった。しかし映画では、主人公が生きる希望を取り戻したから死ぬ運命とりやめます!に見える。あのシーンだけで医師を有能に見せるのも無理があるし。


ざっとこんな感じです。冒頭のような雰囲気にはとても期待したのですが、一度不信感を持ってしまうとなかなかそこから評価は上がりませんでした…。アメリカでも映画化されているのでそちらも見てみようと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?