見出し画像

天保の大飢饉


江戸時代の日本の気候は寒冷で、たびたび冷害や洪水が起こったと記録されている。異常気象が原因で凶作となり、飢饉が起こることが少なくなかった。

「天保の大飢饉」では、1833~1836年(天保4~7年)の間に連続的に飢饉が起こり、何万人もの大量の餓死者が出たと言われている。

今回は、この「天保の大飢饉」について解説する。

〈目次〉
1.天保の大飢饉とは
2.天保の大飢饉の後
3.大塩平八郎の乱

1.天保の大飢饉とは
江戸時代の後期、1833年(天保4年)からの数年間は天候不順が重なり、関東地方から東北地方の広範囲にわたって、凶作に見舞われた。

現在の東北地方にあたる地域における被害は甚大であり、多くの死者が出た。

仙台藩(現在の宮城県、及び岩手県南部)は、大規模な新田開発に力を入れ、実高で100万石を超える石高(こくだか:米の量で表した屋敷地や畑の生産高)を有している大きな藩であった。

しかし、稲作に藩の財政の多くを注ぎ込むという偏った政策を行っていたため、凶作によって大きな損害が出てしまった。

中でも1833年(天保4年)の被害が最も甚大だった。この年は春から水不足になり、各地で雨乞いが続いていた。
田植えの時期になっても、雨はほとんど降らなかったため、領地の30%以上は田植えができない状態になっていた。

そんな中、夏の土用(7月中旬~8月上旬頃)の時期になると気候は一転したのだ。暑いはずの夏であるにもかかわらず、冬のような寒さとなったことに加えて、大雨が30日間も続いた。

収穫時期の秋になっても天候不順は続き、結果として米をほとんど収穫することができなかった。農民たちは、野山に出て木の実や草の根などを食べて、飢えをしのぐほど、悲惨な状況に陥った。

仙台藩は、困窮している農民たちのために年貢を免除する政策を実施した。加えて、食物に困っている農民には利息なしで米の貸し付けを行った。

江戸では、江戸幕府が困窮した民衆を収容する「御救小屋」(おすくいごや)を市中21ヵ所に設置し、民衆たちの救済に努めた。

それでも飢饉は収まらず、不満に思った全国の農民たちは「一揆」や「打ちこわし」などの暴挙に出るようになった。

一揆と打ちこわし


2.天保の大飢饉の後

天保の大飢饉の後、日本各地で米や農作物の価格が上昇したため、1836年(天保7年)には、江戸幕府の直轄領であった甲斐国(現在の山梨県)で、「天保騒動」と呼ばれる大規模な一揆が起こった。

甲斐国は、稲作よりも絹織物の製造が盛んな地域で、絹織物は地域の特産品となっていた。その他にも民衆たちは、交通や運輸に携わる労働や林業などで、生計を立てていた。

天保の大飢饉の影響で米の価格は上昇し、そのうえ米の流通が減ったことが原因で、交通や運輸産業で得ていた収入が減少した。

また、人々が食べる物を買うことを優先したために、絹織物の価格が下がり、民衆の収入は激減したのである。

民衆たちは、米の価格が上昇したのは、米穀商や豪農が米を買い占めて米を売り惜しみしているからだと考えた。そのことから、米穀商や豪農を襲い、打ちこわしを行ったのである。

現存する、天保騒動の資料


3.大塩平八郎の乱

武蔵国(現在の東京都23区、埼玉県、及び神奈川県の一部)を始めとした各地でも、百姓一揆が起こった。

なかでも「大塩平八郎の乱」は特に大規模な反乱として知られている。

1837年(天保8年)には、大坂(現在の大阪府大阪市)も米不足状態に陥っていた。

大坂町奉行所で、与力(よりき:有力武将や大名に仕える下級武士)であり、陽明学(ようめいがく:中国から伝わった儒教のひとつ)の学者でもあった大塩平八郎は、民衆を救済するように大坂奉行所に提言したが、拒否されてしまった。

そのため、大塩平八郎は、所有する蔵書をすべて売却し、その資金を民衆の救済に充てた。しかし、大坂奉行所はそのことを売名行為とみなしたのである。

また、民衆の窮状にもかかわらず、江戸幕府は、新将軍となる「徳川家慶」(とくがわいえよし)の就任儀式のために、豪商から米を買い入れ、江戸に送っていた。

このことを知った大塩平八郎とその門人達は、大坂奉行所や江戸幕府の民衆に対する対応に大きな不満を持った。

そして日本刀などの武器を手に決起し、江戸幕府に対して反乱を起こした。

しかし、その直前に仲間が離反して密告し、事前に反乱の情報が漏れていたため、半日で鎮圧されてしまった。大塩平八郎は、責任を取って自決した。

大塩平八郎

失敗に終わった大塩平八郎の乱だが、世の中に与えた影響は大きかった。その後、世直しを求める声が各地で起こることにつながった。

その結果、1841年(天保12年)頃より、江戸幕府が「天保の改革」を行うに至ったのである。


参照元: 「刀剣ワールド」Webサイト

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?