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知的財産戦略とは


企業経営にとって
知的財産戦略の重要性が高まっている

〈目次〉
1.はじめに
2.知的財産戦略の目的 
3.知的財産戦略の実行によって得られるもの 
4.経営戦略との関係
5.知財戦略と経営・機能別戦略との関連性
6.知的財産戦略の立案のポイント
7.オープン&クローズ戦略を検討する
8.最後に



1.はじめに
2021年6月11日に公表された「改訂コーポレートガバナンス・コード」に、初めて知的財産に関する規定が追加された。

上場企業に対して、「知財投資等についての具体的な情報の開示」や「取締役会による実効的な監督の実施」が求められることとなった。

今回の改訂によって、上場企業が知的財産等の投資・活⽤戦略の構築・実⾏が、更に進むことが予想される。

企業経営を管理・監督するための仕組みが「コーポレートガバナンス(企業統治)」である。そして、「コーポレートガバナンス・コード」はその指針にあたる。

企業の競争優位性の源泉が、「カタチある有形資産」から、「カタチのない無形資産」へシフトしている。そのような中、「無形資産の中でも特に重要な知的財産」への 注目が高まっていることが背景としてあげられる。

「特許」だけではなく、「ブランド」や「ノウハウ」、「データ資産」などの知的財産を、より積極的に活用した企業経営が求められる。同時に、知財情報を活用した「IPランドスケープ」(※)にも、より一層注目が集まると考えられる。

(※)
「IPランドスケープ」とは、IP(Intellectual Property:知的財産)とLandscape(風景、環境、見通し)を組み合わせた造語である。知的財産情報を分析して、その結果を経営戦略の策定や企業の意思決定に活用することのほか、「知的財産を重視した経営そのもの」を指している。

「知的財産」とは、人間の創作的活動などにより生み出される財産的な価値がある情報であって、有形的な存在ではない無体物(形を持たないもの)である。近年、企業価値全体における無形資産の占める割合が高まっており、「知的財産」の活用が企業経営にとって重要になっている。

2.知的財産戦略の目的
知的財産戦略(知財戦略)とは、企業が自身の知的財産を活用し、経営戦略に組み込むためのアプローチである。

事業環境が大きく変化する時代において、企業の重要な資産の一つである知的財産を活用することで、事業を成功に導き、企業価値を高めることを目的としている。

3.知的財産戦略の実行によって得られるもの
①市場優位性の確保
独自技術に基づく知的財産権の取得により、他社の参入を阻止し、市場優位性を確保できる。

②にブランド価値の向上
企業のブランド価値を向上させることで、消費者からの信頼を高め、市場シェアの拡大につなげることができる。

③収益の増大
ライセンス契約や権利譲渡により収益の増大が見込める。

④投資やM&Aに対するアピール
知的財産権によって企業の独自性を可視化することで、企業全体の価値を評価することが容易になる。

⑤リスク管理
他社の知的財産権を正確に把握することで、他社からの攻撃に対する的確な対応ができ、円滑に事業が遂行できる。

4.経営戦略との関係
経営戦略との関係に経営戦略があり、その実行のために、知財をどう効果的に利用するか、を考えるものである。

知財戦略と経営戦略とは、企業の持続的な発展に向けて密接に関連する。知財戦略は、経営戦略の一部として位置付けられる。経営戦略において各機能別戦略の方向性を決定する重要な役割を果たす。

5.知財戦略と経営・機能別戦略との関連性
知財戦略のあり方は、企業の業種、規模、成長ステージなどによってさまざまである。知財戦略は、知財単独では成立しない。経営環境、経営戦略などのバックグラウンドを把握し、経営課題に対して成果を挙げられる知財戦略を練る必要がある。

6.知的財産戦略の立案のポイント
知財戦略のあり方は、企業の業種、規模、成長ステージなどによってさまざまである。知財戦略は、知財単独では成立しない。経営環境、経営戦略などのバックグラウンドを把握し、経営課題に対して成果を挙げられる知財戦略を練る必要がある。

自社の経営環境の現状分析から、経営課題を明確化し、投資すべき重点分野を決定する。経営資源には限りがあるため、メリハリをつけた知財活動を行う必要がある。自社の価値観や価値創造の方針を踏まえたビジネスモデルを検討し、その中で、知財・無形資産が果たす機能・役割を明らかにする。

7.オープン&クローズ戦略を検討する
どのような知財・無形資産に投資を行う必要があるのか、自社の知財・無形資産が支えるビジネスモデルを守るためにどのような方策をとるべきかについて戦略的な知財マネジメントの実施が求められる。

知財マネジメントの基本は、知的財産の公開、秘匿、権利化を使い分ける「オープン&クローズ戦略」である。「オープン&クローズ戦略」とは、製品等について、コア領域を特定した上で、市場拡大のためのオープンな領域と、自社の利益を確保するためのクローズな領域を構築する戦略を示す。

クローズ化する領域では、自社の強み(独自技術)を秘匿化したり、情報そのものは特許出願等により公開するものの、権利化によって独占排他権を確保したりする。

一方、オープン化する領域では、自社技術を標準化、規格化等し、他社に自社技術の使用を積極的に許すもので、特許権等の知的財産権の無償実施や低額ライセンスなどを行う。

経営戦略や経営環境によっては、ライセンス料を取るよりも、広く普及させることを優先したほうがよい場合などもある。まさに戦略的な経営判断が必要となる場面である。

このように、オープン化により製品を広く普及させるとともに、クローズ化により自社の独自技術を守る戦略をとることで、製品市場の拡大と競争力の確保を同時に実現することを目指すのである。

8.最後に
他の先進他国に比べて、日本は知財財産戦略が遅れていることは否めない。これからの時代は、いっそう、IP(知的財産)の価値の重要性が増す。グローバル経済において、日本は包括的経営戦略の中核に知財財産戦略を位置づけことは必須と考える。


以上

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