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平成の詩 ふたつ: ユリイカ篇

実は、最初西日本新聞のために平成の詩を書いたとき、とんでもない間違いをおかしてしまった。行数と段落数を勘違い(!)して、指定された分量の三倍ほど書いてしまったのだ。書き上げる直前に気がついて、青くなった。駄目だろうとは思いつつ、暗澹たる気持ちで最後の数行を書き上げて、担当のデスクに事情を話したら、案の定「絶対無理」という返事。

仕方なく一から書き直したのが、前篇で紹介した「平成を脱ぎ捨てて」である。最初の長過ぎる作品は「平成の父子」というタイトルだった。昭和天皇が「ご崩御」されて、平成が始まった瞬間に福岡市の実家を出発した父と僕が、その後30年かけて、家の下にある「焼肉ウェスト土井店」まで歩いてゆくという話。実際僕が帰国するたびに、父はそこへ僕を連れてゆくのだ。

自分でも好きな作品に仕上がったと思うし、なによりも活字になったところを父に見せてやりたかった。あの焼肉屋が詩になって、日本全国に配られたと知ったら、さぞや驚くことだろう。

そこで図々しくも雑誌「ユリイカ」に持ち込んだところ、ぎりぎり4月号の締切に間に合って、このたび晴れて掲載の運びとなった。3月28日の発売だそうだから、いまちょうど書店に並んでいるはずである。機会があればぜひ手に取ってごらんください。

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