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痴漢をしたと疑われたあの日。

私は痴漢を働いたと疑われ、なんと自宅まで刑事がやってきた経験があります。私は痴漢をしていないにも関わらず、今思えばひどい経験をしたのでちょっと書き記します。

ピンポーン

私が20歳頃のこと、日曜日の午後母と私の二人で自宅の団地にいたところ、ピンポーンと呼び鈴が鳴りました。母が出て、そして間もなく私を呼びに部屋に来ました。母曰く「警察の人が来てるわよ」と。

ドアまで行ってみると男性が二人。警察官ではなく刑事のようです。

「ご同行願えますか?」といきなり言われ、団地住まいですし、うちのドアのすぐ向かいにお隣さんのドア。そこで詳しい話をというわけにも行かず、団地の4階から階段で刑事と共に下に降りました。

そこには刑事の乗ってきた車が置いてあり、私は後部座席に乗るよう促され、言われるままに車に乗り込みました。

車の中で刑事から聞かされた話はこうでした。

私の妹の自転車を盗難した人間が痴漢を働いた、と。

そして妹の自転車には私たちの住所と妹の氏名が書かれており、その兄である私が真っ先に容疑をかけられたようです。兄である私が妹の自転車を使って、痴漢を働き自転車を置き去りにした。そんなストーリーだったようです。まぁ妹の名前と住所が書いてある自転車を使って痴漢をするってあまり考えられないことだとは思いますが。

行先は校庭

私の乗った車の行先は近くの小学校の校庭でした。そこから先刑事から細かい説明があったかどうか記憶にないのですが、とにもかくにも車は校庭に入っていきました。

そして、なんと、そこには50人ほどの大人、そして小学生くらいの子どもたちが入り混じって私の乗っている車を見つめているではありませんか?

えっ?これってひょっとして面通しってやつ?

そして車はそのギャラリーから10m程離れたところで停車しました。車のガラス越しとは言え私の顔はその50人ほどの人々に丸見えです。

そしてギャラリーをよく見ると真ん中あたりに小学校2,3年くらいの少女がこちらをじっと見て、そして首を横に振っているのが見えました。彼女は私の顔を見て「痴漢したのはこの人じゃない」と否定していたのが仕草でわかりました。

安堵もなにも、私は痴漢をしたわけではないので当然といえば当然。

そして車は私の自宅に向かい、私は解放されました。
家に入ると母が青ざめて
「あんたが何かしでかしたのかと思って観念してた」
というではありませんか。
それも無理のない話です。私は母に今私に起こったことを説明し、母は安心してくれました。

面通しってこんなもん?

これは私がまだ若かったずーっと昔の話です。とは言え思い出すととても腹が立つんです。今でも。

私がもし犯人じゃなかったとした場合のプライバシーやらはどう考えられていたのか。自宅から遠くの小学校に連れていかれたわけではありません。近所の学校です。

それよりなにより、被害にあった女の子に顔を見られるのは致し方ないとして、その他大勢に私が顔をさらさなければならなかったのでしょうか?

そして、もうひとつ、私は首を横に振る被害にあった少女の顔を、チラッとですが見ています。通っているであろう学校も私が連れて行かれたところでしょう。
私がこの経験で復讐心を燃やし、この少女を探し出して何らかの嫌がらせをする可能性も考えられなくはありません。

アメリカ映画などで見ていた一方的にしか透視できないガラス越しの、面通しとはまるで異なる出来事でした。

国家権力

こういう警察とか刑事とかと関わることになると、場合によってはこちらの意思とは関係なくものごとが運んでいきます。

これが国家権力なんだよな、とつくづく思います。

もしあの時、あの少女の勘違いとか、あるいは私が犯人に似ているとかの理由で、首を縦に振っていたら私はどうなっていたのでしょうか???



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