北欧旅12【Visby , ゴットランド島】
夕方、ストックホルム中央駅から高速バスに乗り港へ。バルト海の中央に浮かぶゴットランド島行きのフェリーに乗ったのは、日没間近の時間だった。3時間かけて、VIsbyの港に着岸したのは日付の変わる直前だった。
暗闇の中、冷たい風が吹く石畳の暗い路地をスーツケースを押して、真夜中のホテルにチェックインを済ませると、疲れ切ってそのまま就寝。
翌朝、部屋のカーテンを開けるとそこは、アニメ「魔女の宅急便」の世界だった。
北欧バルト海の短い夏のリゾートに訪れる目的以外では、宮崎駿作品の熱烈なファン、あるいはタルコフスキーの「サクリファイス」撮影ロケ地めぐりやイングマール・ベルイマンが晩年を過ごしたフォーレ島目当てで来島する映画ファンの日本人観光客がほとんどの中、私たち夫婦は、島で暮らす唯一の”日本人大学院生”である娘に会うために訪れた。
「ウプサラ大学」という、ひどい二日酔いの寝起きを連想させるような微妙な響きの校名をもつ大学で、世界中から集まった留学生たちと「持続可能な地域開発」のコースに籍を置きながら、最近は文化人類学にも惹かれているらしい彼女の将来は、まったくよくわからない。
ただ、ホウキに乗れるようになる訳でも、ましてや魔女になれるわけでないことだけはわかっている。
中世ハンザ同盟の時代に形成された、中心市街地Visbyの城塞都市は、世界遺産にもなっている北欧観光の名所。実は、この島で一日だけ過ごしたら、親子でヘルシンキに向かう予定だったが、予約していたスカンジナビア航空が、まさかのストを続行したので、結局この島で3日間を過ごす羽目になった。
といっても、家族3人そろって風邪を引いて体調を崩してしまった上、天気までも崩れて、雨は最終日には季節外れの降雪にまですすみ、島の観光も名所巡りもできなかったが、Visbyの町並みはどこをどう切り取っても絵になることだけはわかった。