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【税金から逃れる大企業】

「脱税の世界史」
著者:大村大次郎 (元国税調査官)


-結論-
①税金とは国vs富裕層の歴史
②タックスヘイブンとは、「税金」(Tax)を「回避する」(Haven)するという意味。
③中国は今、一帯一路構想の要所として新たなタックスヘイブンを作っている。


①税金とは国vs富裕層の歴史

•ローマ帝国は税金で滅びていった。
(国が大きくなり過ぎて、富裕層に徴税の特権を売った、特権を買った富裕層はガンガン庶民から搾取し、不満が募り、腐敗した。)
•フランス革命も税金が原因で引き起こされた。
(教会の「十分の一税」(※1) により、庶民の不満が溜まり、フランス革命に発展)
•ロスチャイルド家が繁栄した当時は、所得税がなかった。
累進課税(所得が多ければ多いほど税率が上がる仕組み。)もなかった。
又、相続税も少なかった。
その後所得税と相続税が跳ね上がり、
ロスチャイルド家は城のような豪邸を国や大学に寄付しなければいけなくなってしまった。


国家は税金を富裕層から上手く取れないと滅びる。
逆に国家が税金を上手く取ると、富裕層が滅びる。


国家は税金をどこから取るか、どのように取るか、そしてどのように使うかによって存続が左右されてきた。

そして我々国民は、次の選挙でそれを見極めなくてはならない。
誰のための増税、減税なのか。

源泉徴収(給料をもらう前に税金を天引き)の仕組みはナチス•ドイツが作った。
1940年 同盟国だった日本は源泉徴収制度を採用。

徴税のコストがかからない。→国のメリット
納税の手間がかからない。→国民のメリット
当時は画期的でかなり支持を集めた。

だが、給料をもらう前に天引きされるので、税金を納めている感覚がなくなる。
→増税しやすい。


★そして今… 
消費増税(収入が少ないほど、負担が重くなる)
と法人減税(戦時中は50%で今は20〜30%)
が進んでいる。

つまり、ローマ帝国やフランス革命の頃のように富裕層を優遇し、庶民の生活を圧迫するような徴税スタイルになっている日本はかなり危険な状態。


②タックスヘイブンとは、「税金」(Tax)を「回避する」(Haven)するという意。

そして富裕層を優遇されている問題については、法人税が下がっているだけではない。

それが、大企業とタックス•ヘイブン(租税回避地)の関係性。(※2)

「非常に税金の安い国に子会社、もしくは本社を置く」という上手く法律を利用した逃税方法だが、問題視されている。

例:アメリカに本社があるが、ヴァージン諸島にある子会社に売上を全部渡してしまう。
すると、アメリカは本来とれるはずだった税金が取れずに国益を損じる。
企業は、税金が少ないので利益を多く残せる。


★イギリス発祥
なので元イギリス植民地の国はタックスヘイブンの国が多い。
(香港、南アフリカ)

★なぜタックスヘイブンができたか?
イギリスは南アフリカを開発したかったので、企業の税金を下げたのが始まり。
すると、イギリス本土に本社がある会社が南アフリカの子会社で利益を計上し始めた。
イギリスはそれを取り締まったが、
今度は”本社”を南アフリカに置き始めた。
イギリスはそれも取り締まろうとしたが、逆にこれを利用しようと考えた。
いうても植民地なので、最終的には税金は入ってくるし、
むしろ国外の大企業を誘致すれば、少ないとはいえ税金は搾取できるから
儲かる!商売になるぞ!とタックスヘイブンの旨味に気づく。
いろいろな植民地の税を低いままにしておいて、各国大企業を誘致して儲けた。

★もう一つの個性ー超秘密主義 
発祥はスイス銀行。中立国であるスイスは秘密保持法で個人口座を徹底的に守り、各国の要人、富裕層の隠し財産が流れた。
タックスヘイブンはこれを採用。
税金から逃れるつつ、所得や財産を隠すことがが出来た。

低税率&秘密口座という2つの個性を合わせ持つビジネス

★パナマ文書
そして2015年、秘密口座の情報が流出した。

パナマはカリブ海にある島。
パナマもタックスヘイブンだった。
北米と南米を結ぶ島であり、アメリカとヨーロッパを繋ぐ航路だったので、
カリブ海はマネーロンダリングと密接に関わってきた。
政府要人やマフィア、大企業、つまり富裕層のお金を上手く隠していた。

南ドイツ新聞社に何者かによって流出。
その中には、プーチン大統領、キャメロン元首相など衝撃の名前があった。
(プーチンは大統領になった時に、財閥に対して脱税だ!と厳しく取締り、逃税をしている大企業を潰して国民から指示された。)

世界の要人たちがこの流出により失脚した。

★GAFAの逃税
アップル
「ダブルアイリッシュwithダッチ•サンドイッチ」
共同開発をしている他国の企業とは利益を分けていい。というアメリカの法を利用した。
アイルランドに2つの子会社とオランダとヴァージン諸島に子会社をおいて複雑化。
2600億円の逃税に成功。 

アマゾン
アマゾン•ジャパンが日本に税金を納めていないと問題に。
利益はアメリカ本社に吸い上げられていた。

そこを日本側は指摘するが、
アマゾンはアメリカにはそこそこ税金を納めているので、日本に払ったら二重課税になると反論。
そして後は、アメリカ−日本で話し合ってください。と

そこで弊害になるのが
日米租税条約 (不平等条約)

例:野球の助っ人外国人はアメリカに税金を払う。
日本のメジャーリーガーはアメリカに税金を払う。

アマゾンは日本が税に関してアメリカに何も言えないことを知っていた。

更にアマゾンは、アイルランドとルクセンブルクの2つのタックスヘイブンに子会社を置き、
アメリカ以外の国での売上を集中させている。
アメリカは世界で売り上げた分の税金も徴収したいが、”公正に納めろ”と言ったら、全世界にアマゾンの税金が流れてしまう。かと言って自分にだけ納めろ!とは言いにくい。

そしてEUはデジタル課税を作った。
GAFAなどのデジタルプラットフォームの会社狙い撃ちの徴税の仕組み。
アメリカは反対。
しかし、アイルランドも反対している。(タックスヘイブンだから)

つまりタックスヘイブンというのは、世界的に問題なのだが、
世界の強い国がそれぞれ部分的に利益を得て、少しずつ甘い蜜を吸っているため、なくならない。


③中国は今、一帯一路構想の要所として新たなタックスヘイブンを作っている。

★中国のタックスヘイブン(経済特区)
法人税を大幅に引き下げることにより、海外企業を誘致した。
イギリスのタックスヘイブンとの違いは、本国に誘致している点。
誘致された企業は、中国の広大な土地に工場を構え、安い賃金の労働力を使うことが出来て、更に法人税が低い!

★中国の仕掛けた罠
しかし中国は、上記の好条件で子会社を作る海外企業に対して、もう一つ悪魔的な仕掛けを作った。
それが中国との合弁会社であること。
その罠にかかったのが東芝である。
合弁会社にすることにより中国は東芝の技術を堂々と学び盗むとこが出来た。
そして共同で開発していた中国の”美的集団”という企業が、東芝の「白物家電事業」を買収した。

つまり、タックスヘイブンで海外企業を呼び込んで、技術を吸収して、最終的には事業ごと飲み込んでしまう。

★新たなタックスヘイブン•ホルゴス
更に中国は今、一帯一路構想(※3)の要所として新たなタックスヘイブンを作っている。
場所は新疆ウイグル自治区のホルゴス。中国とカザフスタンの国境地点。
そこにカザフスタンと共同で街を作って、海外企業を誘致して
一帯一路の最重要中継地点にしようとしている。
なんと5年間 法人税無税、所得税も無税である。
とんでもないことが始まっている。



※1…所得の十分の一の寄付を募っていたが、それが教会によって義務化された。

※2…タックスヘイブンでは、利子や配当に対する税金、法人税や所得税がまったくかからないか、税率が極めて低い。

代表的なタックスヘイブンは、バハマ、バージン諸島、クック諸島など。
これらの島国では有力な産業が育ちにくいため、
税金を下げて企業を誘致することに力を入れてきた。
世界中から企業の設立が相次ぎ、
さらには富裕層が税金対策のために資産を移すようになった。

最も大きな問題は、本来、莫大な税収を得られるはずだった国にとってはマイナスになってしまうことで、
富裕層がペーパーカンパニーをタックスヘイブンに設立して自分の資産を移してしまうケース。
税金の制度はその国の政府が自由に決めれるので、どんな税率であろうと非難されるいわれはない。
しかし、現実的に他国に対して不利益を及ぼす存在になっているのも事実。

※3…中国から陸路を通って、ヨーロッパに繋がる一大経済圏を作るという目論み。

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