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アダビト後藤颯太さんに聞く、エンタメスタートアップの資金調達事情👀

以前インタビューさせて頂いた、キャラクタータレント事務所「Simple Side Mascots(シンプルサイドマスコッツ:略称サイマス)」を運営するアダビトが資金調達を公表しました。

【TikTokキャラ部門日本一タレント所属】SNS発キャラクター企業の株式会社アダビトが資金調達を実施

2022年7月5日

今回は、その資金調達についてお話を伺いました!前半では、エンタメ領域のスタートアップの資金調達事情やアダビト代表取締役CEO後藤さんが考えていることについて。後半では、今回の資金調達を踏まえてアダビトが目指していることや今後について伺いました。

後藤さんがキャラクタービジネスを展開する中で考えていることや感じていることは、今後資金調達を検討しているエンタメ起業家の皆さんやエンタメ業界で働いている方、これから働こうと考えている方にとって、参考になること間違いなしです!

それでは、インタビュー内容へどうぞ!


早速ですが、資金調達についてお伺いさせて下さい。後藤さんが考える、エンタメ領域のスタートアップがベンチャーキャピタル(以下VC)から資金調達するメリットは何でしょうか?

メリットは「実態より大きなお金が使えること」「支援いただいた方々のコネクション・知見を借りられる」の2つだと考えています。

「実態より大きなお金が使えること」については、ビジネスの基本は売上が立って、そこで出た利益を再投資に回すということだと思いますが、投資を受ける事で、自分たちが今持っているリソースよりも多くのものを作品作りに使うことができるというのがすごいメリットだと思っています。

「支援いただいた方々のコネクション・知見を借りられる」については、今後大きな会社さんや幅広い会社さんとお仕事する上で、僕らだけでは難しい場合でも、お繋ぎ頂くことでご一緒できるようになるところが魅力的だと思っています。またこれはVCさんではないですが、近い領域や似たような事業に取り組む会社さんやそのコーポレートベンチャーキャピタル(以下CVC)さんから調達すると、一緒にできることがあったり、組織作りについても学ばせてもらえます。

反対にデメリットだと考えることはありますか?

デメリットで言うと、経営側と投資家側との時間軸のズレから生じる問題はあるかもしれません。

キャラクタービジネスでは、30年程の長い期間やり続けるという前提がすごく大事だと考えています。例えば、今10代20代の若い方に人気があるキャラクターが、30年後もその方々に愛されているとすると、次は自分の好きなそのキャラクターのグッズを子供・孫に買うという形で世代が回り、キャラクターの寿命が伸びていきます。なのでキャラクターを本気でハローキティとか、アンパンマンとかの規模にまで成長させようと思うと30年やる必要があると考えています。しかし、VCさんによっては、短期間でどれだけ売上を伸ばせるのかを求められる事もあり、キャラクターを消費しすぎないフィット感や期待値を合わせていかないと、しんどいなと感じています。

ただ、コミュニケーションを事前にちゃんと取った上で合意をいただけた方、例えば、売上目標と実際の売上の差分をどう見るのかという議論をした時に「努力をしていないわけじゃなくて、そのキャラクターの価値が目減りしたり、お客さんに購買を押し付ける形になるのであえてしませんでした。でも、数年の軸で見たら売上は伸びます。」という対話をできる方に出資いただければ、そのデメリットは解消できるかなと思っています。

時間軸の他にも、スタートアップ側と投資家側でコンテンツや、事業の展開の仕方で考え方が違う部分があると思うのですが、今回その点についてはどういう風にクリアしていきましたか?

色々お話を聞いて自分たちの考え方を切り替えたところもあったんですけど、今言ってたような、自分たちのやりたいこととか、成長ストーリーは大きく変わっていないです。

分かりやすい例で言うと、投資家さんからよく言われたのは「あさみみちゃんが当たったんだから、あさみみちゃんで行け、リソースもあさみみちゃんに全部使え」みたいな話です。ただ、僕たちはキャラクターを何体も作って、サンリオさんとか、サンエックスさん、ディズニーさんみたいに箱で認知、応援していただけるような企業になることが目標なので、そこに合意していただけるかは大事にしています。

一方で、売上の立て方の考え方などは、投資家さんと話を煮詰めていきました。前提として、キャラクターは水物だと思われていて、不利な調達環境だと思っていたので、たくさんの投資家さんを回って対話をしていましたね。

あと「コンテンツに対しての考え方」で言うと、どういうことをやればキャラクターが当たるのかを僕が説明しても、それに必ず納得していただくのは難しいと思っていたので、そこに過度な期待はせずに、企業として、ちゃんとリターンをお返しできるようなものになるためにはどうすればいいのかという話を中心にしていた記憶があります。

SaaS企業や、他業界のスタートアップとは異なる論点もあると思うのですが、今回はどういった質問や議論がありましたか?

「再現性」のところと、あとは「キャラクターがどのくらい売上を出すのか」の2個が多かった気がします。

ただ大当たりするキャラクターを作るための再現性に関しては、歴史が証明している通り、僕は無理だと思っています。一方で、中ヒットまでならある程度まで再現可能だと思っています。あくまで僕の持論ですが、キャラクターは運用に全てが宿ると思っていて、僕たちは今までのキャラクター会社さんと違って、デジタルが前提なので、お客さんに近い距離でキャラクターを育てていけるということを、投資家さんに話していました。

あとは、大ヒットが科学できないと言っても、作り続けていく中で、いいものをどれだけ作れる組織なのか、という所にいわゆる再現性の種が宿るなと思っています。

そして、いいものを作れる組織であると言うために、必要な力が3つあると思っています。1つ目はアニメーションや、キャラクターを制作する制作力、プロダクトの開発力です。2つ目は、メディアにフィットできる力です。時流を見極める力もそうですし、自分達で、SNSやメディアなどの見てもらえる場所を作り出せる力も重要です。3つ目が、展開力で、当たったキャラクターをどうやって伸ばしていけるかという力です。この3つがあれば再現性のある組織だっていう風に言えるので、この3つに対して、どのフェイズでどの段階までできていればいいかと、次のフェイズまでどこをやるのかって話をすごいしましたね。

他に見られていたなと思うのは、「後藤はどんだけやれるのか」ということです。これまで言ってきた事がどれだけ実現できたのか、約束を守ってきたのかという実行力とか、僕自信がめちゃくちゃ働いてるという事実、あとは、後藤がキャラクター作りにコミットするという前提であれば良い、という話もあったので「結局お前はどんだけやるの?」ということが見られていたと感じています。加えて、どういうチームを作るのか、それに合う人材をどう獲得するのかという話を中心に聞かれました。

例えば、こういう株主構成にしたいなど、事前に考えてたことがあればお聞きしたいです。

そうですね、1番事前に考えていたのは、僕らが足りないものを補ってくれる会社さんだといいなと思っていました。まだまだ解像度が低いと感じていたことが、上場を目指していく上で、どう組織を作ってくのか、その組織に対してどうさっき言った再現性を宿らせるかという事で、上手く組織作りができていたり、そこの支援ができる会社さんでかつ、僕らに近い領域の方々に入っていただくことが必須だなと思っていました。

あとは展開力の観点です。エンタメ業界だと特殊な商慣習があることが多くて、大きく分けると、ライセンス系の商慣習と、タイアップ・プロモーション系の商慣習の2個があります。いろんな方と話す中で、ライセンスについては僕が情報収集すればある程度の商習慣は握れることが分かってきました。ただ、タイアップ・プロモーションについては、メディアの種類がどんどん増えてきていたり、メディアの状況によって単価感も、頼めるところも変わってくるなど、変動が激しいので、実際に目の前でやられてる業者さんからいち早く情報を仕入れた方が早いなと感じました。なので、そうした領域に詳しい方に入っていただきたいという想いがありました。

まとめると、「組織について」と、「エンタメならではの商慣習、特にタイアップ・プロモーションについて」に強い会社さんに、リアルタイムで話を聞ける環境があった方がいいなという狙いがありました。

事前に考えていたという点だと、早めの段階からCVCさんとお話をされてると思っていて、どういうところと協業していきたいか、どういう内容で協業をしたいなど、具体的なイメージを持ってお話をされていたんですか?

ほんわか思っていたのは、できればアニメ・出版・ゲームですね。これらのどれかを持っていたらめちゃくちゃありがたいなと思っていました。

アニメでいうと、莫大なお金が必要なので、バジェットごと一緒にやれる会社さんだったらかなり効率がいいなと思っていましたし、出版に関しては全国に一気に流通できて、マスコットキャラクターでゲームをやるっていうのは王道な戦略かつ、ヒットの確度が高い、けど自社で開発をしようと思ったら大変なので、一緒に作ってどっちも儲かるっていうストーリーは双方にとってすごくいいので、そのあたりを考えていましたね。

資金調達を進める中で感じたことや、気づきがあれば教えてください。

2個あって、1つ目は、ファイナンスをやりながら、業界の先輩方に「ファイナンスも含めてどういう感じでやってたんですか?」っていう話を聞いたことです。これをやったことでストーリーの作り方や商慣習の部分、実際に必要な株主としていてくれたらありがたい方々といったところの解像度がすごい上がったので良かったです。

もう1つは普通の話ですが、起業家の調子とトラクションがマックスで、状況が1番いい時に投資家さんの所に当たれるかという、スケジューリングは大事だなとめちゃくちゃ思いました。

調達するメリットと重複する面もあると思うんですが、事業として、VCを入れてスタートアップ的な成長させたいと思っている要因や、どういう野望を持って、事業を築いていきたいと思っていますか?

そうですね、僕は結構飽き性なので、とにかく早くやりたい。でもキャラクターは大切に育てなきゃいけないということも分かっているので、作り出すところを早く、育てるところは長く、というのが理想の状態だと考えています。作り出すところを早くとなると当然リスクがあって、キャラクターを当てて、売上が上がって、それを再投資するってやると時間がかかるので、お金を入れて組織を拡大し、新規キャラクター開発や展開のスピード感を上げてくという、「打席に立てる回数を増やせる」のはいいなと思います。やはり会社として早く遠くへ行きたいっていうのがあるので。

ここから今後の展開などについて話を伺えればと思います。プレスリリースの中で記載されている①〜⑤といった取り組みを通じて実現したいことは何ですか?

アダビトのプレスリリースを引用

まず、いま芽が出たキャラクターが、今SNSの一部の若い層に人気があるという状態なので、年齢層も含めて認知の拡大をしていき、その方々のファン度というか深度を深くしていく、という2つを同時に進めていき、日本で1番人気のキャラクターになるべく短い時間で、できれば2~3年で、したいと思っています。それを達成するために全国展開をしていくというのがかなり短期的な話です。

組織の話で言うと「TikTok発とか、SNS発のキャラクター会社ってどこですか?最近一番勢いがあるキャラクター会社ってどこですか?」という問いに対して「アダビトだよね!」って言われたいと思っています。そのためにはキャラクター1体のヒットだけではダメで、複数のヒットキャラクターで「箱」として、僕らで言うと「サイマス」として人気のある状態を作る必要があり、新キャラをどんどん作っていける体制を作るという意味で、5番目を書いています。

組織面の話を聞かせて下さい。これから組織を拡大するにあたってどんな方々を増やしていきたいですか?また、募集している職種で大事だと思ってることはありますか?

イラストレーターさんの採用を進めるのと、経営幹部です。サイマスの事業サイドとか、ライセンシングも含めて経営サイドを見ることができる人を採用していくイメージです。

大事にしていることについて、これは全員に言えることですが、カルチャーガイドに書いているような、ファンの皆様に対してや、チームの皆に対しての向き合い方がある程度一致している方に来ていただきたいなと思っています。僕らはカルチャーフィットというか、うちの会社、社風に合ってるかをすごく大事にしているので。

職種ごとの話で言うと、イラストレーターさんには「自己開示」ができる人を求めています。僕らは現在「ヒットとブームを作ろう」をテーマにしています。ヒットを出したいと言うと「猛烈にやる!」とか「自分のやりたいことをめっちゃ出す!」というような自己開示の仕方のイメージになりがちですが、むしろ僕たちは、お客さまの方を向いて、お客さまに深く刺さるもの、見ていていいなと思うものを純粋に作りに行くための第一歩として、自己開示をちゃんとしてもらいたいなと考えています。

自分の本当に思ってることとか、弱い分とか駄目な部分、超青臭い部分みたいなものをピュアに出さないと、リアリティがなくてお客さまに刺さらない時代なので、それを自分の作品として昇華できるかはとても大事で、作品や組織内で自己開示をちゃんとできる方っていうのは重要視していますね。あとはシンプルに熱量がないとだめなので、そこですね。

ライセンスの方も当然ヒットを出すところは大事なんですけど、「わかってるよね」という人を求めています。ここで言ってるのは、商慣習が分かってるというよりは、キャラクター系だと、1発アウト案件があったりするので、その場その場で適切なコミュニケーションや動きを取れる方っていうのが1番重要ですね。

例えば「組んじゃったらアウト」や「そういう見せ方しちゃうとアウト」とか。その時に「そこまで踏み込むとやばそうだな、1回社内で揉んだ方がいいから、ちょっと1回検討します」って言えるかどうか。「このスケジュールや、この座組みだと多分あのイラストレーターさんだとキツそうだから、ここは長めに見積もって言っておこう」みたいな、そういう駆け引き的なことがすごく大事なので、地頭が良いと言うか、分かってる方が、経験よりも大事かなと思っています。これも経験なのかもしれないですが(笑)あとはもちろん熱量ですね。このキャラクターを絶対広めたいんだっていう。うちのキャラクター好きだったら最高ですね。

資金調達されてる時からそうしたチームビルディングに対して意識されてたと思うんですけど、どういうチームを作っていきたいですか?

この1〜2年でいうと、やっぱりものを作れる方々を採用したいので、イラストレーターさんが僕と一緒にやるっていうのを中心にしながら、ちゃんとものを作り続けられる会社にしていきたいと思っています。ただもう一方で意識して、動き続けたいなと思うのは、上場に向けたチーム作りですね。そのため上場に足りうる経営幹部っていうところの採用、ないし社内で一緒に働いてみて、そこから上がってくるなども含めて、売上をちゃんと作れる、いわゆる「事業計画必達パーソン」みたいな方と、経営管理的な、財務や会社の整備をちゃんとできる方、組織面や人事面で守らないきゃいけないことをちゃんと守れる方の3人が会社に必要だと思っています。なので普通の会社と一緒なんですけど、探し続けたいですし、社内でいい方がいたら、経営幹部になってる可能性が高いなと思っています。

アダビトさんに興味がある場合、気軽にご連絡しても良いんでしょうか?

アダビトのWantedlyを引用

もちろん気軽にご連絡していただければなと思っています。特にイラストレーターさんに関しては「今転職する気がない」や「今学生さんとか進路迷ってる」、「私はイラストレーションでは飯食っていけないから、ゲーム業界に転職とか就職活動します」という方が結構いると感じています。また1回話をさせてもらって、その方がうちの会社に合って活躍してくださる方もいるかもしれないっていうのは常に思ってるので、そういう意味で気軽にして欲しいです。

あとはエンターテインメント企業で働いてるよとか、会社をやっているよみたいな人とも気軽に話したいですね。情報交換して苦労を分かち合いたいです(笑)

ご用件に合わせて、下記からご連絡下さい。
Wantedly(採用情報はこちらのnote「アダビト募集ポジションまとめ」からもご覧いただけます。)
お問合せフォーム
後藤さんのTwitter


以下、編集者あとがき

今回は、以前にもお話をお伺いさせていただいたアダビトの後藤さんに、先般実施された資金調達について深掘りさせていただきました。

再現性を提示するのが難しいとされるキャラクタービジネスにおいて、アダビトならではのロジックで再現性を明示されている点は、特に参考になりました。また、ヒットしたキャラクターを短期間で消費させようとする投資家とは組みたくないというお話から、キャラクターを生んだ者としての親心と、足元のお金に飛びつかず、長い目で利益を考える起業家としての意志を感じました。

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