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星降る夜のセレナーデ 第51話 知られざる過去

「社長から七海優《ナナミユウ》さんの……いえ、美夜子さんの活躍を聞きました」

「また適当な事を言ってるんでしょう?」

「いえ、プリズムのセンターで、とても歌が上手くて人気も凄かったと聞いています。正美さんとマリさんが両サイドで歌っているビデオを見せてもらいました、とても感動しました」

「えっ!まだそんな物が残ってるの?」

「マリさんが急に結婚する事になり、正美さんも辞める事になり優……美夜子さんだけソロで再出発する事になってたんですよね?」

「社長は何でもベラベラ喋るのね、忘れたわ、そんな古い話は……」

「私は歌手になりたくて北海道から出て来ました。でもなかなか目が出ないので正美さんのお店で働かせていただいてます」

「そうなの、だから正美が奥歯に物が挟まったような言い方だったのね」私は少しだけ事情が分かった。

「是非白河先生に曲を作って頂きたいんです」彼女は拳を握り締め唇を噛んだ。

「私とパパが事務所を辞めた理由は聞いたの?」

「詳しくは聞いていません、ただ……再デビューの曲で意見が合わなかったと言ってました」

「ふ〜ん…………言い方も色々とあるものね」私はかなりイラッとした。

「おそらくパパは…………」その時パパがスタジオから出て来る。

「真美ちゃんごめんね、真人くんは仕事熱心だからさあ」ニコニコと話してる。

私の表情を見ると、少し不思議そうな顔をした。

「どうしたの?」

「彼女は貴方に曲を作って欲しいんだって、今スフィンクスで歌手として活動してるらしいわよ」

パパの顔から笑顔がスーッと消えた。

「えっ?歌手を目指してるとは聞いてたけど、スフィンクスにいるの?」

「はい…………」彼女は俯く。

「悪いけど話は聞かなかった事にしてくれるかな」パパはスタジオへ戻ろうとした。

「ねえ、少し気になったんだけど、貴方は高瀬って言ったわよね、正美と苗字が同じだけど何か関係があるの?」

「はい、正美さんは私の叔母です」俯いたまま答えた。

パパはスタジオへ入ろうとしたがそれを聞いて戻って来る。

「そうか、正美さんの身内か………………しかし…………」パパは髪をかき上げ考えている。

「何方にせよ今はとても忙しいんだよ、だから曲を作るのは難しいなあ………それに歌物は最近作った事がないし」

「そうですよね、突然来て虫のいい話だと思います。すみませんでした」彼女は寂しそうな表情で頭を下げた。

「正美さんの身内なら無碍《むげ》に断る事もできない、でもしばらく考えさせてよ」パパはそう言ってスタジオへ戻って行った。

「すみません、ご迷惑な話をさせて頂いて」彼女はポトリと涙を落とした。

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