星降る夜のセレナーデ 第104話 記念日
道の駅で食事をしてダムへ向かった。トンネルを抜けると美しい山間にダム湖が見える。車を止めて志音ちゃんと散歩する。
「志音ちゃん、いつもこんな所でごめんね、俺お洒落なところとか知らないから」
「ううん、志音は2人でいられるところが好き」微笑んで俺を見ている。
紺碧の水が日の光でキラキラと輝いている。
「綺麗だね……………」志音ちゃんは輝く水面を見ている。
2人で辺りを散歩する。出発が遅かったので、ゆっくりと日が翳った。
「モヒくん、少し寒い」志音ちゃんは俺を見た。
俺は志音ちゃんの肩を抱き寄せる。
しばらくすると、志音ちゃんは立ち止まる。そしてゆっくりと腕に抱きついた。
俺は片方の腕を回し志音ちゃんの頭を優しく撫でる。
志音ちゃんは俺を見上げると、「モヒくん…………」そう言ってじっと見つめた後ゆっくりと目を閉じた。
俺はまるで操られるように、そっと志音ちゃんの唇へキスをした。
「……………………………」
駐車場へ戻り車を走らせる。俺は何を話したらいいか分からない。しかしもう後戻りは出来ないと思った。
「青い湖、そしてひな祭りの歌、今日はとっても良い日になっちゃった」志音ちゃんはニッコリしている。
「俺もそう思うよ」
志音ちゃんは俺の肩に頭を寄せて持たれた。
「志音はもっと大人になってモヒくんに寄り添いたい」
「俺も志音ちゃんを大切に思っているよ」
「モヒくんに出会えて良かった」ニッコリしている。
「俺もだよ」優しく微笑んだ。
俺の心はホカホカと温かい気持ちで溢れた。
志音ちゃんを送り届け、自分の部屋へ帰って来た。
ベッドに横になると、心臓がドキドキする。
志音ちゃんが俺をじっと見つめた目、そしてゆっくりと閉じられていく様子が浮かんでくる。とても綺麗だった、子供ではない、しかし大人でもない、でもとても魅力的だ。これまでに感じた事のない不思議な感触だ。これは愛なんだろうか?
ただ寝返りを繰り返す。結局朝まで寝る事ができなかった。
翌朝ログハウスへ出社すると志音ちゃんも眠そうに学校へ行った。
「真人くん、眠そうね」美夜子さんが微笑んでいる。
俺は見透かされてるような気がして少し項垂れる。
「ここの所忙しいからなあ、大丈夫かい真人くん」先生が心配そうに俺を見ている。
「だ、大丈夫です……………」拳を握り元気をアピールした。
「じゃあ今日も頑張ろう!」
「はい!」
先生とスタジオへ向かう。美夜子さんは含み笑いをしている。
俺は背中に汗をかいた。
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