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隠れ家の不良美少女 34 打ち上げ

数日後、オフィスでドームイベントの運営マニュアルを制作していた。
「一瀬さん、アート・シンク様からお電話です」未来ちゃんが取り次いでくれる。
「もしもし、アート・シンクの立道です、先日はお忙しい中失礼しました」
「いえ、こちらこそ時間がなくて失礼しました」
「早速なんですが、会社で相談した結果『キナコ』さんの写真を頂けないかと言うご相談なんですが」
「そうですか、ただ私が決断する事は無理です、今週の土曜にサークルの方や『キナコ』ちゃんにも会うのでそれからの返事でよろしいでしょうか?」
「もちろんです、会社に『キナコ』さんに関する問い合わせがかなり多く来てまして、何とか良い方向に進みたいのですが」
「分かりました、その旨は伝えます」
「肝心の予算なんですが、撮影費用に約二十万、本人とサークルのギャラを合わせて三十万程を考えてます、写真は雑誌やイベントなどに活用させて頂きたいと思うのですが、ご検討をよろしくお願いします」
「はい、その旨を伝えて連絡するようにいたします」
「ありがとうございます、『キナコ』さんにくれぐれもよろしくお伝えください」
「了解です、………ふーっ…………」電話を終えてため息をつく。

「どうしたんですか?友希さん」
「キナコの写真が欲しいんだってさ、アート・シンクさんが」俺は両手を広げ手のひらを見せた。
「いきなり仕事のオファーとか凄いですねキナコちゃん」未来ちゃんもビックリしている。
「俺はキナコのマネージャーじゃないっつうの、全く」呆れるそぶりをする。
「でも、友希さん少し嬉しそうですよ」未来ちゃんは上目遣いで見てきた。
「別に喜んでないよ」
「すぐに(仮)を外さないでくださいね」少し睨んだ。

土曜日は天空カフェでコスプレサークルの打ち上げバーベキューがあり、俺も参加した。
希和がいつもお世話になってるので、サークルのみんなにお願いして天空カフェにしたらしい。サークルの四人と元不良少年、幼馴染もいる。
俺と希和はバーベキューの準備をして待っている。
綾乃さんや新君も手伝ってくれた。
一台のワゴン車が入ってきた、不良少年が運転している。
「お待たせ〜」美奈さんが手を振って微笑んだ。
「お疲れ様ですう」希和が挨拶する。
「今日は彼が運転してくれるからお酒が飲めるわ」詩織さんが喜んでいる。
不良君はニコニコと頭をかいた。
バーベキューが始まると、詩織さんが不良君に「早く皆んなにお酒を注いで」と指示している。どうやら、詩織さんに気に入られたらしい。
俺と希和は顔を見合わせてクスッと笑った。

しばらくしてアート・シンクからの話をした。
美奈さんは「うーん」と考え込む。
「実は3誌程、雑誌社から取材の問い合わせが来てるんですよ、サークルの方に」
「え〜!」希和は驚いて何度も瞬きしている。
「サークルのSNSはこれまでフォロワーが8千人くらいだったんですけど、キナコちゃんの画像をアップしてから急激に増えて、今12万人ほどになってるんです」詩織さんが腕を組んで話した。
「え〜!」希和はまた瞬きして驚く。
「友希さん、どうしたらいいと思います?」
「そうだね……どちらにしても希和次第だと思うんだけど……希和はどうしたい?」
「分かんない」舌をだした。
「サークルとしてはどう思います美奈さん?」
「収入があればいろんな事ができるし、いいと思うんですけど、その分大変になって来ますよね」考えている。
「今もメールの問い合わせは放置状態だしね」詩織さんも考えている。
和香ちゃんと芽衣ちゃんは嬉しそうにしている。
「私たち、キナコちゃんのお陰でフアンが増えて嬉しいです、だってサークルのSNSから私たちのところへも来れるから、沢山の人たちが来てくれるようになったし」二人とも喜んでいる。

「メールは対応が大変だなあ」希和が考え込むと、幼馴染君が手を上げた。
「僕で良かったら手伝わせてください!」
「そうか、優斗がやってくれたらいいじゃん、美奈さん、優斗に指示してください、そしたら少しは楽に成るんじゃないですか?」
「そうね、誰かメールの対応をしてくれたらすごく助かるわ」
「やった!私も少し楽になるかも」詩織さんが喜んだ。

「じゃあ仕事を受ける方向でいいのかな、希和?」
「うん、お母さんに衣装代が少しでも支払えたら嬉しいし」嬉しそうだ。

「兄貴!話がまとまったところでビールをどうぞ」不良君が缶ビールを差し出した。
「兄貴はやめてくれよ」俺は眉に皺を寄せる。
それを見てみんな笑った

お開きになり、ワゴン車は帰って行った。
希和は俺に擦り寄ってくる。
「友希さんに出会って良かった」ゆるい笑顔で微笑んだ。

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