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隠れ家の不良美少女 133 結婚披露宴第二部

休憩が終わり第二部が始まる。
新くんと綾乃さんは衣装を着替える為に新郎新婦席にはいない。
一般への配信が始まった。
キナコとプリンちゃんはそれぞれのSNSで結婚式に出ると告知していたので多くの人が見守っている。
ステージのスクリーン端へコメントが映し出された。

『誰の結婚式なの?』
『プリンちゃんが遂に結婚?』
『マサキグループって蒟蒻ゼリーの?』
『キナコちゃんどんなコスプレ?』

様々な疑問が次々に映し出される。
視聴人数が50万人を超えた。

会場からどよめきが起こっている。

「会場の皆様、配信をご覧の皆様、これよりマサキグループの橋口新と神崎綾乃の結婚披露宴を始めさせていただきます、司会の原友里香と申します、宜しくお願いいたします」

「それでは新郎新婦の入場です!」
ファンファーレが鳴り響き照明が煌びやかに点滅する。
動き出したムービングライトの光がステージの中央に集まると、新くんと綾乃さんが現れた。ウエディングマーチが華やかに流れ出す。
綾乃さんは中世ヨーロッパ風のドレスにカラフルなリボンやビーズなどがあしらわれた豪華な衣装で現れる。
新くんはグレーにシルバーの襟が付いたタキシードを着て登場した。
そして一礼すると二人はステージ前の階段を降りて新郎新婦席へ座った。

『綺麗!!誰なの???』
『マサキの御令嬢らしいよ』
『美人だねえ〜』
『蒟蒻ゼリー食べて美人になったの?』

多くのコメントが次々に書き込まれ消えていく。
会場のマサキ社員は何が始まったのか不思議そうにスクリーン見ている。

「それでは新郎、橋口新さんのご紹介です、スクリーンをご覧ください」友里香さんはニッコリ微笑んだ。

ステージ背後の大型スクリーンに穏やかなキラキラと光る海が映し出された。
可愛いイルカのアニメキャラクターが出てきて話し始める。
「みんなここが何処かわかるかな?」
「ここは長崎県の大村湾だよ、私はスナメリのメリーちゃん、この大村湾で暮らしてるんだ」
「穏やかな海だから琴の海と呼ばれていて、真珠の養殖が盛んなんだよ、ほら、あそこに見える果樹園が新くんのふるさとさ」
果樹園で働く新くんの両親と兄夫婦が映し出された。

「小さい頃から釣りが好きだった新くんは、漁師である久隆叔父さんの船にいつも乗っていたんだよ」
「そして漁師になりたいと思ってたんだよ、でもね、叔父さんに本当に好きな事をやりなさいと言われてコンピュータを始めたんだよ」

船の上に立っている久隆叔父さんが映し出される。
「新、元気でやってるか?結婚式には行けないが美味しい大村湾の海の幸をいっぱい送るぞ、カナジャやイイダコ、真珠貝の貝柱も送るから皆さんで食べてくれ、しっかり幸せになるんだぞ」そう言って手を振っている。

「やがて新くんは筑波にある大学でコンピュータプログラムを勉強したんだよ」
大学が映し出され、研究室の野澤教授がニッコリ微笑んだ。
「新くん結婚おめでとう、君の作ったプログラムはとても素晴らしかった。しっかりと評価されて私も嬉しいよ、たまには大学にも顔を出してくれよ、後輩たちのためにも」手を振って微笑んだ。

「見ているみんな、新くんはダイヤモンドみたいにキラキラしてないかも知れない、でも、この大村湾の真珠のように優しい輝きでみんなを幸せにしてくれると思うよ。綾乃ちゃん、新くんを宜しくね」スナメリのメリーちゃんは大村湾に消えて行った。

「皆さんいかがでしたか?新さんの故郷は、穏やかな新さんは琴の海が育てたんですね」友里香さんは映像の終わりを締めくくった。
「さて、それでは新婦である綾乃さんのご紹介です」スクリーンの方に促す。

ほのぼのとした音楽が流れ、幼稚園、小学生、中学生と綾乃さんの写真が映し出された。
会場から『可愛い〜』沢山の声が聞こえる。

音楽が軽快に変わると高峰女子高校が映し出された。
教室の中に担任だった先生やクラスメイトが映し出される。
「綾乃ちゃんご結婚おめでとうございます」みんなが手を振っている。
親友の夏菜さんが嬉しそうに手を振った。
「綾乃!覚えてる、文化祭の模擬店?綾乃が中心になって作った焼きそばやカレーは大好評で、売上の最高記録を出したよね。
あの記録はまだ破られてないんだよ」

「でもさ、他校の男子が行列を作ったのは美味しいからだけじゃ無いよね……そう、綾乃が美人だったからだよ」
会場から「なるほど」と声が聞こえる。

夏菜さんは少し頬を膨らせて言った。
「しかもさ、とても良い人を見つけちゃって、羨ましいぞ!」拳を握り締めた。

クラスメイト達が笑いながら夏菜さんの周りに集まる。
担任だった先生も加わって一斉に呼び掛けた。

「新さん、絶対に綾乃を幸せにしてね、綾乃さんは私達『たかじょ』の誇りだから」
「そして、私達からお二人にプレゼントです、受け取ってね!」

映像が終わると、テンポの良い音楽が流れる。
「たかじょの皆さんがらのプレゼントが届きました!」友里香さんが拍手を促す。

拍手に迎えられ、ステージに高峰女子高校のチアリーディングチームが登場した。
「綾乃さん、新さん、ご結婚おめでとうございます」リーダーの子が宣言するとアクロバティックな演技が始まる。ステージ狭しと演技した。
次々に繰り出される大技に会場から歓声が上がった。

最後にチアの衣装を着た夏菜さんが両手にポンポンを持って出てくる。
「皆さん、御唱和お願いします、フレー、フレー、アヤノ!」
会場は一体となって「フレー、フレー、アヤノ!」「フレー、フレー、アラタ!」声が響き渡った。

「新郎新婦の素晴らしい人柄が伺えますね、それではここで友人代表として新さんの先輩であるお二人に登場していただきます」

新くんの大学の先輩で友人の村上仁《むらかみじん》さんと瑠美《るみ》さんがステージに上がり夫婦漫才のような挨拶をした。

その後も会社の中の映像が流れ、新くんと綾乃さんの頑張っている様子が紹介される。会社の人たちの好意的なインタビューも映された。

スクリーンに新郎新婦席が映し出される。

綾乃さんは新くんに「嬉しいね、みんなにお礼したいわ」少し涙を浮かべて言った。
「そうだね」新くんはゆっくり頷く。

新くんは立ち上がって階段を登りステージに立つ。

タキシードの上着を脱いで、スタッフに渡しリモートを受け取る。

新くんがリモートを操作するとスクリーンに『ありがとう』の文字がふわっと出てきた。

「私はとても感謝しています、ありがとうございます」深く一礼した。

「私は皆様に何かお礼をしたいと思って考えました、私に何ができるのだろう?」
「そして、やはり仕事でお返しするしか無いと思い、あるプロジェクトを計画しました」

「皆さんの幸せをサポートするプロジェクトです、幸せになるために必要なもの、それはやはり健康だと思います、そしてそれプラスやる気、そう思った時にあるアイデアが浮かびました」
「マサキで幸せをサポートする商品を出せないものか、新規開発課とも意見を重ね、ある商品を作りました」
「アミノ酸を多く含むきな粉、そしてカルシウムを含むプリン、その二つを合わせてマサキの技術を活かし、美味しくてヘルシー、しかも程よい甘さで元気が出る食品……」
新くんはステージの後ろへ下がりリモートを押す。
スクリーンに『きな粉プリン』の文字が映し出された。

「見てください、この豊富な栄養素」
スクリーンにはきな粉とプリンに含まれる栄養素が表示された。
「これらの栄養素が皆さんの健康を後押しします、そして程よい甘さと満足感は元気になり、もう一歩踏み出す力をくれます」
「男性なら、もう少しだけやってみよう、そんな気になります」そしてそのもう少しの積み重ねは大きな結果に繋がります。
「女性であれば、健康な肌の色や髪の輝きは美しさに磨きをかけてくれます、そして少しのやる気は心の余裕を生み出し、魅力を高めます」
「健康で輝く女性は天使にも小悪魔にもなれると思います」
「皆さん、頭の中でイメージしてください」
「そんな新商品、キナコ・プリンです」

クラシックな音楽が流れ、照明が煌びやかに光ると、ステージの両サイドから天使のコスプレをした可愛いキナコとセクシーな悪魔のコスプレをしたプリンちゃんが現れた。

「皆さんこんにちは〜、キナコです」
「こんにちは〜プリンです」
「「二人合わせて、キナコプリンで〜す」」
会場はふたりの出現に大歓声が起こった。
スクリーンにはキナコとプリンちゃんのアップが映りその横にはコメントが次々に上がっている。

『♪───O(≧∇≦)O────♪』
『ええ、まさかのキナコプリン!!!』
『今すぐ食べたい!!!』
『そういう事なの』
『二人は知り合い?』

次々に驚きのコメントが上がっている。
視聴人数は更に増え続けた。

新くんは「後はよろしくお願いします」そう言ってステージを降りた。

「皆さん、私達は新さんのアドバイスに助けられました、そして綾乃さんの優しさに癒されました、だからお二人の結婚式と聞いて駆けつけました」
「でも、驚いたわよねキナコプリン、私達が商品名なんて」二人は笑った。
「ねえプリンさん、食べてみたく無い?」
「うん、食べたい!、有るの?」
「実は、試作品が用意されてます、みんな持ってきて」キナコが呼び掛けた。
匠真くんとコスプレサークル雅の子達が様々なコスプレでトレーにきな粉プリンを乗せて登場した。
彼女達はキナコとプリンちゃんに渡すと、会場に降りてきな粉プリンを配った。

「すっごく美味しい!」プリンちゃんが驚いた。
「美味しいね、蒟蒻も入ってるの?」キナコは不思議そうに聞いた。
「これは売れるね」プリンちゃんが言うとキナコは何度も頷いている。

「じゃあ、私は新さんと綾乃さんへのお祝いに、プリンのラップをやります」

『キター!!!』
『久々に見れるんだ』
『嬉しい〜』

驚きのコメントが次々に上がった。

「キナコちゃん、一緒にお願い」そう言ってパーティ手鈴を渡す。
「了解!」ニッコリ受け取った。

『え〜!!!キナコちゃんも参加?』
『うれしすぎる〜』
『生きててよかった』

コメントが更に驚きになった。

ビートが鳴り響く。

「行くよ〜、みんな準備は良いかな〜」プリンちゃんはコウモリ風の羽とセクシーな胸を揺らしてリズムをとっている。
キナコも天使の羽とレースの衣装を揺らしてリズムをとった。

「プリン、プリン、プリンのラップ・・・♪・・」
「おっぱいプリン・髪の毛プリン・あっちこっちプリンのリン・リン・リン♪」
「おっぱいプリン・髪の毛プリン・あっちこっちプリンのリン・リン・リン♪」
「右向いてリンリン・左向いてリンリン・正面向いてリン・リン・リン♪」
「右向いてリンリン・左向いてリンリン・正面向いてリン・リン・リン♪」
キナコもプリンちゃんに合わせて向きを変え手鈴を振った。

「さあ皆さん、お二人の結婚を祝して337拍子で行きま〜す」

「リン・リン・リン♪リン・リン・リン♪リン・リン・リン・リン・リン・リン・リン♪」
もう一度
「リン・リン・リン♪リン・リン・リン♪リン・リン・リン・リン・リン・リン・リン♪」
更にもう一度
「リン・リン・リン♪リン・リン・リン♪リン・リン・リン・リン・リン・リン・リン♪」

会場と視聴者も大きく盛り上がった。

「じゃあ私はお二人の為に歌います、ラプソディは永遠に」

イントロが流れキナコは歌い始める。
会場は静まり返った。

『生歌いいなあ!』
『素敵〜!!!』
『いい声だねえ』

コメントが押し寄せた。

サビになるとプリンちゃんも一緒に歌う。

歌い終わると会場は拍手の渦となった。

新くんと綾乃さんはステージに上がりキナコとプリンちゃんに握手をした。
そしてステージに並んだ。

「皆さん、長い間ありがとうございました、最後に株式会社マサキ代表取締役、神崎将輝よりお礼を申し上げます」
友里香さんが呼び込むと将輝社長がステージへ上がった。

「皆さん、本日はありがとうございます、これからもマサキは皆さんへ良い商品をお届け出来るよう努力してまいります、今後ともよろしくお願いいたします」

ステージの全員で深々と頭を下げた。

大きな拍手が沸き起こった。

配信は終了した。

俺と奏太くんはニッコリハイタッチした。
「友希さん、今日の宣伝効果は途方もないですよね」
「ああ、おそらくキナコプリンは大ヒットするだろうね」
「新さんも凄いなあ」
「そうだね、今日の一日でマサキグループでの立場を確立したね」
「綾乃さんも嬉しそうでしたよ」
「二人にとっていい日になったと思うよ」

二人で微笑みながら控室へ向かった。

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