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水の生まれる夜に 60 綾乃の秘密

 十二月も半ばを過ぎると寒さが肌を突くようになって来る。
天空カフェは冬期休業になり、二人は別荘で過ごすことが多くなった。

「ねえ新さん、ますます寒くなってきたね」

「そうだねえ、思ったより寒さがキツいね、ストーブだと灯油代がかさむなあ」

「いっそコタツにする?」ニコニコと僕を見ている。

「綾乃さんコタツ好きなの?」

「じつは……大好き」予想外の笑顔だ。

「えっ、あの洋風な実家にもコタツがあったの?」

「無かったのよ……パパがコタツは出たくなくなって人をダメにするからって置かなかったの。でもパパは薪ストーブの前にいつも居たから同じような気がするけど」

「そうだね、でも圧倒的に薪ストーブの方が経費が高いけどね」

「じゃあこたつ買っちゃう?」いつもの上目遣いで見ている。

「いいよー」

「やったあ」

早速二人はホームセンターへと向かった。

「車があるとすぐに思ったところへ行けて良いね」僕は助手席を満喫している。

「そうね……でも新さんも免許取ってね」

「はいはい」

ホームセンターに到着すると、コタツのコーナーへと向かう。

「いろんな種類のコタツがあるんだねえ」

「これがいい」綾乃が指を指したのは、少し大きめの長方形のコタツだ。

「二人なのにこんな広いヤツ?」

「二人だからこれが良い」

「えっ?……」

「だってこのコタツなら二人並んで座れるよ」

「向き合ってじゃなくて?……」

「二人並んで映画とか見れるよ」

「あっ、そう言うこと」僕は綾乃さんの言わんとすることを理解した。
「じゃあそれにしよう」合わせて布団なども一通り購入する。

今度は僕が綾乃さんを引っぱった。「ねえ、もしかしてこれも欲しい?」座椅子を指さす。

「えっ!!そんな贅沢をしていいの?」目を潤ませる。

もしかして綾乃さんにはヘタレの才能があるのでは?……と思って試しに言ってみたのだが、見事に食いついた。

「う、うん、」……やっぱりか………………

二人でおそろいの座椅子も購入すると、出口辺りに特売の大型液晶テレビが置いてある。

「これで映画とか観たら迫力あるよねえ」僕がボソッともらす。

「コタツに並んで座椅子に座って映画を見る……みかん食べながら…………」

「買った!」二人は声を揃えて言った。

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