星降る夜のセレナーデ 第82話 秘密の過去
無事にデータを送ると、皆んなでコーヒーを飲んだ。志音ちゃんは牛乳を飲んでいる。
先生はアリサさんのDVDを見て「可愛いなあ……………」と思わず漏らした。
「え〜、ママの方が全然いいよ!」志音ちゃんは言った後少し考えている。
「ママ、モヒくんにママの事を話してあげた方が良いんじゃない?」志音ちゃんは美夜子さんをじっと見ている。
「そうね、別に隠していたい訳じゃないし……………」美夜子さんは軽く頷いて俺の方を向いた。
「真人くん、私は昔プリズムと言うアイドルグループに居たのよ」少し恥ずかしそうに話し始めた。
「えっ?美夜子さんはアイドルだったんですか?」俺は固まったまま話を聞いた。
「真美ちゃんがいる事務所に所属してたアイドルグループだったの。私がセンター、そして正美ちゃんとマリちゃんがメンバーだったの」美夜子さんは懐かしそうに話している。
「それなりに人気があったのよ」少しだけ笑った。
志音ちゃんは突然ロフトに駆け上がると、ジュラルミンのケースを持って降りて来た。
「え〜!!!志音、それは!!!」先生が慌てた。
「何それ?」美夜子さんが不思議そうに見ている。
「これはとーたんの宝箱だよ」志音ちゃんがイタズラっぽい笑顔をした。
「なんで宝箱を知ってるんだ?」先生は顔面蒼白で固まっている。
「だって、たまにとーたんが見てたじゃん、志音は気づいてたよ」志音ちゃんは少しだけ舌を出した。
「ほら、見てモヒくん」志音ちゃんはケースをゆっくり開けると、一枚の写真をとり出す。その写真は美夜子さんがアイドル時代の写真だった。
「何でこんな物が残ってるの?」美夜子さんは先生を睨んだ。
「それは……………私の大切な宝物だから……………」先生は手のひらに乗るくらい小さくなったように見えた。
美夜子さんは少し不機嫌そうに唇を噛んでいる。
「パパの宝物かもしれないけど、志音も宝物なんだよ。大好きなママの大切な記録だから」志音ちゃんは美夜子さんに思い切り抱きつく。
「そうなの?」美夜子さんの表情がゆっくりと和らぐ。
「ほら、ママがアイドルだった頃の写真を見てよ、絶対アリサさんより美人だもん」俺に写真を差し出して見せる。
俺は受け取ってじっと見た。その瞬間、頭の中にある映像が閃いた。
「あっ!この写真のポスターを見たことがあります、兄の部屋に飾ってありました。確かチョコレートのCMポスターだったような………………」俺は必死に思い出そうとした。
「モヒくんのお兄ちゃんがママのファンだったの?」志音ちゃんは不思議そうな表情で俺を見ている。
「そうだったような気がする、確か『優様』って……………あ………」その瞬間色んな疑問が理解できた。
「時々話に出てくる『優さん』と言うのは美夜子さんの事だったんですね」俺は深々と頷いた。
「随分昔の話だけどね」美夜子さんはコーヒーを少しだけ苦そうに飲んだ。
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