星降る夜のセレナーデ 第108話 週刊誌
数週間が経過したある日、事件が起こった。週刊誌へ志音ちゃんが掲載されている。
試写会に出席した志音ちゃんの写真が『あの優様の娘が今!』と、数ページに渡って掲載されている。
「絶対あの社長がやらせたんだよ」先生は激怒している。
「最低ね、多分志音がスフィンクスへ所属する事を断った腹いせじゃ無い?」美夜子さんも怒っている。
「すみません、俺が試写会なんて行ったんで……………」俺は申し訳なくて項垂れた。
「真人くんが悪いんじゃないさ」先生は首を振った。
そこへ志音ちゃんが泣きそうな顔をして帰ってきた。
「ママ、学校でいろんな事を言われた」
先生たちからも「子供のくせにメイクとかして何様だと思ってるの、だから芸能人の娘とか迷惑よ」だって……………志音ちゃんは美夜子さんに抱きついた。
「そう…………………」美夜子さんは志音ちゃんの背中をゆっくりと摩っている。
『ドン!』先生は悔しそうにテーブルを叩いた。
次の日から志音ちゃんの学校の周りにカメラを抱えた人たちが出現するようになった。志音ちゃんは学校に行く事さえ出来なくなっている。
そして別の週刊誌には『優様の後継者争い勃発!』そんな記事が出た。志音ちゃんの写真と由美香ちゃんの写真が載せられている。そして『潮騒のシンフォニー』は志音ちゃんが歌う予定だったが、由美香ちゃんが勝ち取ったと面白おかしく書かれていた。
「もう高校へも行けないね」志音ちゃんは悲しそうにしている。
志音ちゃんは部屋に閉じこもるようになってしまった。俺は何の力もない自分が悔しくて仕方がない。
「くそ〜!俺は何も出来ないのか………………」拳で自分の太ももをなん度も殴った。
「真人くん、嫌かもしれないが、仕事を休むわけにはいかないよ」先生に言われて俺はスタジオへ入り黙々と仕事を続けた。
志音ちゃんへ取材の電話もかかってくるようなった。
いろんな雑誌からも問い合わせがきている。
しかし皮肉なことに『潮騒のシンフォニー』は更に話題となり大きなヒットとなっている。社長の思惑通りだと先生は悔しそうにしている。
ログハウスの周りにもカメラを抱えた人がうろつき始た。リビングはカーテンを閉めたままなので暗い雰囲気が強調された。
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