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星降る夜のセレナーデ 第98話 スキャンダル

先生の映画音楽はかなり進んできた。半分ほどが出来ている。俺は先生の偉大さが身に染みている。今日もスタジオでは熱気の中、録音が進んでいた。
作曲からアレンジ、そして楽器の選択や効果的な使い方など、勉強になることが目白押しだ。午後になって休憩しにリビングへ出てきた。

コーヒーを飲むと、先生は少し考えたいからと言ってスタジオへ先に入った。
俺は先生がまた指揮棒を振ってアレンジを考える時間が欲しいんだと思い、そのままリビングでゆっくりとコーヒーを飲んだ。

突然、玄関のドアが乱暴に開けられ、志音ちゃんが口をへの字にして入ってきた。

「どうしたの志音ちゃん?」美夜子さんが不思議そうに聞いた。

「これ!」志音ちゃんは週刊誌を叩き付けるようにテーブルへ置いた。

見ると『清水アリサ、深夜の密会!』スクープ記事が書かれてある。

「えっ?」

「この写真に写ってる車はモヒくんの車でしょう?」志音ちゃんは唇を噛み締め睨んでいる。

「えっ?」俺は写真をよく見て確認する。

「あ〜、これは高崎の駅だ、でもなんで密会なんだろう?」不思議な顔をした。

「やっぱりモヒくんなのね?」志音ちゃんはさらに睨んだ。

「うん、俺だけど…………アリサちゃんは寝過ごして高崎まで行って困ってたから、熊谷の実家まで送ってあげたんだよ」

「なんでアリサちゃんと連絡が取れるの?」志音ちゃんはかなりイラついた感じだ。

「前に出版社で連絡先を交換したんだよ」

「何で、志音に内緒にしてたの?」

「別に言うほどのことじゃ無いと思って…………」

「もう、知らない!」志音ちゃんは怒って部屋に入ってしまった。

「…………………」取り残された俺はキョトンとしてしまう。

美夜子さんが心配そうに聞いてくる。

「アリサちゃんとは仲がいいの?」

「いえ、たまにメールが来る程度です」

「そうなの?」

「はい、前に出版社へバイクで行った時、帰りに熊谷まで送りました。彼女のお父さんが亡くなられてから生活が大変らしくてお母さんと2人で必死に頑張っているらしいんです、ですからすこしでも応援してあげたいと思いました。それに俺の始めて仕事した人ですから、何か力になれればと思ったんです」

「そうだったの」美夜子さんは何度も頷いて微笑んだ。

「志音ちゃんのヤキモチにも困ったものね」そう言って志音ちゃんの部屋の方を見た。

「えっ?」俺は固まった。

「志音ちゃんは真人くんが大好きだからねえ……………」美夜子さんは少し笑っている。

「えっ!」俺は更に固まった。

「まさか、真人くんは志音の気持ちに気づいてないってことはないでしょう?」

「え!…………何となくそんな感じが……………」

「パパは鈍感だから知らないと思うけど…………」美夜子さんはスタジオの方を見た。

「俺はどうしたら良いんでしょうか?」

「それは自分で考えてね」美夜子さんは口角を上げた。

「ですよね……………」

そこへ先生がスタジオから出てきた。

「ありがとう真人くん、おかげでアレンジがひらめいたよ、早速レコーディングしよう」

「了解です!」俺は少し不安そうな顔で美夜子さんを見た。

「頑張ってね」美夜子さんは微笑んだ。

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