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隠れ家の不良美少女 94 孤独なレッスン

俺はウイングの事務所に来ていた。
「友希さん、大阪の感触が他と違う気がするんですけど……」
「そうだなあ………なんかアウェイ感がある気がする……」
「噂なんですけど、まなこちゃんがあまり良く思ってないという話なんですよ」
「そうか……キナコが突然出てきて、急に人気が出ると面白くは無いかもね」
「大阪は地元なので、イベントで力を見せつけたいと思ってたらしいんです、しかし仲の良いイベント会社が参加しなくなったので、まなこちゃんも出るのをやめたらしいんですよ」
「そうか、キナコが歌うのを嫌がってたのはそう言う事なのか」俺は頷いた。
「キナコちゃんに歌われたら、自分の力を見せつけるどころじゃ無くなりますからねえ」
「ともかく用心をしなくちゃあいけないなあ」
「そうですね」
「キナコにはまだ内緒にしておこう」
「了解です」

夜になり希和の家へ来た。
希和は一人で高卒認定の勉強をしている。
「おっ、真面目にやってるな」
「うん………むずい…………」眉を寄せる。
「まあ焦らずじっくりと」俺は可笑しくなって笑ってしまった。

「希美子さんは今日も遅いのか?」
「うん、サークルみんなの衣装を仕上げないといけないから頑張ってるの」
「そうなんだ」
「私の衣装はツアー中は同じ物だから良いけど、他の子たちは毎回違う衣装なんだよ」
「そうか、じゃあ大変だなあ」
「そうだね、でもKKブランドを頑張るって言ってた」
「なるほど、これからが楽しみだな」
「希和も手伝うって言ったんだけど、もっと勉強することがあるでしょうって言われた」
「それで高卒認定の勉強か」
「ううん、今まで動きとポーズの練習をしてたの」
「へえ〜」
「お母さんが、衣装に合ったポーズをしないと魅力が伝わり難いからって」
「なるほど」
「だから衣装をつけて窓を鏡の代わりにしてポーズをしてたの」
「なるほど」
「それに歌うときは前後より左右に動かないと地味になってしまうからって……」
「そうなんだ、希和はしっかり練習してたんだな」
「うん、頑張るって約束したもん」
「いいぞ希和」俺は思わず抱きしめる。
希和はゆるい笑顔になった。
俺は思わず「しまった」と思った。

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