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水の生まれる夜に 78 夏の小旅行

二人は笹原さんから聞いた真一お祖父ちゃんの畑で苗を植えていた。
ホームセンターに売れ残ってた野菜の苗だ。

「食べられるようになるかなあ」

「どうだろう……」

「でも…………なんか楽しい」

「そうだね」

山里とは言え夏はさすがに暑い日もたまにある。二人はグダっとなっている。

「新さん暑い……なんとかして……」

「無理ですね」

「じゃあ涼しい所に行こうよ」

「どこかあるの?」

「軽井沢!パパの別荘があるよ、とっても涼しいよ」

「そうなんだ、やっぱりお嬢様なんだねえ」少し笑った。

「だって夏は涼しいし、冬はスキーができるし、高校の頃はよく友達と一緒に軽井沢jへ行ったわ」

「そうなんだ」

「だって高崎から新幹線で15分くらいだよ、直ぐだもの」

「そうなんだ、近いんだね」

「東京だって1時間くらいで行けるよ」

「高崎って便利なんだねえ」

「うん、とっても良いところよ」

「ふーん高崎か……何が美味しいの?」

「色々あるわよ、パスタとか……焼きまんじゅうとか……」

「わりと普通なんだね」

「あっ……ちょっとイラッとする……何それ」綾乃ちゃんは不満そうな顔で見ている。

「そうだ!じゃあ高崎に行こうよ」

「軽トラでかい?」

「本庄早稲田まで行けば、新幹線で10分くらいで到着よ」

「そう……」

「新さんに高崎ファンになってもらう」

「ええ……せっかく田舎でのんびりしてるのに?」

「何それ……私の暮らしていた街を見たくないの?私は新さんの果樹園とか見たいのに……」ふてくされた。

「そりゃあ興味はあるけど……」

「何コシ引けてんの?」

「いやあ……高崎に吸収されそうな気がして……」苦笑いする。

「ねえ新さん、夏休みを取ろうよ、二、三日でいいからさあ」甘えるように言った。

「そうだなあ……で……どこに行くの?」

「だから、高崎から軽井沢まで案内したいの」

「そうだなあ……綾乃ちゃんのことをあまり知らないし、行ってみようかな」

「やったあ……じゃあ涼しい所へ行こう」

翌日二人は着替えなどをバッグに入れ、小旅行へ出発した。
本庄早稲田に軽トラを止めて新幹線に乗り込み、高崎で降りた。

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